キャットコール
ナザロフ視点回。
ナザロフ達が総督府の襲撃を起こしてから3週間後、リベルタ総督ヴァンサン=ガイヤールは裁判を開き、海賊達に絞首刑を宣告した。
そこまでは通常通りの量刑だが、定期船を沈め総督府を襲った彼らには特に海岸にある処刑場までの石打ちの許可を出した。
また、首領のナザロフは処刑後にタールを塗ってメルシアに送られ、リベルタへの玄関口にあたるハンバー港に流れ込むハンバー河の河口に晒すと定められた。
そして、処刑の前日、最も重い罪を犯した者が入る地下のナザロフの独房に、司祭の服を着たアレックスがやってきた。
「どこかで見た顔の司祭サマじゃねぇか」
「神聖皇国相手にも散々暴虐を尽くしたそうだな。近頃こちらに拠点を移した神殿騎士が最期の悔悛を認めないと仰られて、お前達の懺悔のやり手がいない。だが懺悔は死にゆく者の権利だからな。俺が代理司祭として改悛の祈りを聴きにきた」
祈祷書を開き、フォルトル神を讃える聖句を神聖皇国語で捧げて、牢の前に用意された背もたれのない丸椅子に腰掛けた。
「さて、何か懺悔することはあるか。あって欲しいが」
「ねえな。ああ、いや、そうだな。後悔していることがあるんだ……」
殊勝に声を落としたナザロフに膝の上の祈祷書に視線を落したアレックスは頷いて続きを促した。
「こんな事になるんなら、なんとしても、目の前にいるエロい司祭を組み伏せて裸にひん剥いて、柔らかな肌を全身くまなく舐め回した後に、×××をケツの穴にぶち込んで、あの時みてぇに胎の奥まで責め立ててよがり狂わせて腹がパンパンになるまで子種を注いで犯して、嬲りつくしておけば良かったってな」
ナザロフは欲望を下卑た言葉で叩きつけると、腕を伸ばしてアレックスの手首を掴む。
祈祷書が床に落ち、スツールが倒れた。
「お前だって、実のところ、最後に俺のデカいのを楽しみに来たんだろ?」
「そんなわけあるか」
青ざめた顔で静かに首を振るアレックスを、ナザロフはさらに引き寄せた。
「檻に入れたから安全だとでも? 甘ぇな。お前はいつまで経っても美味しい獲物で、俺は狩る側だ」
檻に肩が密着するまで引っ張って、詰襟の襟元を掴み直す。
「脱げ。檻越しにケツを差し出せ。最期の慰めなんだろ? 俺の体を慰めてくれよ。ああ、片腕しかないのが残念だな。お前を捕まえていると、ケツも弄れない」
そう嘲笑った瞬間、ナザロフの腕をアレックスは両腕で掴んで、ねじり上げた。
「っつ!!」
ナザロフの手から離れたアレックスは青白い顔のまま、笑った。この上なく冷たく、高圧的に。
「今のお前は俺に卑猥な言葉をかけて、胸ぐらを掴む事しかできないとわかった。ついでにお前との相手は金を積まれても二度とゴメンだ。下手くそだからな。さて、義務は果たした。明日までの命、せいぜい惜しむんだな」
拾い上げた祈祷書で軽く肩を叩きながら檻の先にある鉄の扉を開けて出ていく。ナザロフは足を痛めるのも構わず、鉄格子を蹴り付けた。
ここで1週間お待たせしたくないので、次の更新は明日の予定です。




