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キャンパー×キャンパー


 After


 キャンプ場のサイトで。

「久々のキャンプが晴れて良かったな~」

「本当にねぇ」

 テントの設営をしながら、何とはなしにお隣の話し声に耳を傾ける。今日のお隣さんは、おばあちゃん二人だ。私たちが挨拶したときには、もうテントも設営し終え、焚火もばっちり、椅子に座ってまったりモードだった。大ベテランって感じ、と茉奈花が楽しそうに笑っていた。

「やーっぱり、焚火にはココアが一番だよ」

「ここ数年は、ずっと近場でチェアリングばっかりだったもんね」

「やあ、死ぬ前にもう一度キャンプが出来て良かった……」

「大袈裟……でもないなあ。うちらの歳だと」

「そうそう。あのお餅事件みたいなことが起こったら一発アウトだ」

「ああ、あれねぇ……スモア事件と二大オモロよねぇ。確かあれって……」

 おばあちゃん達の思い出話に、私たちは設営する手をおろそかについ聞き入ってしまった。お餅がそんな面白いことになるなんて……。スモアでそんな感動が!

 人生って面白い、と茉奈花もしみじみ呟いた。全部盗み聞きだけど。

「いかん……思い出話してたら、無性に餅とスモアが食べたくなって来た……」

「餅はダメよ、餅は……。でもスモアなら、まだ行けるかなぁ」

 クッキーとチョコレートはあるんだけどね。抜かったね。と話すおばあちゃん二人に、私と茉奈花は顔を見合わせ、それから立ち上がる。

「あの……」

 手に菓子を携え、声をかけた。

「買い過ぎちゃったんで、良かったらマシュマロ、要りませんか!?」

 素敵なお話を(勝手に)聞かせて貰ったお礼である。


 Before


 朝。目を覚ますと、テントの外から声がした。

「これから、どんどんキャンプしていかないとなー!」

「そうだねぇ」

 先に起きたらしい榛名と赤城の声だ。焚火の音もする。私と同じテントで眠っていた心海も目を覚ました。ぼーっとした顔で外の声を聞いている。

「今回みたいなグルキャンはもちろん、お前と二人キャンプとか!」

「二人キャンプも悪くないね」

「だろー? 何したい? したいこと、ぜーんぶやってこうぜ!」

 何十年かかってもいいから、全部一緒にさ。

 なんてはしゃぐ榛名に、私は思った。

「何それ。プロポーズみたい」

 そう、それ。心海も思ったらしい。うん、と頷いている。

「……そうだって言ったら?」

 !

「え!」

 赤城が、声を詰まらせた。私と心海は顔を見合わせ、息を殺す。

 どれくらい時が経っただろう。いや、一分も経っていなかったかも。

「…………嬉しいって言う」

 ぼそっと答えた赤城の言葉に、榛名が喜びの雄たけびを上げ、私と心海も思わず互いに抱き着いた。

 もうすぐ冬が来るのに、ここだけ何と春が来た。


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