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転生と…  作者: 秋華(秋山 華道)
転生と…
42/89

奇跡は存在しない

奇跡。

そんなものは存在しない。

何故なら奇跡なんてものは、人の行動と想いの積み重ねで起こる必然なのだから。


中間試験が終わり、俺達の部活動は、文化祭に向けて動き出していた。

チリちゃんが作ってくれた中間テストクイズゲームは、これはこれで使えるだろう。

夢ちゃんの中間テストには使えなかったけど、きっと来年の今頃に役に立つはずだ。

でまあ、成果報告はこれと、夏休みに作ったRPGをみんなにプレイしてもらう事に決まった。

他にもゲーム部の活動レポートを少々掲示。

夏のカード大会のレポートや、オリジナルゲームのルール説明など。

自作ボードゲームなんかも一応展示する事にした。

で、今どうしても欲しい物があった。

ゲーム部の輝かしい実績だ。

なんせ文化祭での成果報告は、来年度の部活予算に大きく影響を及ぼす可能性が高から。

RPGはコンテストに出してはいるが、結果はまだ出ないし、カードゲームの大会は誇れる成績は残していない。

そこで今皆が注目しているのが、バトルグリードでの「ドリームダスト」の1000連勝だ。

ただいま無敗の941連勝中である。

夢ちゃんとチリちゃんって事で言えば、正確には何度か負けてはいるのだけど、それはテスト機での敗戦。

バトルグリードは、1週間ごとに戦闘フィールドが変わり、戦術や機体の調整が必要だ。

最初の頃は勢いでガンガン戦闘してきたが、連勝が200を越えたあたりから、負けるのがおしくなり確実を期している。

そして今日は、このまま連勝できれば、おそらく最後のフィールドになるであろう砂漠フィールドでの調整を行っていた。

ココをうまく乗り越えられれば、ゴールが見えてくる。

 達也「砂漠はきついな。視界が悪いし、かといって障害物が無いし、運もかなり左右しそうだ」

 美鈴「うん。賞金が惜しいから、難しいフィールドをもってきたね」

この人、引退したのに毎日いないか?と、思わなくはないが、とにかく意見には賛成。

 きらら「来週のフィールドに変わるまで、バトルしなければいいんだよ」

もっともな意見だ。

しかし、これが1000連勝させないための手段だとしたら、1週間待っても同じ事だろう。

どうせまた、ガチンコバトルなフィールドになるはずだ。

今俺達はみんなで「ドリームダスト」をバックアップしていた。

 達也「とりあえず、俺とうららの「ブライトスター」で試してみる」

俺達の機体は、最高連勝記録が14回、通算成績が123勝14敗。

成績は悪く無いし、むしろ良い方だ。

だいたい1000連勝なんてそもそも無理な数字である。

「ドリームダスト」の次に良い成績を残している機体で、203連勝。

これを見ても、「ドリームダスト」の成績が尋常ではない事がわかってもらえると思う。

「ブライトスター」の戦闘が始まった。

視野が悪く、障害物がないので、追尾システム搭載のミサイルが有効だ。

お互い距離をとってミサイルの撃ち合い。

命中しているのかどうかもわからないけど、ゲージが減っているのでおそらくは当たっているのだろう。

同じようにこちらも削られる。

防御も難しい。

追尾してくる上に、すぐ側にくるまでミサイルが見えないのだ。

人間の反射神経では、見てからでは防御できないだろう。

 夢「うららさん、接近してみて」

夢ちゃんの言葉に、うららが接近を試みる。

 達也「うお!これはイタイ」

接近していく分だけ、ダメージが増す。

 うらら「ダメそう」

うららがスピードを落とす。

 夢「ダメ、そのまま追いかけて」

 うらら「う、うん」

こちらが接近を試みると、向こうは下がる。

相手に隣接する前に、こちらがやられそうだ。

 夢「そこでストップ!」

相手をコーナーに追い込んだところで動きを止める。

どうするつもりだ?

 夢「かして」

夢ちゃんが俺のコントローラーと取り上げた。

角に追い込んだ?

敵の機体は、これ以上は後ろに行けない位置まで下がっていた。

 夢「これで後ろと横はない」

なるほど。

敵のレベルがある程度高いと言うことは、同じところから同じようにミサイルを発射すれば、同じ軌道をたどる事になる。

今敵ができるのは、前進しながらの攻撃か、とどまっての攻撃だけだ。

わかりやすく言うと、ストレート、カーブ、シュート、フォークと球種の多いピッチャーの攻略は難しいが、ストレートとフォークだけなら攻略しやすいって事。

 夢「無駄!」

おっ!

防いだ。

 夢「楽勝ー!」

おっ!

また防いだ。

あっ!

勝った。

面白い戦術だ。

ある種のハメだろうか。

少しダメージはくらうけど、これを確実に決める事ができればいける。

問題は、うまくコーナーに持っていけるかだけど。

 夢「知里。いける?」

 知里「うん。大丈夫だと思うよぉ~!ちょっと武装変えるねぇ~」

チリちゃんは「ドリームダスト」のチューニングをはじめた。

直ぐに機体が組み直される。

 知里「できたよぉ~」

早!!

 達也「とりあえず、テスト機で試した方が良いんじゃない?」

 夢「1勝が惜しい。もう勝算はできてる」

ふむ。

これが油断にならなければいいけど。

「ドリームダスト」の登録をする。

対戦相手は、だんだんと決まりにくくなっていた。

なんせ勝率が10割の機体の相手だ。

弱い機体とのバトルは組めない。

少しして相手が決まる。

先週俺の機体ときららの機体が対戦して、負けている相手だ。

なかなか強い。

バトルが始まる。

 達也「ビーム砲で牽制か」

ビーム砲で相手の移動範囲を制限しながら、相手をコーナーに追い込む。

牽制している分、敵の攻撃も単調になって、既に攻撃を防御していた。

 夢「楽勝」

勝った。

あの強い相手に、自分の戦いをさせなかった。

強すぎる。

障害物が無ければ、障害物を敵の心の中につくるってわけか。

説明はできるが、実際やるのは難しいし、そもそも思いつかない。

俺はなんとなく、中間テストの無意味さを感じた。

この子達なら、楽しんで、そして100万円を手に入れる。

確信していた。


2日後、皆は緊張していた。

ただいま999連勝。

そして今まさに、ラストのゲームを始めようとしていた。

 美鈴「勝ったら100万、私の口座に振り込まれる事になるから、そしたらチリと夢に50万ずつ渡すね」

美鈴もなんだか緊張しているようだ。

当の本人達は、それほどでもないのか?

 夢「もう楽勝でしょ」

 知里「油断は禁物だよぉ~」

なんだか全く緊張してないように見えるのが、むかつくんですけど?

俺はネット回線とゲーム機の状態を確認する。

ココで回線が切れたり、ゲーム機がフリーズなんて洒落にならんからな。

 達也「ヨシ。ダイジョウブダ」

やばい。

俺が一番緊張しているのか?

 夢「はーい」

夢ちゃんはいつもと同じようにコントローラーを操作して、簡単に「ドリームダスト」の最終登録を行った。

対戦相手が簡単に決まった。

 達也「決まるの早いな」

 美鈴「見た事も聞いた事も無い機体だね」

そうなのだ。

今まで誰も対戦していないし、聞いた事もない。

最近は「ドリームダスト」が1000連勝しそうな勢いだったので、いろんなネット掲示板で話題になっている。

連勝を止めるのは、あいつだとかこいつだとか。

そういったサイトでも全く名前の出ていない機体。

 まこと「戦績、0勝0敗ってなに?」

まこちゃんの言葉に、敵機体の戦績を見ると、0勝0敗だった。

ココで初心者や初バトルの機体が対戦相手に?

 達也「おかしい。これってもしかして」

 美鈴「あり得るわね。蔵の達人」

蔵の達人とは、クライアントのテストゲーマーで、腕利きの人を言う。

まあ、このゲームを作った人であり、ゲームの事をもっともよく知っている人って事。

とにかく今までの対戦相手でもっとも強いのは確実だ。

 夢「ふん。面白い」

夢ちゃんは、こんな反則のような仕打ちにも、楽しそうだ。

てか、夢ちゃんが笑ってるよ。

 知里「やっぱり来たねぇ」

おいおい、こっちは予想していたのか?

もうこの人達信じられないわぁ!

・・・

とにかく・・・

フィールドに機体が映し出される。

カウントダウン。

スタート。

今バトルが始まった。

こちらの戦術は決まっている。

相手に近づき、追いつめる。

って、相手から近づいてくる。

こんな相手は初めてだ。

近づいてなど、基本的には勝てないから。

 まこと「でも早いね」

 達也「ああ、でも接近戦に持ち込んでも、直ぐに終わるはずだけど」

 美鈴「接近してしまえば、勝算があるのか。それともこちらの戦術と同じ事をするのか」

 きらら「同じだと、牽制が無い分こちらに分があるでしょ」

 達也「確かに。だから接近戦だ。でもビームバルカンで終わりでしょ」

相手の狙いがわからない。

こうしている間にも、相手のゲージは減り続ける。

こちらはほとんどノーダメージだ。

勝てるでしょ。

楽勝じゃん?

でも、何か気になる。

必殺技?

そんなものは無いはずだ。

それが存在したら、プレイヤからの反感が大き過ぎるだろ。

じゃあなんだ?

とうとう相手が隣接してきた。

しかし、あと5秒で相手を破壊できるだろう。

勝ったよな?

相手の攻撃。

 夢「なにこれー!」

相手の攻撃は、ハメだ。

ハメとは、抜ける事が不可能な状態に追い込まれ、やられるまで攻撃をうけてしまう、ゲームに存在する一種のバグ。

ただこれは禁止される事も多い。

あくまでバグであるから。

でも、このゲームが禁止していたかどうかは不明だ。

調べている時間も無い。

負けたか。

いくら夢ちゃんがゲームの天才でも、バグに勝つ事は不可能だ。

 知里「かして!」

突然チリちゃんが夢ちゃんのコントローラーを取り上げた。

チリちゃんのリアルでの動きが、早いよ?

 夢「え?」

何かを感じたのか、夢ちゃんはチリちゃんのコントローラーを持った。

モニタから軽い爆発音が鳴りまくる。

オートバルカン?

オートバルカンとは、接近してきた敵に対して、自動で発射される武器だ。

攻撃力最低、無駄に重い、積載物多いと、普通なら全く使い物にならない武器だ。

ド下手な人が偶に使っているけど、これを装備した機体が勝っているところなど見たことがない。

チリちゃんは武装を、ビームバルカンからオートバルカンに切り替えたのだ。

武装の切り替えは、イニシアチブ判定に関係が無い。

実行すれば必ず切り替わる。

そしてオートバルカンは、コントロールに対するイニシアチブで発動する武器ではない。

状況に依存する武器だ。

敵にダメージを与える事はできないが、隙は作れる。

チリちゃんが、両手の武装をビームジュルに切り替えていた。

合わせて夢ちゃんが隙をついて接近する。

チリちゃんの攻撃は、見事相手を捕らえて、ハメた。

 達也「勝っちゃったよ」

部室に拍手が鳴り響いた。

画面には1000連勝おめでとうの文字が表示されていた。

一応用意はしてあったのね。

反則で1000連勝させないようにしたくせに。

 達也「凄いよ2人とも」

 きらら「うん。感動しちゃった」

 うらら「信じられないよ」

 夢「最後は知里に助けられたね」

夢ちゃんは勝った喜びと、助けられた悔しさがあるみたいだ。

それでも喜びの方が大きいみたいで、少し笑顔だった。

 美鈴「いやぁ。最初は絶対に無理だと思っていたのに」

 まこと「それに最後は負けたと思ったよ」

 達也「だな。よくオートバルカンなんて積んでたな?」

そう、それが不思議だ。

なんせ使えない武器であるだけでなく、今までも一度も搭載していなかったはずだ。

 知里「う~ん。今日ね。朝、ひとりプレイでちょっと遊んでたんだぁ。そしたら何となくいつもと違う感じがしてぇ」

 達也「違う感じ?」

 知里「うん。全ての反応が少し遅い感じ?だから最速の軽い攻撃を試したら、ハメができちゃって」

なるほど。

って事は、ハメは今日の朝から、クライアントの意図でできるようにされたって事か。

やっぱり1000連勝を全力で阻止してきたって事だ。

しかし、反応が遅いって、さっきやった時には感じなかったぞ?

それに気がついたチリちゃんが凄すぎるって事か。

それにコントローラーを変えた後でも、最高のパフォーマンスをみせた夢ちゃんも凄い。

2人だったからできた1000連勝だな。

 達也「はぁ~脱帽だな」

 夢「そう言えば、今日は反応遅かった気がする。最終戦は、バルカン積んでたから明らかに鈍かったけど」

 チリ「ばれないようにいろいろ装備を削ったんだけど、やっぱりばれたかぁ~」

おいおい、それまずくね?

もしハメじゃなくて、今までどうりの敵だったら、苦戦したって事になるでしょ?

でもまあ、なんとかしたような気もするけど。

それに、気がついてたって、夢ちゃんもやっぱすげぇ~!

ゲームだけだけど。

それでも100万円ゲットだ。

中間試験で赤点ギリギリの点数をとってる子でも、以前まで赤点ばっかりだった子でも、高校1年生で100万円稼ぐ事ができる人がどれほどいるだろう。

それも1ヶ月ちょっとでだ。

学校は勉強を教える所だけど、才能を伸ばす場所に変えた方が良いかもしれないな。

そんな事を思った。

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