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転生と…  作者: 秋華(秋山 華道)
転生と…
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新たなスタート

後日、チリちゃんが舞先生に、ゲーム部顧問のお願いをしたら、舞先生はとりあえず考えさせてと言っていたらしい。

やはり俺を知る人と積極的に接触する事は避けたいのだろうか?

舞は俺が死んだ事を一番悲しんでいるに違いない。

これは確信がもてる。

でも、同じように悲しんでくれたゲーム同好会のみんなとなら、きっとうまくやっていける。

きっとそれが、今後の為にも良いはずだ。

時々食堂や廊下で見かける舞。

なんだか昔の舞とは違って、元気が無いように見える。

俺はただ、昔の元気な舞に戻ってほしかった。

だから俺は、ひとり舞への接触を図った。


放課後、きららと吉田君には同好会には後から行くと言って、1年D組の教室へと向かった。

階段を1つ昇って、廊下の向こうを見ると、舞が丁度教室から出てきた。

廊下にいる生徒に挨拶をした後、舞は向こう側に歩いてゆく。

俺はその後についていった。

階段を降りて、噴水のある中庭に出たところで、俺は走って舞に近づき後ろから声をかけた。

 達也「か、神村、ま、舞先生!」

緊張のあまりどもってしまったが、声は舞に届いたようだ。

舞は振り返り、優しい笑顔で俺を見た。

 舞「はい?えっと、君は・・・」

知らない生徒に名前を呼ばれてとまどっているようだったので、俺はすぐに自己紹介した。

 達也「あ、俺、2年B組でゲーム同好会の、星崎達也です」

 舞「あっ!星崎君ね」

ちゃんと自己紹介したのだが、舞のとまどいは消えなかった。

あれ?どうしたんだろ?

 達也「どうかしましたか?」

 舞「ん?あれ?わかる?」

舞のとまどいは、ますます大きくなった。

そこまで話して、俺は舞のとまどいが大きくなった理由を理解した。

そっか。

俺だから分かったけど、普通とまどってる事なんてわからないのかも。

俺は慌てて否定した。

 達也「いえ、気のせいです」

俺が両手を胸の前で小さく振ると、舞は笑顔になって俺にたずねてきた。

笑顔と言ってもどこか儚げな笑顔だった。

 舞「で、私に用は、ゲーム部の顧問の事かな?」

 達也「ええ、そうです。どうしても舞先生にお願いしたいんです」

俺の顔から視線をそらして、舞は

 舞「でも・・・」

と、はっきりしたこたえはしなかった。

俺は決心して、俺自身の名前を出した。

 達也「義経先生の事ですか?皆に聞きました」

舞はビックリしていた。

そして、たったそれだけ、会話に義経の名前が出てきただけで、舞は泣いていた。

 舞「あっ、ごめんなさい」

舞は俯き、走って行った。

失敗したなと思った。


俺は第二コンピュータルームに顔を出した。

今日はテレビゲームの基本となる、プログラムの勉強をしていた。

ひとつのポケットコンピュータを囲んで、みんなでワイワイ言っていた。

ポケットコンピュータ、通称ポケコン。

まあ、超簡単なコンピュータだ。

ベーシック言語といわれるプログラム言語を使うことができる。

今日はそれで、簡単なゲームを作っているようだ。

ちなみに今ここにあるポケコンは、山下さんがゲーム同好会に寄付してくれたものだ。

先日家に行った時、義経との思い出だといって、ポケコンを渡された。

ポケコンの中には、20年近く前に、俺が作ったプログラムが残されていた。

3つの記号を巡に表示し続けて、魚が泳いでるように見せるだけの簡単なプログラム。

それだけであのころの山下さんは、とても喜んでくれていた。

それが証拠に、それがそのまま今まで残されていたのだから。

 きらら「きたきた~何処いってたのぉ~」

きららは席を離れて俺のところによってきた。

特に隠す必要も無いし、むしろ舞の顧問勧誘は失敗したのだから、話さないといけないと思い、俺は正直に話す事にした。

 達也「いや、舞先生に顧問してくれるよう、俺もお願いに行って来たんだ。でも失敗しちゃったけどね」

ため息がでた。

 きらら「そうなんだぁ~残念」

みんなも話を聞いていたが、俺が失敗した事を誰も責めはしなかった。

 美鈴「舞ちゃんがダメだったら、誰がいるかなぁ~」

 吉田「寮の山下さんとかダメかな?」

 うらら「良い考えね」

 達也「そらダメだろ?先生じゃ無いし」

 知里「じゃあ校長先生に」

 まこと「絶対やだぁ~」

みんな楽しそうにはしているが、やはり残念そうだった。

そんな時だった。

扉がノックされた。

新入会員かなと思った。

しかしそれは、その後の声で直ぐ否定された。

 舞「神村です。入ってもいいかな?」

みんな困惑した表情になったが、すぐに心からの笑顔に変わった。

舞はコンピュータルームに入ってきた後、俺と少し話がしたいと言った。

俺は促されるまま、中庭にきていた。

 舞「さっきはごめんね」

 達也「いえいえ」

1つ言葉を交わした後、少し沈黙がつづいた。

 舞「星崎君にひとつ聞きたい事があるんだけどいい?」

俺は頷いた。

 舞「始業式の日、泣いてたよね?それで私の顔をみて逃げていった。あれはどうして?」

俺は動揺して、直ぐに返事が出来なかった。

そっか。

さっき舞が少し動揺していたのは、あの時の生徒が俺だったのを覚えていたんだ。

 舞「泣き顔を見られたくないなら、廊下で泣いてた説明ができないし、おそらくは私に見られたくなかったから?」

俺は素直にこたえてしまった。

 達也「うん。そうだよ」

と・・・

 舞「何故?」

少し冷静になった俺は、考えてからこたえた。

 達也「義経さんの事、俺よく知ってるんだ。で妹である舞先生を見て、思い出した。」

 舞「へぇ~もしかしてお兄ちゃんの生徒?」

苦笑いがでた。

 達也「ん~そのへんは内緒で」

適当にはぐらかした。

 舞「そう・・・」

しばらく沈黙が続いた。

 舞「・・・お兄ちゃん、沢山の人から好かれる先生でスゴイよね」

そんな事ないと言いそうになった。

かろうじてとどまった。

そして言い直した。

 達也「俺が泣いたのは、舞先生がなんだか寂しそうだったから。きっと義経さんも、舞先生には笑顔でいてほしいと思ってるはずだから・・・」

 舞「ありがとう。私もお兄ちゃん離れしなくちゃね」

泣きたいのをこらえているのが分かった。

でも、舞は今度は泣かなかった。

 舞「顧問引き受けるよ」

できる限りの笑顔を作った舞は、そう言って、ゲーム部の顧問を引き受けてくれた。

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