第74話 裏切り
「ロイドさんですよね。流石に訓練前では気づきませんでしたが、訓練により首飾りからロイドさんの魔素が漏れていることがわかりました」
「本当か?」
カインがロックに詰め寄る。
「本当です。あの首飾りは魔石から追跡用の魔素が漏れていたのではなく、誰かが魔石を通して追跡用の魔素を散布していました」
「訓練の成果により、まさかバレるとは皮肉なものだな」
ロイドがあっさりと自分がやったことを認める。
「なぜだ、ロイド」
「カイン、すまない。俺とアンナは水の都グランディアの領主であるクリド公爵に取り入ったのだが、クリド公爵がどうしても訓練内容を知りたいと言われたので、部下が追跡出来るようにした」
「それだったら回りくどいことをせずに、直接お前がクリド公爵に説明すればよいだろう」
「それはできないわ。だって、陛下との約束で訓練内容を聞かない、訓練場所も秘密にしているから私達からは言えないの」
アンナがロイドを擁護する。
「確かにそうだが、なぜクリド公爵は、訓練内容を知りたがるのだ?」
「それは水の都に上級クラスの取得者がいないからだ。クリド公爵は訓練内容を知ることで、自分の部下達にも同じような訓練を行えば、宝玉の試練を乗り越える者が現れ、部下が上級クラスを取得できると考えているようだ」
「ふっ」
俺は思わず吹き出してしました。
「どうした、ノワール」
「ロイド、考えてみろよ。俺のオリジナルスキルで皆は、短期間に集中することで身に付けているが、オリジナルスキルが無ければ最低でも二十年以上はかかるぞ。それに、訓練を思い出してみろ。二十年間、毎日これを訓練する気力があるか?」
「確かにそうだな。俺は何を焦っていたのだろうか……」
「ごめんなさい。ロックさん、そして皆さん。勝手にクリド公爵に取り入って、皆を裏切るような真似をして……」
ロイドとアンナが皆に頭を下げる。
「そうだな、ちょっとくらいは相談してくれよ」
「カイン…… 俺とアンナのことを怒らないのか?」
「なぜ怒る必要がある? 俺達の白銀の翼は、もともと冒険者として名を上げてどこかの貴族に取り入り、安定した職業に就くことが目的だったろ。公爵家に取り入ることができて、やったじゃないか」
「そうよ」
カインとナシャがロイドとアンナを励ます。
「ノワールは、ロイドとアンナのことを知っていただろう?」
「ああ、知っていた。王都でクリド公爵や追尾者とあっていたことも、俺のスキルでわかっていたさ」
「流石だな。では、なぜロックの首飾りの時に言わなかった?」
「うーん、ことの真相がわからないので、様子を見ていた感じかな」
アンナが申し訳なさそうに俺に言う。
「ノワール君、ごめんなさい。貴方と陛下との約束を破るようなまねをしてしまって……」
ロイドとアンナが俺に頭を下げる。
「気にするな。あれは、訓練内容を聞かれた時に、説明するのが面倒くさいから言っただけだから」
「面倒くさい?」
「ああ、だって、闘気や魔素の細かいことを言っても陛下達は理解できないだろう。極みについては、どう説明したら良いのやら、思いつかないだろ」
「確かにそうですね。俺も陛下に聞かれても、うまく説明ができる自信がありません」
ロックが、そう言いきると皆も笑う。
「皆聞いてくれ。俺は渡り人だったからこの世界で生き残るためには強くなることが重要だと考え、皆にもそうなってほしいと思い、上級クラスや訓練に参加してもらった。しかし、俺は間違っていたよ。もっと、自由に生きてもいいんじゃないかって思うよ」
「ノワール君、そうよ。流石は私が愛した人だわ」
「そうだな、俺達はもっと自由に生きよう」
「ああ、そうだな。そして、この人生を満喫しよう」
俺達は、それぞれの思いを話しながら夜が更けるのであった。
翌朝、俺達は訓練を終えて女神と別れることになった。
「ノワール君。多分、直接私が干渉できるのはこれで最後だわ。でもね、女神像を通してなら会える可能性があるから、時々はお祈りしてね」
「わかったよ、フロリナート」
「あっ、やっと私を名前で呼んでくれたわね、嬉しいわ」
「ああ、もう残念女神ではなく、めぐり逢いの女神 フロリナートだからな」
「ありがとう」
「皆さん、ノワール君のことよろしくね。最後に私からプレゼントで、スキルのアイテムボックスとマッピングを授けましょう」
そう言い残すと、女神は俺達の前から姿を消すのであった。
「よし、皆最後の仕上げに、エベルス鉱山へ出発だ」
「おおお」
俺達は、駆け出し一気に結界の外に向かって走り出す。
『ゴ――ン』
「いててて、結界が解除されてないぞ」
俺達が痛がっていると女神が顔を出して、
「あっ、結界を解くことを忘れちゃった。ごめんなさい――」
「おい、やっぱり残念女神かよ」
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