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転生と…  作者: 秋華(秋山 華道)
転生と…
21/89

双璧

双璧。

優れた2人をそう呼ぶ事がある。

3人だったら三羽烏とか、4人だったら四天王とか。

三国志では、5人で五虎将ってのもあったな。

今日は日曜日。

朝から電車を乗り継いで新宿にきていた。

ココまで約3時間、現在時刻は9時30分だ。

 達也「眠い。日曜日なのに、何故神は私にこんな試練をー!」

 美鈴「だから寝てれば良かったのに。どうせ私たちは午後まで勝ち抜くんだから」

新宿で行われる「魔女ック」全国大会。

開場には、複数の部屋に別れて約4000人が集結していた。

 達也「やっぱ部員だし、応援したいじゃん?」

 美鈴「はいはいありがと」

まあとにかく、部員全員で、美鈴先輩とチリちゃんの応援に来ていた。

といっても、応援合戦とかしていたら、速攻会場を追い出されるから、プレイ前に「がんばれ」と声をかける程度なのだが。

10時よりトーナメントの大会は幕を切ったわけだが、美鈴先輩とチリちゃんの強いこと強いこと。

どれも圧勝だ。

ゲーム部の双璧。

そんな事を思ってしまった。

美鈴先輩のプレイスタイルは、とにかく正当。

その時一番良いと言われるデッキで、その時々の最良の手をうってくる。

相手が子供だろうと弱かろうと容赦なし。

対してチリちゃんは、デッキは奇策の固まり。

予想しづらいプレイスタイルで、相手も驚いている。

何故そこで、みたいな顔をしている。

不思議だ。

何故勝てるのかわからないが、本人はちゃんと勝算があってやっているのだ。

まあ、俺が理解できないのは、あまり「魔女ック」を俺が知らないからかもしれないけれど。

絵が好きじゃなくて、どうしても敬遠してしまっているカードゲームなのだ。

ルールはダツダムと似ているから、少しは理解できるけどね。

午前のバトルが終わって、2人とも全勝。

トーナメントだから1度負ければ終わりなのだから、残っている時点で全勝なのは当然なのだが、それにしてもあまりにも楽勝。

俺は、これはひょっとするのかもと思っていた。

昼休みは、皆で近くのファーストフードで食事をしながらだべっていた。

 吉田「田中先輩も知里ちゃんも強いね」

 知里「そんな事ないですよぉ~偶然ですぅ~」

 美鈴「そんな事あるわよ。それにチリは、いつも私より上位入賞してるからね」

 達也「そうなんですか。美鈴先輩のが完全勝利してるように見えるけど」

チリちゃんの強さがどうもよくわからないし、端から見てると危ない場面も有ったように見える。

まあ終わってみれば楽勝なんだけど。

 智恵子「なんだか優勝しちゃいそうですね」

 うらら「新垣さんの言うとおり、優勝してもおかしくないですよ」

俺だけでなく、その可能性が高いと皆思っているようだ。

 きらら「それにしても、女の人って少ないよね」

きららが、ファーストフード内を埋めるお客、ほとんどが大会参加者を見回してふと言った事。

そうなのだ。

カードゲーム人口は、明らかに男性の方が多い。

「ポケアニ」とか「遊び王」だったら、まだ女性も結構いるんだけど。

 達也「魔女ックだからね」

 美鈴「魔女ックだから」

 知里「魔女ックだもん~」

知っている人はそれで納得し、知らない人も納得せざるを得なかった。

さて、いよいよ午後の部だ。

ここからは徐々に強い人が出てくるらしい。

「ゲームを楽しむ人より、勝つためにやってる人が残ってきているはずだから。」

美鈴先輩はそう言って戦場へとおもむいた。

午後の部も2人は勝ち続けた。

出場者は徐々に減り、残るは16人。

ベスト16というやつだ。

これが高校野球なら、視聴率が一気に上がってくる辺り。

対戦相手が発表された。

「田中美鈴さん、5番です。高橋ちさと?ちりさん、5番です」

ここまできて、我が森学の双璧どうしの対決になった。

 美鈴「チリ、勝負よ」

 知里「まけませんよぉ~」

両者良く知った同士の対決。

2人の対戦成績を見てみると、ややチリちゃんの方が勝率が良い。

でも本番では関係ない程度の勝率。

2人ともなんだかとても楽しそうに席についた。

デッキを交換して、お互いシャッフルする。

美鈴先輩はいつもと同じ表情だ。

チリちゃんは、美鈴先輩のデッキに念をおくってからデッキを返す。

さあ勝負だ。

知った相手だから、反応も展開も早い。

魔女ックは、1ゲームだいたい15分が目安だが、2人だとおそらく5分。

1ゲーム目は4分で簡単に美鈴先輩が取った。

ちなみにカードゲームは3回戦勝負が多い。

それは、デッキには必ず相性が存在し、それを回避する為の手段として、サイドデッキというのが存在する。

1ゲームと2ゲームの間、そして2ゲームと3ゲームの間に、デッキのカードとサイドデッキのカードを変更する事で対策できるのだ。

チリちゃんはサイドデッキのカードのほとんどをデッキにいれ、それと同じ枚数だけ抜き取る。

美鈴先輩は1枚だけ入れ替えた。

2回戦。

チリちゃんのプレイスタイルが変わった。

デッキのカードが大きくかわれば、当然の事。

チリちゃんの奇策に、美鈴先輩はとまどっていた。

今度は7分でチリちゃんが勝っていた。

おそらくチリちゃんが、このデッキで美鈴先輩とやるのは初めてだったのだろう。

だから美鈴先輩がとまどった。

美鈴先輩は、カードを3枚入れ替えた。

チリちゃんはそのまま。

いよいよ泣いても笑ってもこれが最後のバトル。

チリちゃんは2回戦同様のプレイスタイル。

美鈴先輩は少し守り重視でカードを節約していた。

カードゲームでは、手札の枚数というのは、勝敗を大きく作用する。

場で負けていても、手札が有れば逆転は可能。

美鈴先輩にしては珍しく、一気のコンボを狙っているのか?

チリちゃんが押し切るか、それとも一気に反撃できるのか。

美鈴先輩がドローしたカードを見て、満面の笑顔を浮かべた。

結局そのカードが決め手となり、美鈴先輩の大逆転勝利だった。

その後、ベスト8の戦いで、美鈴先輩はあっさりと負けた。

美鈴先輩も

 美鈴「私が2ゲーム連取されるなんて、初めてかも。ショック・・・」

なんて言っていたけど、顔は笑顔だった。

 達也「良い勝負でしたね。チリちゃんとの勝負。アレが決勝だと言われても違和感無いよ」

 きらら「だねー!なんだか2人が一番強そうに見えたもん」

まあもちろんこれは根拠の無い身内贔屓なのだが、それを言うのは野暮ってもんだ。

 まこと「優勝したごっついおっさんのが強そうだったよ」

 吉田「あれは別の意味でね」

 新垣「プロレスしててもおかしくないよね」

まこちゃんは微妙に野暮だったが、誰もが楽しそうだったから、これで良いのだと思った。

帰りにゲーセンによって、みんなで対戦ゲームをして遊び、「プリントしまうま」でみんなで写真シールを作って遊んだ。

今日も楽しい1日だった。

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