牡蠣は男の栄養です
男たちは生牡蠣をレモンがけにしてちゅるっと腹に詰め込むと、そのまま夕方の町へと繰り出して行った。
「どこ行くの? 僕も行きたい」
「ははははは! まだお子様には早いとこだぜ!」
青銀の髪を次々わしゃわしゃ掻き回されて、お留守番となったルシウスだった。
ルシウスは置いてきぼりを食らった!
ノーダメージ!
オッサンお兄さんたちの代わりにお姉さんたちが相手してくれることになった!
こっちのほうがいいな! いい匂いするし!
速攻でルシウスは頭を切り替えた。
「牡蠣ってのはな、海のミルクと言って、アッチに効く薬だって言われてんのさ」
「アッチってどっち?」
「男の下半身の機能」
「あ、そっち?」
男たちが食い散らかして山となった牡蠣の殻を片付けながら、料理人のオヤジさんが教えてくれた。
お子様なりにルシウスにも話は通じたようだ。
「まあ今晩中には帰ってくるでしょうけど。お姉さんのたくさんいるお店に行ったんでしょうねえ」
とは、魔女っぽい黒の先折れ帽子に、黒く長いローブ姿の魔法使いの言だ。
鮮やかな純金のような金髪を緩く巻いてポニーテールにし、水色の瞳を持つ彼女の名前はハスミン。
愛らしい少女のような印象の可憐な美女だ。見た感じ、年は二十代の前半頃。
今、この冒険者ギルド・ココ村支部に常駐してお魚さんモンスターに対処してくれている冒険者のひとりだ。
彼女の宿は男たちが向かった町のほうにあるのだが、日中はだいたいギルドのほうに詰めてくれている。
「んもう! ギルマスたちまで行っちゃったし! いくらここが僻地ギルドで仕事が少ないからって、書類仕事はそれなりにあるんですからね!」
受付嬢のクレアがプンスコしている。
サブマスターまで引き摺って連れていってしまったので、事務室はもう誰もいない。
ここココ村支部はギルドマスター、サブマスター、受付嬢の三人で主に実務を回しているのだ。
責任者のギルドマスターが不在で、既に魔物も討伐して落ち着いた後なので、彼女も仕事を切り上げて食堂でまったりしていた。
というわけで、食堂で牡蠣祭りである。