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『君を愛することはない』と新婚初夜に新妻に宣言したが、妻は転生者で昭和の女だったので斜め上方向に進んだ話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/10/02

「君を愛することはない」



 新婚初夜で20歳年上の旦那のロレンツに言われた。


「君は子供達の世間体のために結婚したのだ。私が留守の間、子供達を育てなさい」

「畏まりましたわ」


 私は20歳のダリア、貧乏伯爵家出身だわ。多額の援助により結婚した。


 普通ならそんなことを言われたらショックで寝込むだろう。

 だが、私は人生2回目だから何ともない。


 翌日には旦那は外国に旅だった。

 王宮では外務卿でもある。何だが難しい交渉のために出発したらしい。




「何だか、悲しい旦那だね。奥様に操を立てていたのか・・・。あっ、そこの女中さん。お菓子追加して下さらない?」



「は、はい」


 ソファーに寝転んでボリボリクッキーを食べていたら子供達がやってきた。


「お前が新しく来た女か!」

「私は絶対にお義母様と認めないのだから!」

「出ていって!」


 上は16歳から、下は6歳の子、全員で9人?昔は信じられないほどの多産だった女性がいたと聞いたわ。


 いや、養子の子もいると資料にあったわね。でも、子沢山ね。



 子供達に歓迎されていない。

 だから、


「ちょいと、あたしもお前達の母ちゃんをやる気はないよ」


「「「えっ」」」

「お前は貧乏伯爵家出身で金目的に来たのだろう!」



「ええ、そうよ。お金目的よ。だから何?」


 ここでぶん殴っても良いが、暴力は文化だ。

 何を言っているかと思うかも知れないが、体罰は伝播するのだ。

 体罰で育てられた子は大人になったら体罰をして子供を育てる。


 また、近世の欧州では殿方の間で決闘が流行し顔の傷のある男子はチヤホヤされたとか。


 昭和の時代は普通に不良に体罰をする教師のドラマが流れて感動していたものだ。


 体罰は良くない。いや、例えば、自分の子がイジメという犯罪をしていたらぶん殴っても良いとは思う。


 だけど、この場合は体罰ではない。子供達の話に乗っかるわ。



「そうよ。私はこのドラッパー侯爵家の家産を奪うために来たのよ」


「な、何だって!」

「ヒドいわ!」


「フフフフフ、阻止したかったら勝負をしなさい。長男ロルフ、決闘を受けなさい」

「決闘だと!」


「方法は私に任せなさい。こちらはか弱い女だよ」



 庭に出て勝負をした。

 勝負方法は野球だ。



「ヘイ、ヘイ、バッター、ビビっているよ!」


 私が投手でロルフがバッターだ。棒を持たせた。



「三球なげて、打ち返したら、あたしの負けでええよ。荷物をまとめて出ていくわ」

「打ち返してやる!テニスは得意だ!」


 キャッチャーはいない。木に投げて返ってくる寸法だ。


 だけど、あたしには一日の長がある。


「ロルフ!三振だね」

「な、何だよ。卑怯だよ。玉が曲がった!」


「なんだい?戦争に伏兵を置かれたら卑怯です!と泣き言をいうのかい?」

「ちくしょー!」



 それからメイドにグローブを作らせ。お抱えの工房にバットを作らせた。


「ただ、玉を打ち返す棒だろ?」

「違う!重心が大事だよ!剣と同じだね」


 野球道具一式を作らせて子供達と野球をした。



「まずはキャッチボールだよ!」

「・・・玉を打ち返す方法を教えろよ!」

「基本が大事だよ!次はゴロを捕る練習だよ。ひたすら膝をつける!」





 野球はもう9人いないと試合出来ない。

 だから、使用人達を巻き込んだ。


「ええ、勤務外で・・・」

「それは、クタクタで・・」


「なんだい、遊びだよ。いい汗かいたらビア美味いよ」




 やってみると、結構好評だった。



「ヘイ!ヘイ!バッタービビっているよ!」


 子供達も巻き込んで練習試合をして・・・



「なんだい!主人の子だからって遠慮してはいけないよ!」

「「「はい、奥様」」」



 子供だから完膚なきにたたきのめせた。


「2―36で使用人チームの勝ちでございます・・・」


 執事長が審判だ。



「ちくしょー!」

「お、お兄様」

「あの女、まだいるの?グスン」


「特訓してやる!」

「ちょいと、ロルフ、練習は一日2時間まで、それまでは勉学、マナー、剣術だよ!」



 使用人達も変わって来た。



「この花をプレゼントして彼女のハートにストライク!」

「何だよ。直球だな」


 言葉遣いに野球用語が入って来た。



 さあ、試合だ。また、楽勝かと思ったら思わぬ伏兵が現われた。


 3男のフランツだ。

 バントを考案しやがった。

 使用人達は対応出来ない。



「しまった!外野ばかり気にしていた!」

「それをやるか・・・それなら内野に守備を固めるぞ」


 と思ったら、ロルフが外野に飛ばしヒットになった。



「「「やったー!」」」

「ロルフお兄様、最高ですわ」


 リードされた。

 だから、私は・・・


 盗塁をさせた。


「な、何だよ!」



 今回は・・・・


「4対9で使用人チームの勝ちでございます」


 何とか勝てた。

 考えるようになったわね。


「「「ちくしょう!」」」

「もう少しだったのに」


「ゲヘへへへへ、ウハハハハ!まだまだ足りないね。」


「つ、次はたたきのめしてやる!」




 だが、女の子が男との子と体力的に勝負を出来るのはせいぜい12歳くらいまでだ。


 長女マリアに・・・


「あんた生理だね。練習休みなさい」

「何ですって!」


 休ませたり。

 使用人達も野球が上手くなったので危ない。

 小さい子はチームから抜けさせた。


 ロルフは友人を連れて来たり。

 騎士団に協力を頼んだりして、


 どんどん実力が拮抗してきた。



「「「「打倒!ダリアチーム!」」」」

「継母を追い出せ!」



 それから2年経過した・・・旦那が帰ってきた。




 ☆☆☆ロレンツ視点



 久しぶりに帰国した。陛下に挨拶と報告をしたら、思わぬことを言われた。



「ドラッパー候よ。貴殿の妻、ダリア殿が新しい産業を作ったな・・」

「陛下、それは知りません。別のダリアではないですか?」

「何だ。手紙でやり取りしていないのか。とりあえず帰りなさい」


「はい、陛下、デルタ王国で新しい妻を見つけました。それもご報告させて頂きます」


「聞いたぞ。政略とも言えないな・・・」



 新しい妻を連れて久しぶりに屋敷に戻った。



「ロレンツ様・・・子供達は寄宿学校に行かせて下さいませ」

「ああ」


 外国の公爵家出身だ。社交会で知り合った。夫に死に別れて同じ境遇なので話が合った。

 ダリアとは離縁だ。

 もう、子供達は巣立つ時期だ。

 つまり用済みだ。


 妻は私の肩に頭を預けた。新しい生活が楽しみだ。


「さあ、着いた。馬車を降りよう。エスコートする。あれが新居になる」

「はい・・・あら・・・人だかりだわ」



 屋敷に大勢集まっていた・・・平民だ・・・



「おい、何が起きている!何だ。この看板は!」


 衛兵に怒鳴りつけた。

 通常、家門名は掲げない。それは野暮というものだ。

 まるで商会のように看板があった。


「はい、今日は野球の試合です」


「ドラッパー球場・・何だ。これは、テニスの大会でもしているのか?」



 庭に向かったら・・・・魔道マイクでアナウンスが響いてきた。




【大詰めです!近衛騎士団チーム!逆転なるか!最終回ここで二死満塁、ピッチャー、ロルフ、打ち込まれています】



「タイム!」


【ここでトップラー野球軍、ダリア監督タイムをかけました。おっと、投手、交代です】


「監督、俺、まだやれます」

「そうかい。なら、次もあるんだよ。休みな。マリアに任せなさい」

「でも、妹は・・・」

「妹を信じなさい。ちょいと、ピッチャー交代、マリア・ドラッパーとロルフ・ドラッパーを交代だよ」



【ピッチャー交代、令嬢が出てきました!相手は近衛騎士団の4番のマックスです!どんな球をなげるのでしょう・・・おおっと、下手投げです!

 これはビックリ。下から上に向かいます!マックス、対応出来ません!】



「三振!トップラー野球軍の4対3で勝利、整列してお互いに礼をしなさい」




 ・・・何だ。観客が騒いでいる。ビアの売り子もいる。サンドイッチ売りもいる。


 二列に並んで・・・



「マリア嬢、その投げ方は新しいな」

「フフフフ、アンダースローというのよ」


「ロルフ殿さすがだな」

「何とか、勝てました」



 お互いに健闘をたたえ合っている。


 何だこれは・・・




 その後、執務室に子供達とダリアを集めて叱責した。


「な、何だ!栄光あるドラッパー侯爵家がまるでサーカスのように商売するとは!」


 ガミガミ二時間叱って。離縁を宣言した。


「ダリア!離縁だ!出ていけ!」



 子供達はダリアを慕っていると思ったが・・・


「監督、では三日後、球場で会いましょう」

「そうさね。今度は近衛騎士団の演練場だからね」


 監督?


 すんなりと別れて・・・・


 三日空けて、近衛騎士団の演練場で試合とやらが行われた。


 新妻と共に見に行く。

 平民だけではない。貴族も来ている・・・


 あれは大公殿下?



【皆様、王都野球連盟の理事長、大公殿下のご臨席です。ご起立をお願いします】



「うむ。野球は素晴らしい。スポーツマンシップに則り・・・」



 何かスピーチをしている。


 そして、試合開始、トップラー野球軍の席にダリアがいて指揮を執っているのか?


「ヘイ、ヘイ、ガツンといけ。あちらは体力が商売だ。こちとら貴族だ。負けて元々勝ったら儲けだよ!」


「「「はい!」」」


 ロルフとマリアがいて、チームには使用人と知らない顔の子弟がいる。

 フランツが何かノートを取っていて・・・


「兄上、内角攻めが有効です」

「さすがデーター係のフランツだ。言う事を聞こう」



 思わず観客席からダリアのいる場所まで飛び込んだ。


「おい!貴様、子供達に何をしたのだ!」


「何って・・・・あら、大公殿下」


 な、何、大公殿下が衛兵を連れてやってきた・・・・



「君、野球は神聖なスポーツだよ。邪魔してはいけないよ」


「そんな。勝手に・・・」

「君がダリア殿に子供達を任せたのだろうっと、そうそう離縁したのだな。君とは関係ないはずだが」



「しかし・・」

「しかしも案山子もない。つれて行きなさい」


「「「はい、大公殿下!」」」


「ダ、ダリアー!」


「グヘへへへへ、ゲヘへへへへ、子供達の心は野球に夢中だよ」


 衛兵に肩を掴まれて退場させられているときに空を見上げた。



 亡き妻の顔が大空いっぱいに広がっていた。

 その顔は、何とも言えない顔だった。


 あの初夜の時、何と言えばこんな結果にならなかったかは分からない。





 ・・・ダリアは大公殿下と再婚を機にドラッパー野球軍の監督を降り。

 フランツが二代目監督になったのは後の話である。

 フランツはダリアとよく似た性格の女性と結婚し再生工房とあだ名される名監督になったのは有名な話だ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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