お魚さん討伐、終了!
そこからはルシウス少年の独壇場だった。
軽い体重を生かして砂の上を俊敏に走り回り、お魚さんたちを身体強化した拳でぶん殴って回る。
そのまま自分が倒せそうなら、剣で急所の心臓をぶっ刺して魔石に変えていく。
冒険者たちに後を任せて良さそうなら、そのまま次のお魚さんへ。
海岸の強い日差しの下、青銀の髪が陽の光を反射してキラキラ輝いているのが何とも、可愛らしい容貌と相まって麗しい少年である。
そうして、何十匹といたすべてのお魚さんタイプの魔物を倒すまで、一時間とかからなかった。
「お、おいおい、ギルドマスター。何なんだあの坊主……」
嬉々として魔石を拾い集めているルシウスを、呆気に取られた冒険者たちが見つめていた。
「アケロニア王国の王女様お墨付きの助っ人だ。まだガキだけど、さすがに強いな、魔法剣士……」
しみじみ、髭面ギルドマスターが呟いた。
魔法剣士とは、魔力で生み出した魔法剣で戦う剣士のことで、魔法使いの亜種とされている。
この世界では、魔力使いは『魔法使い』と『魔術師』の二種類がいる。
魔法使いのほうが持っている魔力量が多く、多彩な術を使う。
魔術師は、魔法の下位互換である魔術の使い手だ。
とはいえ、魔術は魔力さえあれば誰でも使えるように必要魔力をセーブして術式を使いやすく構築したものなので、魔法使いでも魔術を使う者は多かった。
「ああー!? お魚さん、みんな魔石になっちゃったじゃん!? デビルズサーモンは!? 今晩は絶対にサーモン料理食べたかったのに!」
ルシウスが今さら気づいたように悲痛な叫びをあげていた。
「魚が食いたかったのか? 魔物の肉を残したい場合は心臓じゃないとこにトドメ刺さねえとダメなんだよ」
例えば、先ほどのルシウスのように、頭部をぶん殴ったときそのまま息の根を止めれば良いわけだ。
ふんふん、と髭面ギルドマスターの話を聞いたはいいものの、結局すべて心臓を刺して倒してしまった今回はお魚料理は無理そうだ。
ルシウスは残念そうな顔になって両肩を落とすのだった。
冒険者となって最初の戦闘は、こうして反省を残しつつも幕を閉じたのであった。