結婚
別れは、遅かれ早かれいずれは訪れる。
今日は送別会。
吉田君と新垣さんが、受験に専念したいという事で、今日限りで部活を引退する。
新入部員も増えたし、思い残す事も無いと言っていた。
結局大会では活躍できなかった2人だけれど、それでも俺達の仲間だったんだ。
RPG作成だって、新垣さんの音楽が無ければ、きっと金賞なんて無理だっただろう。
今日の送別会は、みんなの感謝の気持ちだ。
吉田「なんで結婚式なんだ?」
達也「みんなの感謝の気持ちを伝えるためには、結婚式をするしかないでしょ?まあ、結婚ゲーム?」
吉田「意味わかんない」
まこと「まあまあ、文句いわないの。さあ、司会者さん、お願いー!」
ビシッと学生服で正装する吉田君が緊張する。
皆が司会者うららを注目した。
うらら「それでは、新婦入場です」
部室のドアを開けて入ってきたのは、ゲーム部作ウエディングドレスを着た新垣さんだった。
やばい。
やたら可愛い。
少し照れて、少し嬉しくて、少し涙を光らせて。
ウエディングドレスは、舞とかきららが協力して作ったらしいけど、デキはかなり良い。
今日子「きゃー!智恵子ちゃんカワユス!ちょーカワユス!うまやらしいわぁー!」
夢「それを言うならうらやましいでしょ」
知里「うん。うまらやしいよぉ~」
だから間違ってるって、チリちゃん・・・
新垣さんは俺達のならすクラッカーを浴びて、吉田君の横まで歩く。
バトルグリードで得た部費で買った指輪を、吉田君に渡す。
達也「これは部員みんなからの贈り物。新垣さんにつけてあげて」
吉田「いや、ま、マジで?」
吉田君はメチャメチャ照れていた。
指輪を持ち、新垣さんの左手をとる。
新垣さんの涙が一筋流れる。
指輪は、吉田君の手によって、薬指にはめられた。
まあサイズは聞いていたので、指にピッタリだ。
指輪をはめた瞬間、新垣さんが吉田君に抱きついた。
ああ、本当に好きなんだな。
そう思った。
人が人をどう思って、どれくらい想っているのかなんてわからない。
何かの漫画であった、レベルを計る機械が存在して、想いをはかれるならどんなに良いだろう。
それで一番想いの強い人こそが、きっと一番だと想えるかもしれないから。
今日子「チューだよ!ちゅー!ココはブチューーーーっと、やっちゃいなよ!」
吉田「おいおい、流石にそれは照れるだろ?」
きらら「いいじゃん、今日だけ今日だけ」
愛奈「いいなぁ」
和己「ドキドキ」
すると新垣さんがいきなり吉田君にキスした。
吉田君の固まってる顔がなんだか良かった。
後はみんなでどんちゃん騒ぎ。
てか、ピコピコ騒ぎ?
吉田君達は、愛の力を見せろとかって言われ、2人で協力してプレイするゲームを、延々とやらされていた。
やられたら、みんなから「愛の力が足りない」とか罵声を浴びていた。
2人は幸せそうで、楽しそうだった。
部活終了の時間、俺達は盛大に祝福して2人を部室から追い出した。
残った部員で部屋を片づけて、みんなも部室を順番に後にする。
俺は何となく部室から出る気がしなくて、なんとなく片づける振りをして残っていた。
部室には俺ひとりが残った。
達也「結婚か・・・」
友達の結婚式なんかは、今まで何度も出た事がある。
その時に幸せそうな顔をしていないカップルなんて、今まで見たことがない。
結婚とはそれほど素晴らしく、幸せな事なのだろうか。
俺は結婚していないからわからないけれど、おそらくはそうなのだろう。
でも、結婚したいと本気で想えた人は、俺の記憶にはおそらくない。
舞「あれ?まだ残ってたんだ?」
舞だった。
どうやら最終チェックにきたようだ。
達也「ああ、何となく疲れた」
俺は椅子の背もたれに体をあずける。
舞「ドレスはどうっだった?ちゃんとウエディングドレスに見えた?」
達也「ああ、良いできだったよ。本物とまではいかなくても、凄く良かった」
俺はドレスを思い出しながら、舞を見た。
舞「そう、良かった」
あれ?
俺って、生まれ変わったから、もしかして舞と結婚できたりするのだろうか?
いや、でも兄妹だし、おかしい気もするけれど。
舞「どうしたの?」
達也「あっ!いや、舞も似合うかなって思っただけ」
舞「えっ?たぶん、似合うと思うけど・・・」
舞は少し照れていた。
なんだか俺も恥ずかしくなってきたので、そそくさと立ち上がって、部室からでた。
達也「さて、帰るか。鍵よろしく!」
俺は後ろにいるだろう舞に手を振って、寮へと歩きだした。
舞「おやすみー!」
舞の方を振り返らなかったが、声から、きっと笑顔なのだと思った。