6.幕間 守るという重さ
夜が深まるにつれ、 焚き火の音だけが、岩場に残っていた。
レオンはもう眠っている。 浅い寝息。
今日の戦いのあとでも、 眠れるようになったこと自体が、 この数日の変化だった。
ガルドは、剣を膝に置いたまま、 炎を見つめていた。
――あの一撃。
第六章の戦いが、 頭から離れない。
踏み込み。 体重。 殺すと決めた瞬間。
あれは、 迷いを捨てた動きだった。
だが同時に、 思い出してしまう。
かつて、 同じように剣を振り、 それでも守れなかった存在がいたことを。
血の匂い。 崩れ落ちる音。
間に合わなかった背中。
――俺が弱かった。
それ以外の理由は、 ガルドの中には存在しなかった。
運が悪かった? 相手が強すぎた?
違う。
強ければ、守れた。
それが、 戦場で生き残った者の、 唯一の答えだった。
だから、 強い者には、 守る義務がある。
守れなかったのなら、 それは力が足りなかったということだ。
焚き火が、 ぱちりと音を立てる。
ガルドは、 無意識のうちに視線を動かし、 眠るレオンを見た。
まだ細い肩。 剣を握るには、 少し頼りない腕。
それでも。
あの場で、 逃げなかった。
判断は遅れたが、 目を逸らさなかった。
――危なっかしい。
そう思う。
同時に、 守らなければならない、 という感覚が、 はっきりと胸にあった。
信頼とは、まだ言えない。
背中を預けるには、 足りない。
だが、 見捨てる理由も、 もう無かった。
ガルドは、 そっと息を吐く。
また同じことを繰り返す気はない。
育たないまま、 死なせるつもりもない。
――俺が強ければいい。
今は、それでいい。
自分が前に立ち、 自分が斬り、 自分が守る。
そうするしか、 知らない。
だが、 眠るレオンの寝顔を見ていると、 ほんの一瞬だけ、 考えてしまう。
いつか。
この少年が、 誰かを守る側に立つ日が来たら。
そのとき、 守るのは、 一人でなくてもいいのかもしれない、と。
その考えを、 ガルドはすぐに打ち消した。
まだ早い。
今は、 俺が前に立つ。
それでいい。
焚き火の火が、 小さく揺れる。
ガルドは剣を握り直し、 静かに目を閉じた。




