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短編小説集

ごはんつぶ

作者: 淡夏

夕飯時、リビング、お茶の間。

突然で悪いのだが妹のほっぺたに、ごはんつぶが付いている。化粧により野暮ったくない程度のピンク色にコーディネートされた妹のほっぺたに、ごはんつぶが付いている。


どうしよう。困ったな。


なぜ俺が困るのかと言うと、イケイケ女子高生の妹に俺がそれを指摘したらきっと怒りと羞恥に身を震わせながら


「屈辱」


とか言って不機嫌になるだろうし、かといって言わなければきっと後で、


「なんで教えてくれなかったの。サイテー」


とか言って俺が蔑まされるのだ。

全く理不尽な妹である。


そんな妹は今、不機嫌そうに茶碗片手にテレビを見ている。それが恐怖映像100連発とか言う番組なのだが、どう考えても合成映像だ。最近こんなチープな番組ばかりだと思うのは俺だけではないだろう。

ゆえに


「こんなのつまらんだろ」

と先程リモコンでチャンネルを変えようとしたのだが


「…はぁぁ?今超見てんだけど。なに?その目ふし穴なの?眼科行ったほうがいいんじゃないの」


とまあチャンネルを変えようとしただけでこれである。兄の尊厳はいずこやら。

そんな俺のいらぬお節介で気分を害した妹さんはすこぶる不機嫌だ。なので俺は早急にごはんつぶの処理を試みる。なぜって、これ以上不機嫌になられてたらせっかくの晩飯がまずくなるからね。


はいという訳で作戦その1

妹に気づかれることなく、さりげなくごはんつぶをとる。

うむ。自然にいこう。


「時に妹よ、そんなにその番組楽しいのか?」


「……」


「お前は昔お化け苦手だったのになあ」


「……」


「覚えてるか?カーテン揺れてるのお化けと勘違いしてお前大泣きしたの」


「……」


「お、おい!妹!後ろ!後ろに青白い顔をした女が……!」


俺は驚愕に目を見開いて後ろを指差す。

そんな俺に妹はゆっくり顔をこちらに向け、右手の甲を俺の眼前に見せつけ、そして中指を突き立てた。

……oh。

作戦1は失敗に終わった。というか全部無視されるので成功するわけがない。

しかしこれくらいで諦めはしない。

俺が触れられないのならば逆の発想で俺が触らなければよいのだ。

作戦その2

妹が自ら頬を触るようように仕向ける。


妹は再び飯を食べはじめている。


「時に妹よ」


「……さっきからうるさいんだけど」


「まあそう言うな、ーーちょっと耳寄りの情報があるんだ」


俺はそういいながら妹の耳に口を寄せて囁いた。

おもいっきし耳をつねられた。


「キモい近よんな」


痛い。しかし俺は痛みを我慢しながら続ける。


「っ……じ、実は今日友達に美顔効果のある、マッサージ方法きいたんだが」


「マッサージ?」


「あ、ああ。最近お前顔むくんでるからな。そのマッサージなんだが、両の頬をだなーー」


そこまで言ったとこでビンタされた。

俺は床に転げる。


「ねェ。喧嘩売ってんの?」


「……滅相もないっす」


俺はスゴスゴと引き下がる。作戦その2も失敗に終わった。

……というかなんかだんだん腹たってきたぞ。なぜ俺がこんなに気を遣わなきゃならんのだ。こんなんになるまでして。

もういいや作戦もへったくれもないが作戦その3。普通に言ってやる。ごはんつぶがついてるよハニー、とね。


「時にハニー」


「……ぁ?ハニィ?」


「何でもないっす」


終わった。

というかいいやもう。あとでちょっとガミガミ言われるだけだし。なんでこんなに妹のごはんつぶに俺が執着してたのかわからんよ。

妹は調度食べ終わったようで食器を片付けるために立ち上った。

さて食事を再開するか。

と俺が思いたったところで妹から声が掛かった。


「兄貴、頬っぺた。ごはんつぶついてる」

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