言ノ葉師 2
これは遥か昔、京に都があった頃のお話。
古くからの慣わしやアヤカシが、信じられていた時代であります。
そんな世では“言ノ葉師〈コトノハシ〉”というもの達が存在しておりました。
言葉師とはその名の通り、コトバを変幻自在に操る者。
それは神から与えられし、
生まれながらの名誉だと人々に信じられ、
巫女や法師、歌人や物書きが主な人物でした。
彼らはその力を使い、人々に幸をもたらし、人々は彼らを神のように慕い、信じました。
ある事件が起きるまでは…。
「今宵は、月が綺麗だ…。」
宮殿の庭が見える縁側に座り、月夜に照らされているひとりの姫。
まるで物語の月の姫のよう。
澄んだ瞳と白い頬はまさにその姫、
彼女は、この宮殿の娑弥姫である。
「ええ。そうでこざいますね、娑弥姫様。」
「!!
……貴様、何者だ?」
姫の後ろに現れたのは、袴姿の男。
容姿からみて貴族の1人であることはわかった。
そのためか、娑弥姫は一瞬驚きはしたものの冷静に男に問いた。
「これはご無礼を。
ですが、姫様。
もう私のことはお気づきでしょう?」
挑発的な態度の男。
しかし、その通り、姫はわかっていた。
・・・彼の放つ独特な“気”を。
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