3/5
言ノ葉師 3
「…そなた…言ノ葉師…だな。」
男は静かに笑みを浮かべ、頷いた。
「御名答。
そうです、私は言ノ葉師でございます。
…あなた様と同じ、ね。」
「…そうか。」
姫も静かに頷き、目を閉じた。
「娑弥姫様、貴方を生まれながらの言ノ葉師と信じ、お話致します。
この世の異変に、お気づきでしょうか。」
男は言う。
間もなくこの街に偽の言葉師が現れ、人々に不幸をもたらす。
そして、我々街の言ノ葉師は皆焼き殺される。
姫は動じることもなく、静かにその話を聞いた。
「…姫様、そのご様子では知っておられたのですね。
・・・貴方様は、どうなさるおつもりだったのですか?」
すると姫は静かに立ち上がり、
地より一段高い石段から遙か遠くの月を眺めた。
まるで、本当に月へ導かれてしまう姫のように。
「…我は歌人の言ノ葉師。
それ故、命尽きるまで言の葉で歌を作り歌い続けるまでじゃ。」
「・・・流石、
言ノ葉師のおっしゃることは魂がありますね。
ですが、私から娑弥姫様に1つご提案が御座います。」
男は姫の隣に並び同じように月を見上げた。
>>>




