第66話 それぞれの思惑
「恐れながら陛下に申し上げます。陛下の目に適うなんてとんでもございません。俺は陛下が意図しているような男でなく、買い被り過ぎかと考えます」
「うむ。では、聞こう」
「一つ目の願いは、俺は自由で気ままに暮らして何事にも縛られたくないからです。二つ目の願いは、今回のように魔族を討伐することになった場合、巻き込まれたくないからです。だから、ゴッズさんが聖騎士に復活すれば、俺達は巻き込まれることはないと考えました」
陛下は俺の話を聞き入れると、おもむろに言う。
「自由で気ままに暮らして、何事にも縛られたくないとわ。羨ましいのぅ。其方の考えはわかった」
「ありがとうございます。それでは最後の願いです。それは上級クラスを取得するために宝玉の試練を受ける許可を頂きたいです」
「おおおおお」
「なんと! なぜ、そのことを知っている?」
上級貴族達や陛下が、驚きの声を上げる。
なぜ、試練のことを知っているのかと言うと、エベルス鉱山でロビンに上級クラスの取得について相談したら、宝玉のことを教えてくれたからだ。
王宮には数多の英雄や達人達の上級クラスを受け継いだ宝玉があり、宝玉に認められた者が上級クラスを受け継ぐことができると聞いていたからだ。
因みに試練の内容も聞いており、宝玉に手をかざすと宝玉がその者の実力を見極めて、上級クラスを授けるそうだ。
つまり、実力があれば上級クラスを取得でき、実力がなければ上級クラスを取得することはできない。
「ノワールよ。予は其方が着ている装備を知っているぞ。上級クラスの忍者だな」
「ご名答です」
またしても、上級貴族達は驚きの声を上げる。
「忍者は伝説のクラスだ。300年前からの言い伝えは本当であったか。しかし、上級クラスは一人にひとつしか取得できないことは知っているな。ノワールよ。なぜ、上級クラスを欲するのだ」
「俺は同時にクラスを使うことができます。俺のスキルが関係しますので、詳しくは話せませんが……」
「冒険者であればスキルのことを話せないのは当然だ。だが、若くして其方が強いことが、これで分かった気がするぞ。良い、試練を受けることを許可しよう」
「それでは試練を受ける者は7名でお願います」
「なんと!? 7名もいるのか。白銀の翼だけであれば6名ではないのか?」
「そうですが、もうひとり試練を乗り越えられる者がいます。それはロックです」
ロックは自分の名前を呼ばれて驚いているが、真っすぐな目で陛下を見上げる。
「良い目をしているな。よかろう」
「陛下の寛大なる御心により願いは聞き入れられた。皆の者、下がるが良い」
ダイド公爵の言葉により俺達は謁見の間を出て控え室に戻るのであった。
しばらくすると、ロバート侯爵が部屋に入ってきた。
「白銀の翼よ。今日はご苦労であった。だが、ノワールよ。お前の行動には私も肝を冷やしたぞ」
「そうですか? 王都にとっては聖騎士の復活が出来たし、俺達は自由と上級クラスを獲得することができたから、お互い良かったと思います」
俺が笑いながら話すが、カインが真剣な顔で言う。
「ノワール。俺達が上級クラスを既に獲得したような言い方だが俺は不安だ」
「俺はカイン達が余裕で上級クラスを取得できると思っているぞ。今のカイン達であれば、Aランクでもトップの実力だぞ、自信を持てよ」
「そうよ、あなたなら大丈夫だって言ったでしょ」
ナシャさんに励まされるカイン。
カインよ、このままではナシャさんに頭が上がらなくなるぞ。
ロバート侯爵は苦い笑いで、
「試練は明日行うことになる。今日はゆっくりと休んでくれ」
◆
俺達が宿で休んでいる一方で、王宮では陛下とダイド公爵とゴッズ子爵が、同じ部屋で集まっていた。
「ゴッズよ。膝が完治して、予は嬉しいぞ」
「ありがとうございます。ノワール達のお陰で全快することが出来ました」
「ノワール達のお陰か…… ゴッズよ。其方の目でノワールをどう見る」
ゴッズはしばらく考え込む。
「聖騎士に復活した私が全力で放った奥義のセイントクロスを受け止め、余裕さえ覗える実力があります。更にカイン達もAランクのデーモンコマンダーと戦いでは、余裕を持って戦っており、既にSランク相当のパーティーであります」
「そうか、ノワールは個人でSランク、カイン達のパーティーでSランク相当か」
「ダイド公爵よ。其方はノワール達をどう見る」
「はい、ランクに対してはゴッズ子爵と同じく推察します。また、人柄は名声や物欲等はなく、人々のために尽力するタイプと見受けられます」
「確かに其方の言う通りだ」
陛下とダイド公爵は、お互いに納得するように相槌を打ち、それを確認してからゴッズが陛下に言う。
「陛下。ノワールから譲り受けた装備を鑑定した結果、防具が主にヒヒイロカネを使用、剣と盾はオリハルコンとアダマンタイトの素材が使用されており、各所には魔晶石や宝石もあります」
「誠か……」
「はい。更に、剣にはSTRと聖属性攻撃が30%アップ、盾は魔法ダメージ30%ダウン、防具にはVIT30%アップと物理ダメージ30%ダウン、状態異常無効が付与されております」
陛下は、改めてゴッズの装備を見る。
「その装備は、予の宝物庫にある装備と同等、いや、それ以上の性能を持った装備ではないか。まさに伝説級だ」
「陛下、私も鑑定結果を聞いた時は驚愕しました」
「ダイド公爵。仮に7人とも試練を乗り越え、上級クラスを手に入れた場合、我が国の戦力はどのようになるか?」
「はい、現在我が国には11名の上級クラス者がおり、7名加わると18名になります。また、上級クラスは他国への牽制もあり王都の西側に集中しており、東側には配属されていません。今回、東側のレアランド領とコートダール領に新たに7名が配属されれば、戦力に莫大な強化が図れます」
「そうであるか。しかも、レアランド領のロック隊は、ロイヤル騎士団にも劣らない戦力だと考慮すると、我が国の戦力が一気に倍近くになったと言うことだな。そうすると、ノワールに関係する者達で我が軍に匹敵する戦力を持つことになるぞ」
「左様でございます。しかしながら陛下、私は戦力よりも脅威に感じていることがございます。ラムズ侯爵は、パラサイトジェネラルデーモンの影響により、未だ休養の身であります。他国がそこに目を付けてレアランド領に侵攻する事態を恐れ、ロック隊による戦力強化を図ったとなれば、ノワールは相当な策士でもございます」
「戦力ではなく巧妙な策も図れると言うことか。我が国の国政を考えると、莫大な影響を与える存在である。だからこそ、予に貴族や軍に取り込むことを宣言させたのだな。さて、ノワールを取り込むためにはどうしたものか……」
3人の話は、夜遅くまで続くのであった。
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