第一話 無愛想な音
追い出された。
俺は家を追い出された。
あいつは鬼か何かか?人の心とか……あるわけねぇか人間じゃねぇし。
だとしても孤児を拾って育てておいて、やっぱ出ていけは終わってる。
……綺麗で広い。
各家電が設置された真新しい部屋を見渡してため息を吐く。
海上都市ギャラリー
数十年前に太平洋のど真ん中に突如建設された魔導都市。
遺産に分類される魔術を利用したと噂される不気味な都市。いや、景観は素晴らしいし利便性の面でも世界最先端だが……
俺はここへ島流しにされた。
「復讐するんだろ?ちょうどいい――行け」
あの白髪ロリめ――
「っ!?」
身体が跳ねた。悪態を吐く寸前、まるで見計らったようにポケットが震えた。
おずおずと取り出した液晶画面には奴の名が。
「……もしもし」
「まだ拗ねてるのか」
呼応するかの如く、あちらからも不機嫌な声が聞こえる。
声が反響している。
「先週買い直したばっかだろ」
「だまれっ」
耳を突き刺され咄嗟に顔を離す。
「……着いたのか?」
しばらくの沈黙を破って溢れてきた声は、普段より少しだけ元気が無い気がした。
自分でもよく分からない感情だ。湯船から上半身を乗り出し、風呂場に持ち込んだスマホの端を意味もなくなぞる。
「問題なく着いた。用がないなら切るぞ?……冷蔵庫にご飯あるからちゃんと食べろよ」
「え、ちょっ――」
通話口から無愛想な音が繰り返される。
「〜〜っもう!」
あ。
明日、スマホ買い替えに行こ……
ありがとうございました。