第98話 お姉ちゃんを元気にして欲しいの
少女は俺達の前で恥ずかしそうに言う。
「お、お姉さん。昨日の合同結婚式での花嫁さんですか? えーと、冒険者さんですよね?」
「うん、そうよ。お嬢ちゃんはどうしたのかな?」
「うんとね、私のお姉ちゃんが怪我して病気なの。だからね、このお金で元気になるように依頼したいの」
「お金は必要ないわよ。この教会にお姉さんを連れてくれば、治療してくれるから大丈夫よ」
「治すだけではダメなの。お姉ちゃんには元気になってほしいから依頼したいの」
元気になってほしい依頼ってなんだろう? 俺とルミアは考え込む。
よく見ると、少女の衣服は古くあまり身なりが良くない。
「もしかして、貴方のお姉さんは動くことができないのかな?」
「ううん、歩けるよ」
ますます少女の依頼内容が、わからなくなってきた。
「依頼ならば冒険者ギルドに相談してみたらどうかな?」
「うーん、私は、まだ子供だから冒険者ギルドには相談できないの……」
子供だから依頼ができない? そんなことは無いぞ。以前、俺が見た依頼の中には、獣人の子供からも依頼があったから、これは何か訳ありだ。
「お姉ちゃん達はダンカンお兄ちゃんの知り合いだから、お姉ちゃんを元気にできると思うの。だから、お願いします」
少女の両手の上には、銀貨二枚があった。
「このお金は、私がずっと貯めていたお金なの。本当は使いたくないけど、お姉ちゃんのためだから、これでお願いします」
少女は涙ながらに震える手で、お金を差し出す。
「大丈夫よ。全部、私達に任せなさい」
ルミアは、思わず少女を抱きしめる。
「お嬢ちゃん、依頼は受けたぞ。そのお金は、依頼が完了した時に報酬として受け取るからな。今は大事に持っていてくれよ」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん」
少女は、満面の笑みで答える。
「ところで、お嬢ちゃんのお名前は?」
「はい、私の名前は、カリンです。年は10歳です」
「私はルミアよ、それとこの人はノワールよ」
「うん、ルミアお姉ちゃんに、ノワールお兄ちゃんね」
俺達はカリンちゃんに案内され、一軒の古い大きな家に辿り着いた。
その家は獣人区の外れにあり、言わばスラム街のような場所にある。
以前は、貧困や職業不足等で犯罪率が高い場所ではあるが、ダンカンの農場により貧困や職業不足等が解消され犯罪率も下がり、徐々に住みやすい場所に代わって来ていると聞いている。
「お姉ちゃん、帰ってきたよ」
「カリン、お帰りなさい。今日も食堂のお手伝いは大丈夫だった」
部屋の奥から声が聞こえるが、弱々しい声である。
「うん。今日は休みだったので大丈夫。それと、今日は、お姉ちゃんが元気になってもらうために、冒険者さんを雇ったの」
「何ですって?」
俺達はカリンちゃんに案内され部屋の奥に行くと、ベッドに横たわっている女性に挨拶する。
「そのままで結構です。事情は、カリンちゃんから聞いていますから大丈夫です」
「冒険者のルミアです。それと、こっちはノワールです」
女性は、少し苦しそうに起き上がる。
「わざわざお越し下さいまして申し訳ございません。私は、この孤児院の院長しておりますカリンの姉でレイカと言います」
「レイカさん、私達にお気遣いは無用です。これから治療を始めますので、ベッドに横たわって楽にしていてくださいね」
「えっ でも、お代が……」
「大丈夫ですよ。治療費なら報酬としてカリンちゃんから頂くことになっていますから」
「でも、子供が言う報酬なんて、」
「レイカさん、大丈夫です。俺達を信じて任せてください」
「わ、わかりました」
俺は鑑定を使うと、レイカさんの症状は深刻であった。
栄養失調、貧血、土風病(血流不良、多臓器炎症)
栄養失調や貧血はわかるが、土風病とはどのような病気なのだろうか?
俺は龍気を使って、ペンダントからルミアへ念波を送る。
『ルミア、土風病って聞いたことがあるか?』
『ええ、私が住んでいた村でも土風病になる人がいたけど、初期状態であれば薬を飲めば完治できるわ。だけど、身体が菌に侵されて土色に変色となってしまうと、最悪手遅れになる病気よ』
『そうか、レイカさんは土風病にかかっている』
「レイカさん、ちょっと胸を見せてもらえるかしら」
「はい……」
「あなたは向こうを向いていて」
ルミアはレイカさんの肌の色を確認しているようだ。
『ノワール君、レイカさんの肌が土色に変色しているわ。すぐにでも治療が必要ね』
『そうか、それなら直ぐに治そう』
「レイカさん、これから治療を始めますので、楽にしていてくださいね」
レイカさんは、ルミアの言葉を聞くとゆっくりと深呼吸してから目を閉じる。
ルミアと俺は交互に魔法を放つ。
「魔法の極み マキシマムキュア」
「魔法の極み マキシマムヒール」
レイカさんの身体を優しい光が包み込み、徐々に身体に浸透しながら消えていく。
鑑定:栄養失調、貧血
よし、土風病は完治したぞ。
「レイカさん、調子はどうですか?」
「はい、まだ身体はだるいですが、嘘のように気分が優れています」
「それは良かったわ。貴方は土風病にかかっていたわ。この病気は初期の段階であれが怖い病気ではないけど、遅れれば大事に至るのよ。なぜ、治療に行かなかったの?」
レイカさんは、思い詰めたように話し始める。
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