デジャビュ
デジャビュ。
初めて見た景色なんかを、前にどこかで見たように感じたりする既視感。
経験したことが無い事を、既に経験していたように感じる錯覚。
それは本当に錯覚なのだろうか。
何故なら、過去にあった事を、全て覚えている人なんて、存在しないのだから。
ここ数日の部活は、もっぱらバトルグリードだった。
夢ちゃんとチリちゃんのコンビが操る機体「ドリームダスト」は、初日こそ苦戦していたが、未だ1度も負けを味わっていない。
ただいま78連勝中。
どうやら2人は部活時間だけでなく、終わった後もチリちゃんの部屋でゲームしているようだ。
まあそれは、予想どおりと言うか、想定の範囲内というか、特に問題はないのだけど・・・
高鳥姉妹コンビと、俺とまこちゃんのコンビに問題があった。
きららとうららなら、双子の以心伝心とかってやつで、それはナイスなコンビネーションを見せてくれると思いきや、そうでもなかった。
いや、息は合ってるのだけど、プレイスタイルというか、目指すところが真逆というか。
だからこそうまく融合すれば面白いと思ったのだけど、このゲームに関してはうまくはいかないようだ。
俺とまこちゃんはもっとひどい。
プレイスタイルが真逆なだけでなく、コンビネーションも最悪。
うまくやれる自信があったんだけど、人の心とは難しい。
達也「ココは方向性の似たもの同士、きららとまこちゃん、俺とうららで組む方が良いような気がするが、どうだ?」
まこと「絶対そっちのがいいよ。たっちゃん接近戦してくれないんだもん!」
達也「しないのではなくて、まこちゃんの場合それだけだろ?状況に応じてだねぇ」
きらら「でも、こっちもうまくいかないし、とりあえず試してみようよ」
とりあえず、きららとまこちゃんから試した。
息はそれなりに合っている。
まあ、ゲーム部で共に頑張ってきたんだ。
当然と言えば当然か。
更には息が合うと言うより、考えが同じだからだろう、迷いが全くない。
まこと「ほらー!これが私の実力よ!」
きらら「まこちゃん凄い~」
これではなんだか俺が足をひっぱっていたみたいではないか。
クスン!
勝負は一瞬で終わっていた。
まこと「ほら!私のいうとおり接近戦でやればこんなものなのよ」
きらら「やっぱり爽快だよね。チマチマ削るより」
確かに爽快に勝ってくれましたな。
うらら「でも、それだと同型相手だと運に左右されるし、スピードで負けたら勝ち目うすくなるよ」
うららの言うとおり、接近戦勝負を得意とする機体は、対応力にかける。
連勝を目的としている以上、運には頼れない。
まこと「ガンガン勝ってればいいのよ。苦手な相手にあたらなければいいんだから」
それは運任せというのだよ。
でも勝率だけを競うなら、それもまた良い戦術かもしれないけれど。
達也「うらら。どっちがいい?」
俺は操縦系か攻撃系か、どちらが良いかうららにたずねた。
うらら「んー私たちだったら、どっちでもいけると思うけど、私が操縦系担当するよ」
確かにどっちでも良いような気もする。
うららの言葉からは確信がつたわってきた。
どうしてそんなに自信がもてるのだろう。
達也「うん。じゃあ、俺が攻撃系担当するけど、防御系はそちらもオンにしておいていいよ」
防御系は、操縦系担当者も一部使用が可能だ。
ただ2人ともオンにしてると、どちらがやるかで迷うから、大概は攻撃系担当者が行うのが基本だ。
まあ俺がヘタレで、うまくないから助けてもらう魂胆なのさ。
ゲームがスタートした。
うららは敵と距離を置いて様子をうかがう。
うむ。
俺とプレイスタイルが近い。
これはやりやすい。
うらら「あっ!」
達也「え?」
俺はうららの声に反応して、ロケット砲を発射してしまった。
それはうまく敵機体に命中。
うらら「あっ!」
達也「ほえ?」
俺はまた体が勝手に反応して、レーザー砲発射。
敵の足に命中していた。
敵の動きが鈍くなる。
達也「今だ!」
俺が言う前に、既にうららは敵に接近していった。
なんだろうこの感じ。
とても懐かしい感じがするデジャビュ。
うららとゲーム?
義経の頃にそんな機会はなかったはずだ。
あの頃はうららはゲーム部ではなかったのだから。
しかし確かに感じるこの一体感。
達也「あっ!」
俺の言葉にうららが機体を後退させる。
それに合わせて俺はビームバルカン砲を発射させた。
敵は動きを止めてカウンターを狙っていたようだが、俺達はうまくかわして勝負を決めた。
そうか。
修学旅行の時、うららとテニスでダブルスを組んだ事があった。
あの時のナイスコンビネーションは、自分自身で凄く驚いた記憶がある。
その時と同じような気持ちだ。
俺がうららと仲が良かったひとつの気持ちを思いだした。
どうやら、コンビはこちらの方がうまくいく事がわかったので、この組み合わせのチームでやる事にした。
俺とうららの機体名は、「ブライトスター」に決定した。