six feet under1
お読みいただきありがとうございます。
本編終了後にポツポツと番外編を書き連ねておりましたが、当エピソード4〜5話をもちまして一旦完結とさせていただく予定です。詳しくは後書きにて。
元海賊でアレックスの名付け親でもあるマーティンが亡くなった。
身体が弱り船を降りたマーティンにアレックスは屋敷での同居を提案したが、マーティンはそれを断ると、今までの蓄えを使い隠し港のそばの河岸に小さなしかし居心地のいい小屋を建てて、居を構えた。
毎日のんびりと釣りをし、釣った魚を料理して食べ、夜はフクロウの声の聞こえるテラスに置いたロッキングチェアに座って、気に入りの酒と煙草を楽しみながら星空を眺めて寛ぐ。
アレックスの不安をよそに悠々自適の隠居生活を送っていたマーティンだったが、寄る年波には勝てず、緩やかに眠るようにその命のともしびを消したのが昨晩のことだ。
隠し港にほど近い、海亀島で最も景色のいい丘陵の上でアレックスはひたすらに黙々と土を掘った。
早朝でも蒸し暑い空気の中で汗が吹き出し、飛び散った土が肌にざらりとまとわりつく。
2フィートも掘らないうちに重いシャベルを持ち上げる腕が重くむくんで革手袋の下の皮膚が擦れ、痛みを伴って水を含む。
顔を歪めて地面にシャベルを突き刺し、土をすくって、その重さによろけながら持ち上げようとしたところで、力強い腕がアレックスを止めた。
「ここからは俺がやる。一回休め」
「いや……でも、自分でやりたいんだ」
「俺はあなたの剣で盾なんだから、俺が掘るのはあなたが掘るのと同じだ。適材適所という言葉は当然知っているよな。アレックス。無理をするな」
唇を引き結び、頑なに強くシャベルの持ち手を握りしめたアレックスの指をケインは一本づつ剥がしてシャベルを奪い取った。
「ケイン!!」
「このペースだと葬式が来週になるぞ」
ケインはアレックスが掘った以上をあっという間に掘り広げ、棺桶の入る広さまで広げると、穴の上をさし示した。
「そこに敷布を引いておいたから座って。そうだな、無聊ならば俺が墓掘りをする間、そこでマーティンとあなたの想い出を話してくれないか? 俺はマーティンの息子という体になってるのに、二人とも遠慮して過去のことをなにも話さなかったから、俺はあの人とあなたの過去のことをほとんど知らない。あの人とのことを教えてくれ」
追い立てられるように浅い穴を出て、敷布の上に座って水を飲む。
そしてアレックスは膝を抱えて重い口を開いた。
「ナザロフに捕えられた俺は奴隷島の市場で売られ、ラトゥーチェ・フロレンスの主人に性奴として買われた。そしてウィステリアと花の名前をつけられて商品として働き始めた。その頃のマーティンはこの辺りを根城にする大海賊。店にとってもっとも高い金払いのいい客の一人で、俺が売られた時がその権勢の絶頂期だった」
長きに渡り、お読みいただきありがとうございます。
毎回のエピソード応援、感想、高評価等本当に感謝しております。皆様の応援のおかげでここまでやってこれました。
さて、完結の理由ですが、こちらと並行して掲載しているカクヨムさんの第一回ルビーファンタジーBL大賞に記念応募をしておりまして、それの応募要項が30万字以下、完結済が条件でこのエピソード以前に27万字あるこの作品は物理的に〆るしかなくなったという身も蓋もない理由です。
マーティンの事はNTR王子の方で触れるかどうするかずーっと悩んでいたのですが、ここで二人の関係も含めてオープンにしようと決めてこの形になりました。
それと老後の彼は海賊といえばのアレのオマージュです。100巻越えの漫画じゃない方のアレです。あえて被せて書いているので遊び心と思っていただければ。
さておき、あと4話(長さによっては5話)完結までお付き合いいただければ幸いに存じます。今のところ毎日更新の予定です。(エピローグだけ今入れるか悩み中で書き終わってはいます)
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