第69話 新しい家族
鼻声で陛下が話を始める。
「ラムズ侯爵。予が認めよう、ここにいるルミアとロックは、其方の娘と息子であると。誰がなんと言おうとも予が認める」
陛下の暴走を制するように、ダイド公爵が話す。
「ラムズ侯爵。ルミアとロックは其方の娘と息子であることがわかったが、それを踏まえて、今後はどうするつもりだ」
「はい。私としては一緒に暮らせれば幸せでありますが、二人の意見を尊重したいと思います」
「お父様。私も一緒に暮らせればと思いますが、今は叶いません。私は冒険者であり、そして婚姻はしていませんが、ノワールの妻であります」
「そうであったか。ノワール君。いや、ノワール。娘のルミアのことを頼むぞ」
「はい、お義父さん」
俺とラムズ侯爵は、固い握手を交わす。
「私は父の遺言に従い、ラムズ侯爵の支えになるのであれば一緒に暮らしたいです」
「そうか、息子よ、ありがとう」
「ただ、まだ父上と呼ぶのは恥ずかしくて……」
「ははははは」
一同から笑い声が起きる。
「恐れながら陛下に申し上げます」
「ノワールよ、何事だ。申してみよ」
「はっ、報酬のことですが、ロックをラムズ侯爵の次期当主として推挙したく、子爵の爵位を授けては頂けませんでしょうか?」
「なぜ、推挙する?」
突然始まった俺と陛下とのやり取りを、皆が固唾を飲んで見守る。
「はい、俺はエベルス鉱山で聞いたロックの領民への思いや志に大変感銘しました。それに、既にロックは上級クラスである聖騎士を取得しており、推挙するには十分な理由かと存じます」
――ノワールめ。こう言う時は改めて言いおって、これでは断る理由がなかろう。
「よくわかった。ロックを我が前に跪け」
ロックはゆっくりと陛下の前に歩いていき跪く。
「バウド・デミグラードの名においてラムズ侯爵の次期当主ロックに子爵の爵位を授けよう」
「有難き幸せ」
ロックはラムズ侯爵のもとに戻り、ルミアと一緒に喜びを分かち合う。
「さて、ノワールよ。ラムズ侯爵の娘であるルミアと婚姻する其方はラムズ侯爵が義理の父上になる。まさかと思うが、自分が次期当主になりたくないので、ロックを推挙したようなことはないよな」
「そのようなことはないです。は、ははは」
笑って誤魔化す俺に、陛下はニヤリとして笑うのであった。
陛下との話が終わると、ラムズ侯爵はロバート侯爵の所に行き、固い握手を交わす。
「さて、ノワールよ。予は、ラムズ侯爵家の再建を支援出来たと思うが、これでは其方の報酬になっておらぬ。今までの報酬は、全てが自分のためと言うよりは、人のためではないか。正直に申してみよ」
「陛下の言われる通りであります。しかし、人のためしていることが、いずれは自分のためにもなります」
「相変わらず減らず口を叩きおって。良いから自分の望みを申せ」
「それでは各地の教会に、私が加護を受けております女神像を祀っては頂けないでしょうか?」
「女神像か。教会との関係もあるので、中央に祀ることはできないが側壁に他の女神達と一緒に祀ることはできるぞ。それでも良いか?」
「はい、それでお願いします」
「では、其方を加護している女神はどのような女神だ?」
「めぐり逢いの女神 フロリナートです。私は、この女神のお陰で色々な人にめぐり逢い、今ここにいるのです」
俺は、アイテムボックスから女神像を取り出す。
「見事な彫刻だ。実に美しい。よろしい、まずは、王宮内にある教会に祀ることにして、新たに製作する女神像を各地の教会に祀ることにする」
「はは、有難き幸せ」
もしかしたら、残念女神も中級主任女神から上級女神に昇格するかもしれないな。明日、設置された女神に祈りでも捧げてみるか。
「陛下。女神像が設置されるのはいつになりますでしょうか? 設置後祈りを捧げたいです」
「それでは急いで設置させよう。ダイド公爵、設置にどれくらいかかる?」
「今日中に設置はできますが、これから陛下と私は別件がありますので、本日は立ち会うことができません」
「そうか。では、ノワールよ。明日、また訪れるが良い」
俺達は陛下と別れ宿に戻ったが、ロバート侯爵、ラムズ侯爵、ロックは王宮内に留まって、これからのことについて話すそうだ。
「ノワール、今日のことは驚いたぞ。まさか、ルミアがラムズ侯爵の娘だったことは、気付いていなかったからな」
「ルミア、そうよ。私にも話してなかったわね」
「ロイド、すまなかったな」
「アンナ、ごめんなさいね。ラムズ侯爵のことは誰にも話せなかったの。でも、ノワール君なら何とかしてくれると思ったから話したわ」
「信頼しているのね」
「うん」
「それにしてもロックのことはよく気が付いたな」
「ああ、カイン。エベルス鉱山で訓練した時にロックのアザに気付いていたが、ルミアの話を聞いてルミアの弟だと確信したよ」
「そうだったのか。これでラムズ侯爵が治めるレアランド領も安泰だな」
「それがまだ安泰だと思っていないぞ。なぜなら、ジェネラルデーモンが最後に言った言葉を憶えているか?」
「ああ、外で待機している魔王軍に連絡すると言っていたな」
「そうだ。俺は魔王軍がそのまま撤退するとは思えない。俺達はもっと強くなる必要がある」
「もっと強くか……」
俺達はどうすればもっと強くなるのか話し合い、夜が更けていくのであった。
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