第二話 象牙の塔 zougenotou (A)
象牙の塔――――――――第二話
白い結晶が舞っていた。
綺麗な雪ねと、母は言った。
いつものようにベッドの上で、彼女は雪の降る外を眺めていた。
ごうごうと、窓の外を吹雪が襲っていたある日、父が男の子を抱えて入ってきた。
「今日からしばらくここに泊めることになった。仲良くしなさい。でも、寝ている時に邪魔をしてはいけないよ」
男の子は体中に包帯を巻いていた。
自分と同じくらいの年齢だと彼女は思った。少し嬉しかった。男の子が目を覚ましてから、二人で話をした。
「あなたはどうしてここに来たの?」
魔物に襲われて仲間とはぐれたと、男の子は言った。
色んなことを話し合った。男の子はいつも私と話をしてくれた。窓の外を眺める時間よりも、話をする時間の方が多くなった。
それは、とても楽しくて、夢のような時間だった。
――――永遠に、こんな日々が続いてくれればいいのに。
氷を溶かすような、温かい彼の笑顔。
彼に惹かれている自分に気が付くのに、時間はかからなかった。
――――ひらひらと、雪が降る。
寒くて、寒くて、寒くて、死んでしまいそうだった。
彼女の周りには、たくさんの、死体。
自分の手を、誰かが両手で握っている。
冷たい、母の手だった。