表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第6話「塞ぎ札」


やっと幻想郷の主人公登場です。






 誰もがいつかは夢見たこと。空が飛べればいいなという夢。僕はたった今、その夢を叶えた。いや、叶えてもらった。

 だけど……空を飛ぶことがまさか、ここまで怖いことだとは思わなかった。


「ちょ、霧雨さん! もうちょっとスピードを落としてください!」

「何言ってんだ。スピードはパワーなんだぜ!」

「意味が分からな――うわぁっ!?」


 霧雨さんは落とすどころか、更にスピードを上げた。僕は落ちないように更に踏ん張る。そのスピードはもはや、ジェットコースターよりも速い気がする。


「ほら、見えてきたぜ」

「え? あ、あそこですか?」

「そうだ。しっかり掴まってろよー!」

「うわぁぁあっ!?」


 下の方に神社な場所が見えた。霧雨さんはそこを目掛けて急降下し始める。いきなりに急降下したため、吹き飛ばされそうになった。だけど肩をしっかり掴んでいたので、なんとか踏ん張れた。


「ちょ、霧雨さんこのままじゃ」

「よいしょっ!」

「わっ!? いでっ!?」


 地面に激突すると思った瞬間、霧雨さんは急にブレーキをかける。あまりにも急にだったので僕は踏ん張りきれず、そのまま箒から振り落とされた。


「いててて……」

「おいおい大丈夫か?」

「なんとか……」


 霧雨さんは箒から降りると、僕の側によってきて、苦笑しながら大丈夫かと聞いてきた。僕は地面にぶつけた所を押さえながら大丈夫だと言う。

 幸いにも地面が近かったので、大したことはないけど……それでもやっぱり痛い物は痛いな……


「ま、大丈夫ならいいか。ほれ」

「あ。ありがとうございます」


 霧雨さんは笑いながら手を差し出す。僕は松葉杖をついて、その手を握り立ち上がった。


「さて、なわけで着いたぜ」

「ここが……ですか?」

「ああ。そうだ」


 霧雨さんは左に向く。僕もつられて左に向いた。そこにはさっき、空の上を飛んでたときに見た神社が佇んでいた。


「あら。誰か来たと思ったら、魔理沙じゃないの」


 と、後ろから女の子の声がする。僕が振り向くと、巫女服のような服を着た少女が箒を持ったまま僕たちを見ていた。


「よう、霊夢。今日は珍しく境内の掃除でもしてんのか」

「いつもやってるわよ。それより……今ここに来るより、今すぐ永遠亭に行った方がいんじゃないの?」


 霊夢とかいう少女は、僕をまじまじと見てそう言った。霊夢さんが何を言ってるのかは分からないけど、暴言に近いことを言われたような気がした。


「いや、桜花のはこっちに来る前かららしいんだ」

「こっち? ……ああ、なるほどね。妖怪に襲われてとかじゃないのね」


 と、霊夢さんは霧雨さんの言葉を聞いて勝手に納得する。


「ま、それならそれならでいいわ。で、ここに来たってことは、外の世界に帰りたいわけね」

「まあ……そうなりますね」

「そう。じゃ、結界を開いたから、そこの鳥居を潜るといいわ」


 霊夢さんは淡々と話し、気だるそうに後ろに立っている鳥居を指差した。

 なんか……この少女に対しての第一印象はあまりよくはない。まったく人に対しての興味を持ってなさそうな感じだ。


「……えっと、あそこの鳥居を潜ればいんですか?」

「ええ。そうすれば帰れるわよ。あ、その前にはい」

「え?」


 霊夢さんは何故か手を差し出す。まるで何かをよこせと言わんばかりの手だ。僕は不思議に思って顔を傾げると、霊夢さんはため息をついて言った。


「お賽銭はないのかしら?」

「はい?」

「だーかーらーお賽銭よ。お、さ、い、せ、ん」

「……」


 ……今、僕は思った。あの少女がこの神社の巫女だとすれば、それはきっと何かの間違えたのだろうと。

 とりあえず、持っていたお金は昨日全部使っちゃったし、お賽銭は出せないな。


「えー……そのー……今はお金を持ってないんですが」

「あら、そうなの? なら、お賽銭はいいわ」


 霊夢さんはあっさりとそう言った。別にそこまで、お賽銭に固執してる訳じゃないんだ……


「……まあ、いいや。それじゃあ霧雨さん、色々とありがとうございました」

「おうよ。気をつけて帰れよな」

「はい」


 僕は霧雨さんと霊夢さんに一礼して歩き出して鳥居へと向かう。


「……なんか、実感が湧かないなぁ」


 そう僕は呟いた。異世界に来たとはいうものの、こうも簡単に元の世界に帰れるじゃあ、異世界に来たという実感がいまいち湧かない。

 まあ、魔法使いみたいな霧雨さんがいるから、異世界に来たことは間違いないんだろうけどね。


「……」


 あっという間だったけど、普通じゃ経験できない不思議な体験ができた。それだけでよかったと思う。また来れれば……いやあ、もうそれはいいかな。


「さ、帰ろう」


 僕は鳥居を潜ろうとする。と、その直後の出来事だった。


『ピシッ』

「え? ! うわっ!?」


 鳥居を潜ろうとした瞬間、目の前に稲妻のような光が走る。その途端に僕は吹き飛ばされた。


「桜花!?」

「いたたた……」


 僕が吹き飛ばされたのを見たのか、後ろにいた霧雨さんが側に駆け寄ってくる。


「おい、大丈夫か!?」

「はい……大丈夫です」

「そうか……よかった。でも、今のはなんだったんだ?」

「分からないです……」


 一瞬の出来事だったため、何が起きたのか僕にもよく分からなかった。

 ただ、あの光が僕を吹き飛ばしたことだけはなんとなく分かった。まるで僕が鳥居を潜るのを拒絶するかのように。


「結界の穴が……塞がってる?」


 後から来た霊夢さんは、鳥居の真ん中の空間を見て驚いた顔をした。霧雨さんは怪訝な顔をして霊夢さんに話しかける。


「塞がってるって……なんだよそれ」

「分からないわよ。さっき開けたはずの結界の穴が塞がってるの」

「お賽銭をもらえなかったから、わざとやったんじゃないのか?」

「そんな訳ないでしょ! とにかく、結界の穴が塞がってるのよ。それにさっきのあの光は一体は……」

「ああ、あれか……」


 霊夢さんと霧雨さんは、鳥居の真ん中の空間を見つめる。今更なんだけど、結界ってなんのことだろう。


「とりあえずもう一回、結界を開く……あれ?」

「どうした?」

「あれ? なんで? 結界が……開かない?」

「はあ!?」


 霊夢さんは難しい顔をしながら、手のひらを見る。その隣にいる霧雨さんは霊夢さんに問いかけた。


「ちょ、霊夢! それってどういうことだよ?」

「わ、私にも分からないわよ。どうしてかしら……結界が全然開かない……」

「おいおいマジかよ……」


 霧雨さんは強張った表情をする。霧雨さんと霊夢さんは、さっきからなんの話をしてるんだろ? 僕にはなんの話なのか、さっぱり分からない。


「……よいしょっと」

『カラン』

「ん?」


 松葉杖をついて立ち上がると、側から何かが落ちる音がする。横を見るとそこには何かが落ちていた。


「なんだろこれ」


 僕は足元に落ちている物を拾う。それは木で出来た絵札だった。札には道を塞ぐ光のような物が描かれていた。

 僕は何を思ったのか、札をポケットの中へとしまう。そして2人の方を向いた。


「あのー……それで、僕は帰れない……のかな?」

「結界が開かないんじゃそうなるわ。ここは癪だけど、紫に頼むしかないわね」

「紫にか……なんか心配だな……」

「仕方ないでしょ。まったく」

「紫さん?」


 霊夢さんはため息をつくと、手を軽く翳す。するとその手の中に、とても淡い光が現れた。淡い光はしばらくすると消る。それと同時に、霧雨さん達の後ろの空間に切れ目のような物が入った。


「え?」


 切れ目は段々と広がり、そこから金髪の女性が出てくる。僕はその光景を見て唖然とした。空間の切れ目の奥には、何やら不気味な目が無数に輝いている。

 女性は空間の切れ目から出てくると、霊夢さんに話しかけた。


「こら、霊夢。勝手に結界を緩めるんじゃないわよ」

「アンタを呼ぶために緩めたのよ。ところで悪いんだけどさ、そこにいる子を外の世界に帰してきてくれない?」

「いきなり何よ……って、アナタは!」

「え、え?」


 空間の切れ目から現れた女性は、僕を見た途端に驚いた顔をする。

 あれ? よく見れば、誰かとそっくりな顔だな。誰だろ……あ、ハーンさんだ。ハーンにそっくりな顔だ。


「ど、どうしてアナタが……」

「あ? 紫、桜花と知り合いなのか?」

「……いいや、知り合いじゃないわ。ただの人違いだったみたい」


 女性は驚いた表情から、何かを思い返すような表情になった。

 なんでろう……さっきは気のせいかと思ったけど、あの女性の声、どこかで聞いた覚えがある。どこで聞いたんだっけ……


「? そうか」

「それで……外の世界に帰りたいのはアナタね?」

「は、はい。そうですけど……」

「そう……それじゃあ、帰り道には"気をつけなさい"よ」

「え? ちょ、いきなり何を」

「じゃ、さよな――あれ?」


 金髪の女性は突然、疑念の声を出す。そして何故か、僕の足元を見て難しい顔をした。僕の足元に何かあったのかな? 僕は足元を見てみるが、何もなかった。


「? 紫、どうしたのよ?」


 と、女性の異変に気付いたのか、霊夢さんが話しかける。


「……おかしいわ。あの子の足元にスキマが開かない……」

「え!?」

「はあ!?」


 女性の言葉を聞いた途端、霧雨さんと霊夢さんは驚いた。僕はスキマってなんだろと思いながら、3人の話を耳を傾ける。


「ちょ、紫もかよ!?」

「スキマが開かないって……なんで?」

「分からないわ……別に境界線がない訳でもないし……本当になんでかしら……」

「なんだよそれ。霊夢に続いて紫まで……一体、どうしたんだよ?」

「だから、分からないわよ。あの子の近くにだけスキマが開かないのよ」

「近くだけ……まさか」


 突然、霊夢さんは鋭い目つきをして僕を見た。僕は少しビクッとする。霊夢さんはいくらか、そのままの目つきで僕をじっと見つめる。


「……いや、そんな訳ないわよね」


 霊夢さんはそう言って、さっきの気だるそうな表情に戻った。いきなり鋭い目つきで見られたから、何か文句でも言われるんじゃないかとドキドキした。


「とりあえず、結界もスキマも開かないんじゃ、帰しようがないわよね」

「結界が開かない? 霊夢、それどういうことよ」

「さっきその子を帰すために、結界を開こうとしたのだけど、結界が開かなかったのよ。まあ、詳しくは神社の中で話すわ。魔理沙、その子の案内よろしくね」

「あ、ああ……」


 霊夢さんはため息をつくと、神社の入り口があると思われる方へと歩き出した。

 金髪の女性は霊夢さんが歩き出したのを見て、空間の切れ目の中へと潜った。


「一体、何があったんですか……?」

「さあな……とりあえず、私らも神社の中に入ろうぜ」

「あ、はい」


 僕と霧雨さんも、霊夢さんの後を追うように歩き始めた。







どうも。風心剣です。


なんか大変なことになりました。スキマや結界が開かないって……


それと、あの絵札はなんだったのでしょうかね。道を塞ぐ光……ん?


とりあえず、魔理沙が魔理沙っぽくない気がしました。なんとなくですが。


とりま、これからどうなっていんでしょうかね。


それではまた!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ