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家出少年ルシウスNEXT  作者: 真義あさひ
ルシウス君、称号ゲット!からのおうちに帰るまで
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天空ゼリーとカレーパン

 皆でお腹いっぱい満足するまでカレーを食べ終えたところで、オヤジさんが厨房からデザートを持ってきてくれた。


 皆の前でオヤジさんはバットの上にパウンドケーキ型を引っ繰り返した。

 現れたのは、真っ青なグラデーションの美しい細長のゼリーケーキだった。


 青いだけでなく、表面に金箔や銀箔を散らしていて、キラキラと光を反射している。


「おや、この色って」


 目敏く魔術師のフリーダヤが気づいた。


「僕の魔力の色だあ……」


 一人分数センチ幅で切り分けて、立てた形で取り皿へ。

 断面図を見ると、上から濃い青色で、下に向かって淡い水色のグラデーションになっている。

 淡い色合いのところに光が差し込んで、濃い青色との境目がネオンブルーに発色するよう工夫されていた。


「昼間、あの男から坊主が庇ってくれただろ? 格好良かったねえ〜。この年で胸がキュンとしちまったよ」


 塩をかけられそうになったところを、ルシウスがオヤジさんを背に庇っていた。


「えへへ。格好良かっただなんて。ちょっと恥ずかしい」

「いやいや、最高に格好良いヒーローだったよ。あのとき坊主から出てた青い魔力に見惚れちまってね。シロップで再現してみたら、案外良い感じだろ?」


 硬めにゼラチンで固めたゼリーはぷるぷるだ。

 食べると爽やかなレモン味。


「リコさんが言ってたアロエの果汁も入れてあるんだ。身体の熱が取れるよ」

「蒼穹のような天空ゼリーね。素敵なデザートだわ」


 アロエ入りでちょっぴりほろ苦いネオンブルーのゼリーは、大人の味がした。




 翌日、午前中はルシウスが故郷に送る用のカレーを料理人のオヤジさんに2種類作ってもらった。

 シーフードカレーとビーフカレーだ。


「坊主の故郷も食べてる米の種類は同じなんだろ? ライスは現地で炊けるようにレシピを付けておくよ」


 とのことで、レシピカードにオヤジさんが数種類、カレーライス用に美味しいライスのレシピを書いてくれた。


 ひとつは昨日の夕飯にも出たクミン入りのレモンライス。

 ふたつめは、ナッツとレーズン入りのバターライス。

 みっつめは、夏が旬のとうもろこし入りの炊き込みご飯だ。

 もちろん、普通に鍋や炊飯器で白飯を炊くだけでもじゅうぶん美味しくいただける。


「どれも美味しそう〜!」


 聞いているだけで涎が出そうになる。




「オヤジさん、捏ねてる生地は何になるのー?」


 カレー2種類を煮込んでいる間、オヤジさんはボウルで大量の小麦粉の生地を練っていた。

 イーストの匂いがするからパン生地だ。


「こっちは昼飯用だね。昨日、カレーを少し取り分けておいたのを使って揚げパンを作ろうと思って」

「あげぱん」


 カレー入りの。

 確かに昨晩食べたカレーは美味しかったが、揚げパンとなるとどうなるのだろう?


 出来上がったカレーを5人前ずつ、ルシウスが成形しておいた魔法樹脂の保存容器に注いで、熱々で冷めないうちにさっと継ぎ目なく蓋をして封入。

 週に一、二度の高価な飛竜便を無駄にしないよう、配送用コンテナに詰められるだけ詰めて毎回送るようにしていた。




 カレーを詰め終わり、封入し終わった保存容器を邪魔にならないよう食堂の端にまとめると、時刻は昼前の11時頃。


 厨房を覗くとオヤジさんが、丸く伸ばした生地に冷蔵庫で固めてあったカレーをのっけて包み込んでいた。


「わあ。カレーって冷やすとそうやって固まるの?」

「これは魚の煮凝りを混ぜて冷やしたやつさ。カレーパンにするにはこれが良い」


 煮凝りを混ぜて冷やして固めておくと、パン生地で包みやすいのだそうだ。

 煮凝りがなければコラーゲンたっぷりの手羽先や手羽元を煮込んでできたゼリーでも良い。


 ルシウスが手伝いを申し出ると、慣れないと中身をきちんと包めないそうなので、今回は見学のみ。


「本当なら二日続けて同じようなメニューは避けたいんだけどね。カレー系は皆、大好きだから」


 カレーを包み終わった生地は一度、冷蔵庫で休ませておく。


 あとはランチ用のサラダやドリンク類、肉や魚などのソテーの準備だ。




 そしてランチタイム。


 パン粉を付けてこんがり揚げられたカレーパンは、ルシウスに更なる感動を教えてくれた。


「シーフードカレーパン。おいしい。すごくおいしい!」


 カリッと揚げたての表面に、ふわっと柔らかな生地。

 ちょっと辛口のシーフードカレーのコクがすごく合う!


「やめられないとまらない」


 もっと味わって食べたいのに、オヤジさんがこれでもかと大量に揚げてくれてくれるものだから、止まらなかった。


「!!!」


 3つめのカレーパンに齧りついたとき、異変に気づいた。


「は、半熟茹で卵入り!!!」


 こんな隠し玉が!


 濃厚なカレーに絡む、とろっと半熟の黄身。堪らなかった。

 しかもオヤジさんがよく作ってくれる味玉だ!


「カレーパンすき。だいすき」

「大好き頂いちゃったねえ」


 ニコニコしながらオヤジさんがまた追加で一個、取り皿に載せてくれた。


「オヤジさん、僕これもおうちに送りたいです! あと作り方も覚えたいな!」


 これは絶対に覚えて、おうちに帰ったときにパパやお兄ちゃんにも作ってあげたいやつだ。


「そろそろ、おうちに帰れると思うし。覚えられるだけオヤジさんの料理覚えたいな」

「いいねえ、坊主も調理スキル持ちだもんね。良かったら俺のレシピ帳を写して持っていくといい」

「!? いいの!??」


 料理人にとっての魂のようなものなのに。


「俺の故郷の料理が大半なんだ。良かったら坊主のお国でも広めてくれたら嬉しいね」

「わかった! きっと皆も大好きなごはんだと思うよ!」



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