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The Third Eyes  作者: WAIESU
11/40

象牙の塔(B)



      □


「どうしたの!? しっかりして!!」



 叫び声を聞いて駆けつけると、セリアがベッドに横たわっている少女の肩を揺さぶっていた。



「セリア!? どうした!?」

「ライ! それが分からないの! 急に苦しみ出して……!」

 ベッドの側に近寄る。少女の瞳からは涙が零れていた。

「うなされている……? 何か悪い夢でも見ているのか!?」

 ライはセリアと交代して少女の肩を揺さぶった。

「おい! しっかりしろ!!」

 少しして少女が大人しくなる。掛けてあった毛布や布団がめちゃくちゃに乱れていた。

 ライはほっとして、少女を再び寝かせようとした。と、昨日からずっと閉じたままだった瞳が、次第に開かれていく。

「う、ん……」

 少女の瞳がライを映す。透き通った、蒼い瞳にどきりとした。ライは慌ててベッドに少女の体を寝かせると、冷静に声をかけた。

「気がついたか?」

 少女はしばらくぼーっとしたまま、周囲を見渡していた。


「ここは……?」


「この街の宿屋よ。昨日私の家の近くで倒れていたのを見つけて、医者の方に診てもらったあと、ここに運んできたの」

「……」

「金のことなら気にするな。払わなくていいから。それより、体の方は大丈夫か?」

 優しく問いかける。だが少女はそれには答えず、じーっとライの顔を見つめていた。

 こちらを見つめる透き通った蒼い瞳。腰まで届くような長い髪も同じ色。小柄な唇に色白の肌……。この少女は、かなりの美人だった。

「ど、どうした? 俺の顔に何かついてる?」

 顔を赤くしながらライが言う。少女はライを見つめたまま口を開いた。


「あなたは――――」


 ふと、ライは少女の手に視線がいった。何か光った気がしたのだ。

「君、その指の……!」

 指し示したもの。それは少女の指にはめられた指輪だった。

 今回の依頼内容に記されていた指輪と、全く同じ物だった。

「ライ、入るぞ」

 驚いていると、突然扉がノックされマスターが入ってきた。 

「取り込み中すまないが、アゼルが来ているぞ」

「アゼルが? ……分かった。今行く」

「こっちは私に任せて」

 ライはセリアに頷いた。セリアは昨日この部屋に少女を運んだ後、そのまま泊まって看病までしてくれた。発見当時ぼろぼろだった少女の服の変わりに、別の服を調達してくれたのもセリアだった。

「ごめん。色々と手伝ってもらって」

 ありがたさと申し訳なさから、ライはセリアに礼を述べた。

 セリアは全然気にしていないといった顔で、

「気にしないで。私達、幼馴染でしょう?」

 と、優しく微笑んだ。彼女は昔からこうだった。そんな彼女の笑顔と優しさに、いつも助けられている自分がいた。困った時や、悩み事があった時、彼女の眩しい笑顔を見るだけで、心が安らいだものだ。

 階段を降りて下に行くと、アゼルがカウンターの椅子に座って飲み物を飲んでいた。昼間という時間帯もあってか、客はあまりいなかった。


「ワインとかじゃないだろうな、それ」


 ライがアゼルの隣に座ると、アゼルは眠そうな顔でこっちを睨んできた。よく見れば目元に隈ができていた。

「おいアゼル。もしかして寝てないのか?」

 ライが聞くとアゼルはあくびをしてそれに答えた。

「当たり前だ。お前も昨日見ただろ。今回の仕事、あんな大金がかかってんだ! あの位の金があれば家の五軒や六軒なんてざらじゃねえ! 他の奴に先越されてたまるか!」

 感心したような、呆れたような顔でライはアゼルを見た。


 ちなみに一言で言えば、アゼルはお金が大好きである。まあ、色々と理由はあるのだが。


「で、一晩探し回った成果は?」

「情報屋とか知り合いのハンターに聞いてみたんだけどなー、大した事は聞けなかった。怪しい情報ばっか。大体情報が少なすぎんだよ。依頼者さえ誰か分からねーし」


 アゼルは飲み干したグラスを置くと、ライの肩をがしっと掴んだ。


「行くぞ」

「どこへ」


「アホ! 指輪を探しにだ! なんでお前はそんなにのんきなんだ!? 報酬俺六割、お前四割で、二人して協力する約束だったじゃねぇか!」

「昨日山分けって言ってなかったか?」

「さあ行くぞ相棒!」

「はぐらかすなよ!」

 ライは、アゼルに昨日見つけた少女の事を話そうか迷った。いくらアゼルでも、いきなり指輪をぶんどってとんずらするなどということは、きっとおそらくたぶんないと思うが……。

「実はアゼル。その事なんだけどな……」

 このまま連れて行かれるのも嫌なので、ライは話す事にした。




 

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