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第三章 選ぶ力
エミは、最後の部屋にたどり着く。
そこには、ひとつの「止まった時間」があった。
それは父が亡くなった日の記憶。そして、エミが感情を閉ざした瞬間だった。
「痛いなら、見なくていい」とユウは言った。
だが、エミは震えながらも目を開いた。
父が手を伸ばし、最後に口を動かした。「泣いていいんだよ」と。
その瞬間、エミの目から涙がこぼれた。
痛みが、悲しみが、愛しさが胸にあふれ、彼女の周囲の空間が光に包まれた。
5次元は静かに閉じた。
エミは現実世界に戻った――だが、何かが変わっていた。
誰かの悲しみに気づけるようになった。
小さな優しさが未来を変えることを知った。
そして、彼女自身が「未来を選べる力を持っている」と信じられるようになった。