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家出少年ルシウスNEXT  作者: 真義あさひ
ルシウス君、称号ゲット!からのおうちに帰るまで
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最強聖女のカニ退治

 超弩級の有名人、魔術師フリーダヤと聖女のロータスがココ村支部にやってきてからも、ルシウスの日々は変わらない。


 お魚さんモンスターを倒しながら、発生原因を探る。


 最近では、諸々の黒幕かもしれない飯マズ料理人の監視も任務に加わった。


 あの腰回りに出た(リンク)はその後消えてしまって、再び出そうとしても自力では出すことができなかった。


(別にこのまま出せなくなっても困らないし)


 そのたび、こちらもフリーダヤと一緒に冒険者ギルドの寮に宿泊し続けていた聖女ロータスが音もなく忍び寄ってきては、ルシウスの白い形の良い額を指先でトンと突くのだった。


 聖女ロータスから幾度となく聖者に覚醒するための洗礼を受けるも、そのたびにルシウスは己を襲う衝撃と衝動から逃げ続けた。




 そして、さすがに、800年級の魔力使いは強かった。

 主に聖女ロータスのほうが。


 いつものお魚さんモンスター、今回は海岸を埋め尽くさんばかりのカニさん、舞踏(ダンサーズ)クラブの群れを相手にして、その圧倒的な力を見せつけた。


 8月の真夏日、陽光燦々の真っ昼間に押し寄せてきた真っ赤なカニさんの群れ。


 魔術師のフリーダヤのほうは暑さで早々にダウンして、長い薄緑色の髪を後頭部で高く結い直し、長く白いローブも腕まくりしていた。



「来たぞー! 舞踏(ダンサーズ)クラブだ、今回は数が多い!」



「へえ。どれどれ?」


 ギルマスの執務室にいた一同は階下に降りた。

 とりあえず入った食堂から見える窓の外、海岸を見たフリーダヤがあまりの光景に吹きだしている。


「あ、脚!? 人間の脚生えてるんだけど何あれ!?」

「その反応、久々で新鮮だなー」


 す、とこちらはマイペースにココナッツウォーターで水分補給していた褐色の肌の美女、聖女ロータスが手早く中身を飲み干して、真っ先に外へと向かう。


 彼女はフリーダヤとは違って、いつも超然としてどこか涼しげな雰囲気を纏っている。

 背中まであるラベンダー色の髪も下ろしたままだし、暑さを感じさせない。


「ロータス、外は日差しが強いから帽子、被ろうか」

「ん」


 すかさずフリーダヤから渡されたつばの広い麦わら帽子を被り、日差し燦々と照りつけるココ村海岸に、盲目ながら危なげのない足取りでロータスが出る。


 ルシウスたち冒険者もその後に続いた。


 伝説級の聖女様のお手並み拝見である。




 その薄っすら濁った水色の瞳でロータスが海のほうを見つめている。


「随分と数が多いわね」


 トン、とサンダルを履いた爪先で軽く砂地を叩いた。

 すると聖女ロータスの足元に鮮やかなネオンピンクの魔力を纏わせた光る円環、(リンク)が出現する。

 大きさは直径1メートルほど。


 もう一回トン、と砂地を叩くと、ネオンピンクの(リンク)から波紋のように同じ色の魔力の波が何重にもロータスを中心にして広がっていった。


「わあ、良い香り」


 ロータスの魔力の波紋が通り過ぎていったルシウスたち冒険者は、彼女の聖なる芳香に包まれる。

 蓮の花の甘く神秘的な香りだ。


 魔力の波紋は、海の沖から海岸を目指して向かってきていたお魚さんモンスターたち、今回は主に舞踏(ダンサーズ)クラブの群れに直撃した。

 ロータスのネオンピンクの魔力でカニさんたちを捕捉。


「よし」


 またトン、とロータスが今度は足元の自分の(リンク)を爪先でやや強めに叩いた。



 ボンッ



 沖合でカニ中心のお魚さんモンスターたちは弾けてバラバラに解体された。

 一気に、まとめて、一匹たりとも漏らすことなく。

 殻の中の身まで吹き飛んで。


「ん? 魔石に変化したわね。回収しておくわよ」


 更にトン、とロータスが(リンク)を爪先で叩くと新たな波紋が発生し、お魚さんモンスターたちがいたところまで広がった。

 次の瞬間には一気に網のように収縮させて海岸まで魔石をまとめて回収し、目の前に積み上げた。


「えっ。こ、これで終わり!?」

舞踏(ダンサーズ)クラブ、カニカニダンスを踊る間もなく……!」

「さすが最強聖女……」


 ものの数分で終わってしまった。


「僕の聖剣の威力を上回る破壊力とか……」


 しかも武器も何も持ってない魔力だけでこの攻撃力、何と恐ろしい。


 その上、最初にルシウスが聖剣を使ったときのように遠隔で沖合の魔物を倒しているにも関わらず、バッチリ魔石まで回収の隙のなさ。


 ルシウスはもう面白くない。

 面白くないったら面白くない。


「いや、これは年の功だから。比べちゃダメだよー」

「そういうフォロー、イラッとくるんでやめてもらえます!?」


 呆然としていたら、魔術師のフリーダヤに肩をポンっと叩かれて宥められた。


 違う。今ルシウスが欲しいのはそういう言葉じゃない。


「だいたい、ロータスさん一人に戦わせておいて、フリーダヤさんは何もしてないじゃないですか」

「えっ。だって彼女一人で用足りたじゃない?」

「まあそうですけど……」




 あとは、巨大化しきれなかったと思しきミニクラブが、よちよちっと小さな脚で数十匹、海岸まで上がってきたので、人海戦術で一匹ずつ潰していった。


 こちらもルアーロブスターなどと同じで、ハサミを落としてしまえば普通のカニに戻った。

 魔石に変化しなかった分は今日のお夕飯行きとなる。




「よーし、今晩はカニ祭り!」



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