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剣は名を持たない誓いを抱く  作者: StoryTellingMusic


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6.対等ではない共闘と、届かない背中

それから数日が過ぎた。


 町を出て、街道を北へ。  林道はやがて岩場へ変わり、地面は固く、空気は乾いていった。


 朝と夜の寒暖差が増し、  焚き火の火は以前よりも強く焚かなければならなくなった。


 時間が流れている。


 その感覚だけは、確かにあった。


 道中、小規模な戦闘が何度かあった。


 レオンは役割を与えられ、  前に出ず、間合いを保ち、  時間を作る。


 それは機能していた。


 ガルドは、約束されたように背後から戦場を断ち切る。


 連携は成立していた。


 だが――


 ある日、岩場の谷間で、  それまでとは質の違う気配に遭遇した。


 重い足音。  低く響く唸り。


 現れたのは、  鎧のような外殻を持つ大型の魔物だった。


 「……来るぞ」


 ガルドが、初めて短く注意を促す。


 レオンの喉が鳴った。


 ――今までとは違う。


 魔物が踏み込む。


 地面が揺れ、  風圧が走る。


 レオンは、反射的に動いた。


 役割を思い出す。


 前に出ない。


 距離を保つ。


 剣を振り、  注意を引く。


 魔物の視線が、こちらに向く。


 ――来た。


 レオンは下がる。


 だが、  魔物の一歩は大きかった。


 間合いが、  一気に詰まる。


 判断が、遅れた。


 衝撃。


 地面に叩きつけられる。


 視界が揺れ、  息が詰まる。


 次の瞬間、  影が覆いかぶさった。


 ――終わる。


 そう思ったとき、  轟音が谷に響いた。


 ガルドだった。


 大剣が振るわれ、  魔物の動きが止まる。


 その一撃は、  今まで見たことのない重さだった。


 踏み込み。


 体重。


 殺意。


 すべてが一つに束ねられた斬撃。


 魔物は吠える間もなく、  岩壁に叩きつけられた。


 戦いは、  一瞬で終わった。


 谷に、静寂が戻る。


 レオンは、  しばらく動けなかった。


 ――違う。


 自分が見てきたガルドは、  まだ本気ではなかった。


 あの背中は、  まだ遠い。


 立ち上がろうとして、  足が震える。


 「無理すんな」


 ガルドの声が落ちてくる。


 それだけだった。


 責めるでもなく、  慰めるでもない。


 ただの事実として。


 その夜。


 岩陰で焚き火を起こし、  二人は並んで座っていた。


 炎が揺れ、  影が岩肌に踊る。


 レオンは、  今日の戦いを反芻していた。


 自分の判断。


 遅れ。


 そして、  ガルドの一撃。


 同じ戦場に立っていたはずなのに、  見ていた景色は、  まるで違っていた。


 「……まだ、遠いですね」


 思わず、零れた言葉。


 ガルドは、しばらく黙っていたが、  やがて短く答えた。


 「ああ」


 否定も、否認もない。


 ただの事実。


 だが、  その言葉は、  レオンを折らなかった。


 遠い。


 だから、  進む意味がある。


 焚き火を見つめながら、  レオンはそう思った。


 選べる幅は、  確かに増えた。


 だが、  世界はまだ、  それを許してくれるほど優しくない。


 それでも。


 この背中を、  見失わずにいれば。


 いつか。


 そう思える夜だった。

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