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転生と…  作者: 秋華(秋山 華道)
転生と…
33/89

後藤夢の入部

人と人のつき合いは、どちらかが続けようと思えば続いてゆく。

そう、自分が友達で有り続けたいと思えば、友達関係はずっと続いてゆくのだ。

それは、決して切れない何かで繋ぎ止めているよう。

自分が切ったと思っていた関係も、相手が繋ぎ止めようとした時、再び繋ぎ合わせる力になるのかもしれない。

2学期に入った最初の部活。

部室に皆が集まっていたところに、ひとりの訪問者。

 達也「はいー!どうぞ!」

そういって俺はドアを開けて、訪れた人を招き入れる。

驚いた。

そこに立っていたのは、夢ちゃんだった。

 達也「あれ?どうしたの?」

 夢「あなたが、ゲーム部に誘ったんじゃない」

赤くなって、少し怒っているような感じ。

そういえば、俺は夢ちゃんと出会った時、ゲーム部に誘ったような記憶があった。

うん、確かに誘ったな。

俺はなんだか嬉しくなって、夢ちゃんの手をとっていた。

元彼女に似ている彼女だから、手を取るのも自然にできてしまう。

俺はそのまま手を引き、中にいる皆のところに連れて行った。

といっても、ほんの5歩くらいだけど。

 達也「あー!今日からみんなのお友達になる、後藤夢ちゃんだ。はい。自己紹介して」

俺は先生だった頃の癖で、転校生紹介みたいな感じでやってしまった。

ってか、転校生だからいいのか?

 きらら「きゃーかわいい!」

 新垣「うんうん。しかも美人系?」

部員達には概ね好評のようだ。

 夢「1年C組、後藤夢です。よ、よろしくです」

夢ちゃんは、顔を真っ赤にして、ペコペコ頭をさげていた。

 知里「私と同じ1年生だぁ~うれしぃ~」

そういえば、この部活はほとんどが2年生だったから、チリちゃんにしてみば少し寂しかったのかも。

チリちゃんは夢ちゃんの手を取って喜んでいた。

それからしばらくは、みんなで夢ちゃんを囲って質問攻め。

ってか、完璧に転校生に群がるクラスメイト状態だ。

 きらら「なんで転校してきたの?」

 夢「母が、寮の管理人になったから・・・」

 うらら「そうなんだぁ~」

 まこと「じゃあ、ゲーム部にはどうして?」

 夢「えっ?」

夢ちゃんはチラッとこちらを見たが、直ぐに視線を戻して、

 夢「なんとなく、面白そうだったから」

と、無難な理由をこたえた。

 知里「さっき、達也ちゃんが誘ったとか言ってたよねぇ~」

 夢「達也ちゃん?」

チリちゃん、そのへんは言わなくても、ってか、達也ちゃんに驚いてる?

夢ちゃんはこちらを見て、なんだか怒っているようだ。

意味がわからない。

 達也「ああ、チリちゃんはみんなちゃん付けで呼ぶからね。夢ちゃんも達也ちゃんって呼んでもいいよ」

俺は軽い気持ち、特に意味無くいったのだが、夢ちゃんは真面目にとらえたようだった。

 夢「わかった。達也ちゃん」

・・・

なんだろう。

ノリの良い子ってわけでもなさそうだし、微妙にオーラも感じるのですが。

なんとなくだけど、由希と重ねて見てみれば、その意味がわかったような気がした。

新入部員歓迎会は、やはりゲーム部、ゲームでするのが当然だ。

部室にみんなで持ち寄って集めたお菓子を、部員それぞれとゲーム対決して勝てばもらえるというルール。

 夢「あー!クルクールのチーズ味・・・」

 達也「それが欲しいのか?では我が部員の三下、吉田君に勝てばそれは夢ちゃんの物だ」

 吉田「誰が三下だよ。じゃあゲームはブラックジャックだ」

俺は夢ちゃんと吉田君に、トランプを2枚ずつ配った。

まずは吉田君に聞く。

 達也「どないする?」

 吉田「んーこれでいいや」

どうやらあまり良くはないが、これ以上は危険な数字、16,7だろうか。

次に夢ちゃんに聞く。

 達也「夢ちゃんはどないする?」

 夢「もう1枚」

俺は1枚夢ちゃんにわたした。

夢ちゃんはカードを見て喜んだ。

これは良いカードがきたようだ。

 達也「では勝負だ」

俺がそう言うと、2人はカードを表にして見せあう。

吉田君は、Jと6、やはり16だった。

これでは後1枚引くのは悩む。

しかも1回勝負だからな。

続いて夢ちゃんのカードをみると、KとQとA・・・

ブラックジャック、21だ。

 達也「えっと、夢ちゃん、最初どれとどれがあったの?」

 夢「それは、これとこれ」

指さす先には、QとAがあった。

 達也「夢ちゃん、Aは1とも11とも数えられるから、このままでも良かったんだよ」

俺はなるべく優しく言った。

 夢「そんなの知らない。で、私の勝ち?」

 達也「うん。勝ちだからこれは夢ちゃんのものだ」

俺はクルクールカレー味を夢ちゃんにわたした。

 夢「違う」

クルクールカレー味は、突き返された。

うむ。

冷たいツッコミだなぁ~

俺は少し落ち込んだ振りをしながらチーズ味をわたした。

夢ちゃんは満面の笑みでそれを受け取った。

 夢「やった!」

・・・

普段表情の無い人、いや、負の表情を振りまいている女の子が、時折見せる笑顔とはなんて素晴らしいのだろう。

反則だよ。

クラッときちゃうよ。

なんとなく穏やかな気分になった。

その後もゲーム部員との対決は続いた。

ポーカー、赤黒のスピード、テレビゲームの路上の喧嘩2など、どれも部員は負けていた。

何故負けているのかわからない。

勝っていても、終わってみれば負けているのだ。

お菓子はドンドンとられていった。

 夢「あの、新人だからって、手加減してくれなくても」

夢ちゃんの言葉に、皆、少し殺気を出していた。

眉間をピクピクさせている。

俺は、俺だけは負けられない。

大人げないとは思ったが、俺は対戦ゲームに将棋を提案した。

 夢「うん。よくわかんないけど、ルールくらいは聞いた事あるから」

勝った。

ルールを知ってるくらいで、将棋で勝てるわけがないのだ。

単純なようで奥の深いゲーム。

プロまでいるくらいだ。

一朝一夕にはいかないゲームなのだよ。

 夢「王手」

 達也「・・・」

何故だ?

何故なんだ?

この子は一体何者なのだ?

駒をつかむその手は、いかにも素人じゃないか。

何故・・・

 達也「負けました・・・」

 夢「やったね!」

負けたのは悔しいが、夢ちゃんの笑顔を見ていたら、はっきりいってどうでもよくなった。

それにしても、何故こんなに強いのだろうか。

どのゲームも実際にやるのは初めてだって言っていた。

後で聞いた話になるのだけれど、テレビゲームやネットゲームで、ルールも理解せずやっていたらしい。

つーか、やりまくっていたらしい。

格闘ゲームも、よく似ているのは持っているとか。

完敗だよ。

正にゲーム部員になる為に生まれて来たような子だよ。

結局、ため込んだお菓子の半分を持って行かれる事となった。

 達也「じゃあ、今日の部活は終了ー!」

俺がそういうと、各々部室を後にする。

俺はふと気がついて、夢ちゃんを呼び止めた。

 達也「夢ちゃん、ちょっと待って。入部届けまだ書いてもらってなかった」

俺はそう言いながら、入部届け用紙を机の引き出しから取り出した。

 夢「あ、うん」

夢ちゃんはそれを受け取ると、それをテーブルに置いて書き始める。

名前のところをみる。

そこには確かに「後藤夢」と書かれていた。

昔付き合った彼女とそっくりの名前。

あれ?

何故?

子供って事は、結婚しているわけで、名字がそのままって。

聞きたい。

でも聞いて良いのだろうか?

死んだからとか言われたら申し訳ないし。

俺は結局聞けなかった。

 夢「はい」

用紙をわたされた。

 夢「おやすみなさい」

夢ちゃんはそう言うと、部室をでて行こうとする。

俺はその時、ふと思ってしまった。

 達也「ちょっと待って!」

 夢「何か書き落としてる?」

夢ちゃんは振り返ってこっちを見ていた。

 達也「夢ちゃん、テレビゲームするんだよね?」

 夢「うん」

 達也「ゲムステ4は持ってるかな?」

ゲムステとは、シリーズはすでに4まである大人気ゲーム機だ。

 夢「うん。あるよ」

俺はその言葉を聞くと、RPGつくったるでと、そのゲームデータをわたした。

 達也「これ。プレイして、感想きかせて欲しいんだけど」

ソフトとメディアを受け取ると、夢ちゃんはなんだか嬉しそうだ。

 夢「これ最新のだ。データ書き換えたりしてもいい?」

上目遣いでこちらを見る。

夢ちゃんは、どうやらデータをいじりたいのか、自分で作りたいのか、まあとにかくこのゲームをやりたいのだとわかった。

 達也「いいよ。バックアップは有るし、好きにして」

 夢「うん」

やっぱり反則だ。

あの頃の由希と同じ笑顔。

俺はきっと、由希のこの笑顔が好きで、付き合ったのかもしれない。

決して下心だけでは付き合ってはいない。

そう思いたかった。

男子寮までは共に帰った。

と言っても2分だけど。

夢ちゃんがドアを開けた時、ちらっと由希が見えた。

笑顔を向けてくれたが、夢ちゃんの笑顔とは全く違った、少し儚げな笑顔だった。

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