第89話 屈辱
馬車の扉が開き、ロバート侯爵が立って皆に向かって言う。
「皆の者よ、楽にするが良い。今日は、友人達の合同結婚式のめでたい場だ。皆の者よ、私はひとりの友人として今日の合同結婚式に参列するので、本日は無礼講である」
流石はロバート侯爵である。今の一言で場が和み、参列者も落ち着きを取り戻す。
ロバート侯爵が馬車からおり、市民からお祝いの言葉を受けていると、もう一台の馬車と騎乗した騎士達がやって来て俺達の前に止まった。
「皆の者よ、控え!! こちらはレアランドの領主であるラムズ・サイド侯爵であるぞ」
参列者達に緊張が走り、ざわつき始める。
「領主様に続いてレアランドの領主様が来られるなんて凄いことになってきたぞ」
「この合同結婚式は、とんでもない結婚式になるぞ」
馬車の扉が開き、ラムズ侯爵が立って皆に向かって言う。
「皆の者よ、楽にするが良い。今日は、私の娘であるルミアと友人達の合同結婚式のめでたい場だ。皆の者よ、私はひとりの父親として今日の合同結婚式に参列するので、本日は無礼講である」
ラムズ侯爵はロバート伯爵と申し合わせた様な挨拶する。
そして馬車の手綱を握っていた人物が俺に話かける。
「兄さん、久しぶりです」
「おお、ロックか。元気にしていたか」
そう俺が言うと参列者の女性達が騒ぎ始める。
「今、ロックって言わなかった? きっと、アッサムザルクのロック様よ」
「キャ―― 見て、聖騎士のロック子爵様よ」
「私、握手してもらおうかしら」
まるで人気アイドルのように女性ファンが、押し寄せる。
「皆さん、落ち着いて下さい。今日は私も姉のアンナと兄のノワール、そして友人達を祝いたくて、ひとりの弟として参列します。どうか、お静かにお願いします」
ロックが女性ファンを落ち着かせていると、ラムズ侯爵はモンスに話し掛ける。
「確か、王都の晩餐会でお会いしましたモンス男爵ですな。本日は王都よりお出で下さいまして、誠にありがとうございます。ところで、どなたのお知り合いですか?」
ラムズ侯爵の問い掛けに、恐縮したモンスは縮こまりながらロイドを見て返事をする。
「ラムズ侯爵、ご丁寧にありがとうございます。私共はご友人でありますロイドとアンナの遠縁に辺り、この度参列させて頂きました」
「そうですか、では、ごゆっくりとされるが良いでしょう。私は娘の控え室に行きますので、後程会いましょう」
ラムズ侯爵がその場から立ち去ると、モンスとガンスの親子がひそひそと話をしながら揉め始める。
「ガンスよ、私はロイドとアンナの友人が、まさかロバート侯爵の友人やラムズ侯爵のご令嬢だとは聞いていないぞ。それに聖騎士ロック子爵と言えば、最近になって王都でも話題の騎士であるぞ。どうなっているのだ」
「父上、私だって聞いておりません」
「私はお前が受けた屈辱を晴らすためにこの合同結婚式に来たが、とんだ恥をかいたわ。このままでは王都での立場も危なくなる」
「父上、申し訳ございません」
「申し訳ないと思うなら、ロイドに謝罪して今からでも合同結婚式に参列させてもらうようにお願いをして来い」
「父上、待ってください。それでは私のプライドが」
「お前のプライドによって、カストロ家が危険にさらされておるのだ。お前のプライドなど気にしている時ではない」
そう父親から言われ、ガンスは泣く泣くロイドの所に行って許しを請うのである。
「ロイド、さっきはすまなかったな。どうやら俺はお前達に嫉妬していたようだ。この通りだ、許してくれ」
ガンスはロイドに向かって頭を下げる。
「俺の方も意地を張っていたようだ。昔、子供の頃に一緒に泥だらけになって遊んだ時の様に、これからは仲良くしようぜ」
「ありがとう。それにしてもロバート侯爵と友人とは驚いたぜ。ロイドも凄くなったな」
「まぁ、俺が凄いと言うか友人のお陰かな」
ロイドが俺の方を見るので、俺は素っ気ない振りをする。
ロイドとガンスが仲直りをしていると、俺達の近くにロバート侯爵より立派な馬車が到着する。
「おお、あの馬車は豪華だな。さっきは領主様だったが、今度は誰だ」
参列者達から驚きの言葉が上がる中、馬車の扉が開く。
「皆の者よ、静まれ!! こちらはグランディアの領主であるクリド・アクム公爵であるぞ」
「おおお」
「この合同結婚式は凄いぞ。ロバート侯爵やラムズ侯爵だけではなく、今度はクロド公爵まで参列されるぞ」
参列者から驚きの声が上がる中、馬車の中からクロド公爵が姿を現す。
「皆の者よ、楽にするが良い。今日は、私の直属の配下であるロイドとアンナとその友人達の合同結婚式のめでたい場だ。ロイドとアンナは幼き頃に両親を亡くしている。そこで、今日は私がロイドとアンナの両親に成り代わって合同結婚式に参列するが、本日は無礼講である」
そう言い残すとクロド公爵は、ロイドに挨拶をして来賓室に向かうのであった。
その様子を隣で見ていたガンスと、近くで見守っていたモンスは開いた口が塞がらない。
「おい、ロイド、どうなっている? お前がクロド公爵の直属の配下だって? 両親の代わり? もう、何が何だか分からなくなってきたぞ」
「ガンス、落ち着けよ。今は詳しく話せないけど、時が来たら話すよ」
「そうか、頼むよ」
そろそろ招待者が来賓室に続々と集まってきている。
俺達はこれから来賓者に向かって挨拶をしなければならない時間になる。
俺は皆に遅れて女性陣の支度部屋に向かうが、その時にガンスの独り言を聞く。
「くそっ!! 俺はプライドを捨て屈辱まで味わっているのに、なぜ、あいつらだけが良い思いをしているんだ。侯爵の友人やラムズ侯爵のご令嬢、それにクロド公爵の直属の配下だって、ふざけるな。何が子供の頃に戻って仲良くしようだ、この偽善者が。この屈辱は忘れない。絶対に、このままでは終わらせないぞ……」
そして、俺はガンスの身体から怪しい気配が漂い始めることを見る。
このまま無事に結婚式が終わるのか少し不安になってきたぞ。
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