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家出少年ルシウスNEXT  作者: 真義あさひ
ルシウス君、称号ゲット!からのおうちに帰るまで
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海中捜査行きます!

 その日の早朝、日課の海岸への散歩に行こうとしたルシウスは、麦わら帽子を被った魔術師のフリーダヤから声をかけられた。


「君のお兄さんからの海の魔物の分析レポートを読んだよ。もしかしたら魔物に人間の脚を生やす仕掛けは海の中かもしれない。確認してこよう」


 と口では言っていたが、釣り竿とクーラーボックスを抱えているところを見るに、釣りのほうがメインっぽい。


 釣りならルシウスも好きだ。

 おうちでは、領地に戻るときはよく、近くの川でパパと競争したものである。


 そして、大好きなお兄ちゃんの話題を出されるとルシウスに否やは言えない。


「じゃあこれね」


 フリーダヤが前日のうちに料理人のオヤジさんに頼んでおいたという軽食のバスケットを持たされ、ボートで沖合へ出ることになった。




 ボートは冒険者ギルドの備品で、3人乗りの屋根なしの小さな物だ。

 魔導具の推進装置が付いていて、魔力を流すと海の上を進んだり止まったり自在にできる。


「わあ、この辺の海域って透明度高いね!」


 ボートから身を乗り出すと、晴れていることもあって海底まで薄っすら見える。

 海の中には様々な生き物が泳いでいるのが見えた。


「いつも海岸まで押し寄せてくる巨大化した魔物はまだいないね」


 そのまま対岸にあるカーナ王国との国境線付近まで海上を進み、後は沖合を左右に大きく動いて海上から海の様子を確認してみた。

 特に異常はない。


 数十ヶ所、ポイントを決めて、ゆっくりと同じ場所を繰り返し巡っては確認していく。


 途中でバスケットの中身の軽食、サンドイッチと、水筒に入ったよく冷えたアイスティーで朝食を取った。

 まだ8月、夏真っ盛り。ちょっとだけ甘いレモン入りのアイスティーはめちゃくちゃ美味かった。




「僕たち海に来ちゃったけど、お魚さんモンスターが来たら海岸のほう大丈夫かな?」

「ギルマスのカラドン君がいるし、いざとなればロータスがいるから大丈夫。それより、予想通り海の中に魔物発生の仕掛けがあった場合、私たちに襲いかかって来るようなら君頼りだからね。頼むよ」

「オッケーです!」


 著名な魔術師とはいえ、このフリーダヤという男は戦闘力はさほどない。

 どちらかといえば、バフなどの支援型だ。


 対する聖女ロータスは、聖女というだけあって回復や治癒能力に優れる。

 もっとも彼女の場合は、先日見たように戦闘も大得意のようだったが。




「海の上からだとよくわからないですね。ちょっと潜って見てくる」


 サンドイッチをもぐもぐ食べ終わり、アイスティーでひと息ついてからルシウスはビーチサンダルを脱いで、ボートの上に立ち上がった。


「君、どのくらい泳げるの?」

「故郷じゃ深い河川でもガンガン泳いでましたよー」

「ふむ、一応潜水魔術をかけておこうか。あと命綱も付けてね」


 防水と呼吸の維持を行う潜水魔術を受け、ついでに腰回りに縄を巻かれて、服を着たままドボンと海中に沈んだ。




 いつもお魚さんモンスターが出現するのは、沖合の視認できるギリギリの水平線あたりだ。

 今回、フリーダヤとボートでやってきたのもそのあたり。


 ひとまず、ルシウスはそのままボートの真下に沈んでいくことにした。


 水に沈むも、ルシウス自身はまったく濡れていないし、息もできる。

 ただし海水の中を進むわけだから、さすがに地上と同じように無抵抗とまではいかなかった。


 水深は20メートルもない。

 海底に足がつくと、その辺りにいたお魚さんや海老など甲殻類などが素早く逃げていく。


 ゆらゆらと海面から降り注ぐ陽光が光のカーテンのように揺らめいている。

 海底から水面を見上げると、水面がキラキラ輝いている。

 なかなか神秘的な光景だった。


「魔物を発生させているか、脚を生やすような装置かあ。そんなのあるのかな?」


 ないとは言いきれない。

 魔術ならともかく、上位の魔力の使い手、“魔法使い”にはある意味、何でも有りだからだ。


 例えばルシウスだって、おうちのお家芸の魔法樹脂は何でも自在な形を作れるし、属性の付与も自分の使えるスキルの範囲内でやりたい放題。

 現に今も、ギルドの建物内に氷結魔法を付与した魔法樹脂の柱をそこかしこに立てて、涼を取れるよう仕掛けを作ってある。

 同じことを魔導具で実現しようとすると、魔石の調達から機械の構造からものすごく手間と費用がかかるものだ。




 結論からいえば、怪しいものはすぐに見つかった。

 100メートルほどの幅でほぼ等間隔に、良くない魔力を発生させているココナッツ大の黒い魔石が海底に置かれていたのだ。


「うわーヤな感じー」


 ちょいっと指先で突っつくと鋭い痛みが走る。

 ならばと、とりあえず一個だけ魔法樹脂で全体を包み込んで持ち上げてみると、結構重い。

 かなり重量があるため、波に浚われることもなく砂に沈んで同じ位置に留まり続けているのだろう。


 材質はガラス質、色は黒。

 表面に、ルシウスにはよくわからない術式が細かく刻み込まれている。


 同じものが横一列、等間隔に海底に置かれている。


 現状、十数個あるこの黒い魔石を一度に運ぶのはルシウスでは無理だ。


 ひとまず魔法樹脂に封入した魔石を抱えて、ボートまで戻ることにした。



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