大会参加スタート
不正とは、何時の時代も、どんな場所でも存在する。
正義の象徴警察だって、殺人を犯す時代だ。
先生だって・・・
森ノ宮にある唯一の玩具屋。
そのスペースの一角で、ポケアニカード大会予選が開かれていた。
実際に参加するのはうららとまこちゃん。
でも他の全てのゲーム部部員は応援に来ていた。
まあ、応援だけってわけでもないのだが。
俺はうららやまこちゃんのカードよりも、対戦相手のカードに目を光らせていた。
もちろんカード内容まで見て、通しをしてると思われるのもいやなので、見えない位置からみているのだが。
通しとは、敵の持ってるカード内容を、味方に教える事だ。
相手の持っているカードがわかれば、戦略がたてやすい。
相手カードを見る為のカードも存在するのだ。
それをリスク無しでやる事はもちろん反則。
しかしこういった大会では、必ずと言っていいほど不正が行われる。
通しは滅多に見ないが、キーカードを懐に忍ばせたり、ドローカードをさりげなく複数枚取ったり。
特に予選は記録もとっていないから、不正しやすい。
まこちゃんもうららも、優位にゲームを進めているようだ。
後は不正されなければ勝てるだろう。
と、思っていたが・・・
まこと「しまったぁ~」
・・・
不正とは、しようとしなくても、してしまう事があるという事か。
まこちゃんのドロー。
カードが2枚重なっていた。
まあ予選だし、その時気がつけば「ごめんなさい」で済んだだろう。
でも、次の自分のターンまで気がつかず。
そして自分で気がついてしまった。
まこちゃんは正直にそれを話してサレンダーした。
負けを認めたって事ね。
ちょっとションボリしていたまこちゃんだったが、うららが勝ち進んでいたのでいつの間にか元気だった。
うららは予選決勝まできていた。
勝っちまうのか?
実はココで勝たれると、来週の「魔女ック」の大会と、「ポケアニ」本戦が重なってしまう。
まあその時はその時で、二手に分かれればいいのだけど。
とにかく応援だ。
勝ったら後の事は後で考えよう。
流石に決勝だからギャラリーも多く、不正はできないだろう。
俺はうららのカードを覗き見る。
場にはすでにカミナリネズミが出ていた。
状況は有利だ。
「ポケアニ」は、状況が有利になると、そのまま押し切れる事が多い。
競馬風に言うと逃げ馬有利なゲームだ。
場では完全に圧倒している。
しかし、アニマルカードを引いてこない。
カードには色々な種類がある。
アニマルカードは、実際に戦闘を行うキャラクタカードで、これが無いと戦いそのものができない。
他には、技を使うためのエネルギカードとか、戦いをサポートするサポートカードなどがある。
手札には今、アニマルカードが無く、その他のカードばかりなのだ。
うらら「うーん・・・」
またアニマルカードを引いてこなかった。
これではカミナリネズミがやられた時点で負けになる。
相手がグズグズしている間になんとか引いてこないと。
しかし期待は裏切られ、とうとう逆転の状況になった。
後1ターンで、こちらの負けが決まる。
次のドローでアニマルカードを引かなければ負けだ。
うらら「来いー!」
うららは気合いを入れてドローしたが、結局アニマルカードは引かなかった。
うらら「ちゃんと確率計算して、最低必要枚数割り出したのになぁ」
達也「アニマルカードを抑えると、強いデッキができるけど、対応力と安定性に欠けるんだよね」
うらら「4回に1回は来る計算だったのにー」
達也「まあ、計算だけでは強いデッキは作れないって事だね。アニマルカード多めに入れて、保険かけないと」
うらら「そっか。保険かぁ。最後ドローできなかったのは、きっと病気だったんだね」
面白い考え方だったけど、そう言われれば納得できた。
あと、うららは運がいいのかと思っていたけど、実は悪いのじゃないかと思った。
準優勝のうららは、最新のポケアニ映画の割引チケット2枚をもらっていた。
うららは部のみんなの物だと言ったけど、皆うららの物だと言って、うららに持って帰らせた。
玩具屋から出たら、外はとても暑かった。
寮へ向けて皆で歩いてる間に、太陽の光は少し赤くなっていた。
皆で歩いていると、こんな人里離れた所にある学校も良いなと思った。
空気は美味いし、風も心地よい。
セミの鳴き声が、今日は少し眠かった。
とにかく今日も楽しかった。
なんとなくみんなに感謝した。