真夏の夜の悪夢
セミが鳴き続ける真夏の夜、青年がパソコンの電源を落として手を伸ばす。
「やっと終わった」
気怠そうに青年はそう言うと、夕食を思い出し複雑そうな顔を浮かべた。
「父さんに勧められてレバー食べたけど、正直あんまり好きな味じゃなかったな」
青年は目を閉じて自らにレバーを進める父の姿を思い起こす。
「お母さんがせっかく買ってきたんだからお前も食べろ」
苦笑いを浮かべた青年は、目を開いてそのまま部屋の明かりを消した。
「寝よう」
青年はそれだけ言うと、布団の中にもぐりこみ眠りにつく。
青年がふと殺風景な荒野で目を覚ますと、そこには巨大な生レバーが鎮座していた。
「は?」
唖然としたまま青年が固まっていると、生レバーが全身を震わせながら彼に向けて飛び掛かる。不意を突かれた青年はよけることが出来ずにそのまま生レバーにのしかかられた。
「ぐほっ! 苦しい」
青年が必死で生レバーが本来はあり得ない呻き声のような声を上げる。
「暴れんなよ……」
生レバーの呻き声を無視して青年が何とか肉の塊から抜け出ると、目の前には大量のセミが飛んでいた。
「ミーン」
青年が身構えると、セミたちはそのまま延々と鳴き続ける。
「ミーンミーン」
「うぜぇよ!」
青年がそう叫ぶとセミたちはそのまま飛び去って行った。
「夢だよな、これ?」
青年がそういいながら後ろでうねっている生レバーから逃げよとすると、よく聞き覚えのある声が響きわたる。
「アンタ資格の勉強ちゃんとしてるん!?」
顔色が一気に悪くなった青年が声のする方を振り向くと、そこには鬼のように顔をした青年の母親が立っていた。
「そうやってアンタが怠けてるから、お母さんはこうやって怒らないかんのよ! ちゃんとしろ!」
恐ろしい剣幕で怒鳴りながら駆け寄る母親の姿に恐怖を覚えた青年は必死で逃げようとする。しかし、彼は足元にあった石に躓いて頭部を地面に打ち付けた。
頭部を打った次の瞬間青年の意識は暗転する。
青年が意識を取り戻すと、すでに外は明るくなりベッド下あらは転げ落ちていた。
「全然寝た気がしない」
終わり
お久しぶりです。ドルジです。
今回は久しぶりの三題噺となりました。はっきり言ってギャグに走りすぎてしまいました。