第63話 伝説の鍛冶職人 テンゼン
翌日、陛下との謁見まで10日あるので、俺達はそれぞれ別れて行動することにした。
俺はと言うと、もちろんルミアと一緒だ。
「ライゼンさん、いるかい」
「おお、ノワールじゃないか。俺の装備の使い心地はどうだ」
「ああ、最高だよ。昨日もこの装備に助けられたよ」
「そうか、ところで今日は何かようか?」
「人がいない所で話がしたい」
俺の真剣な眼差しに、一瞬顔を強張らせるライゼンさんではあったが、
「あんちゃんが人払いか…… 余程のことのようだな。こっちだ」
俺達は小部屋に案内され、俺は忍者の装備を机の上に置く。
「おいおいおい、あんちゃん、この装備は!?」
ライゼンさんは忍者の装備をじっくりと見回し、机の中から道具袋を取り出す。
「ま、まさか!? この刀は」
鞘から刀を出すと柄にある目釘を取り外し、慣れた手つきで分解する。
「ライゼンさん、なんで刀を分解できる? この前は忍者の装備は知らないって言っていたよな」
ライゼンさんは大きなため息をつく。
「この前は嘘をついて悪かったな、秘密にしたのは俺の師匠との約束でな」
「約束?」
「そうだ。その刀身の鞘にあたる所を見てみろ」
そこにはテンゼンと銘が彫ってあった。
「テンゼン。俺の師匠でもあり育ての親だ。俺が小さい頃、テンゼンに拾われて鍛冶の道を歩んだのだ。そこで俺は、テンゼンから忍者の装備についても手解きを受けたのだ」
ライゼンさんは、刀身に打ち粉をポンポンと軽く打ちながら刀を手入れする。
「もう300年前になる。魔王軍が剣聖トルクと賢者マーリンの活躍によって討伐されたが、実はもう一人の英雄がいた」
「そのことは知っている、忍者の神事さんのことか?」
「流石はあんちゃんだ。良く知っているな。テンゼンとシンジは親友であり、その証としてあんちゃんが持っている忍者の装備を作った」
「なぜ、秘密に?」
「それはシンジがあまり表に出ることを嫌ったためで、シンジがテンゼンに秘密にするように言ったそうだ。テンゼンから聞いた話だとシンジはとてもシャイだったそうだ」
「えええ、それだけの理由!? もっと、装備の性能上とか女神の啓示とかで秘密だったとかではなくて?」
「ああ、それだけだ」
忍者が秘密だったことについて、悩んでいた自分がバカらしくなってきたな。
刀のメンテナンスを終え、ライゼンは俺に刀を返す。
「でも、驚いたぞ。忍者の装備について聞かれた時も驚いたが、まさかテンゼンの装備をあんちゃんが持ってくるとは。どこで手に入れた」
俺はロバート辺境伯のことを話す。
「そうだったのか。あんちゃんは不思議と人とのめぐり逢いが良いな」
「ああ、俺もそう思うよ。たぶん、俺を加護している女神のお陰だ」
「そうだ。ライゼンさんは、忍者装備以外に上級クラスの装備は扱ったことがあるか?」
「ああ、あるぞ。剣聖トルクと賢者マーリンの装備もテンゼンが作成した時、俺は助手で手伝ったからな」
「それなら助かる。今はこれだけしか持っていないが、上級クラス用にどれくらい作れそうだ」
俺はアイテムボックスから、エベルス鉱山での採掘と魔獣からドロップしたレア素材を机の上に並べる。
ミスリル鋼製 30kg ミスリルの鋼糸 15kg
ダマスカス鋼 18kg アダマンタイト 12kg
アダマンタイトの鋼糸 12kg チタン鋼 23kg
オリハルコン 15kg ヒヒイロカネ 13kg
魔晶石 5kg 魔原石 8kg
ダイアモンド、ルビー、サファイヤ等
「おいおいおい、あんちゃん勘弁してくれよ。これだけって言うレベルじゃねぇぞ」
ライゼンさんは素材を見渡し頭を抱える。
「あんちゃんと一緒にいると、こっちまで変になりそうだぜ。アダマンタイトまでは大目に見てやるが、チタン鋼、オリハルコン、ヒヒイロカネに至っては最上級や伝説級のレア素材じゃないか」
「そうか、これくらいならばもっと集めることもできるぞ。それで、どれくらいは作れる?」
「ヤレヤレ。そうだな…… 8~9人分は作れるだろう」
「おお、それで良い。じゃあ、取り敢えず聖騎士用の装備を作ってくれないか?」
「いいが、サイズはどれくらいで、どんなヤツが着る? 場合によっては作らんぞ」
「心配するなよ。最初の一人はロイヤル騎士団のゴッズ隊長だ」
「おい、またとんでもない名が出てきたな。でも、あいつは両膝を痛めたから聖騎士の力を発揮できず、最近ではロイヤル騎士団の隊長の座も危ないって言うぞ」
「そうだな。だが、ゴッズさんは部下をかばって両膝を痛めたって聞いたぞ。俺はそういう話に弱い」
「でもよ、あんちゃん。折角、作ってもヤツが受け取るとは思えないぜ。何せ、俺が陛下に頼まれて装備を作る時も断ったくらいだからな」
「ライゼンさん無理よ。ノワール君って結構頑固なところがあるから、一度決めたら諦めないタイプよ」
「ははは、流石は彼女さんだな。よし、ゴッズのサイズだったらわかっているし、作ってやろうじゃないか。それで、いつまでだ」
「九日後でできないか?」
ライゼンさんは少し考え込む。
「運次第だ。最上級品や伝説級の素材を扱いためには、腕もさることながら運が必要だ。なぜなら、どんな名工でも失敗する時がある」
「多分、運のことなら問題ない」
「あんちゃんが、そう言うなら作ってやる」
「それじゃ、金はいくらだ?」
「金はいらん。その代わり俺の弟子たちにも手伝わしてくれ。それと素材も少し分けてくれ」
「わかった。素材は足りなくなったらいってくれよ」
「あんちゃん、助かるよ。これだけの素材を一度に扱うことはないからな。丁度いい機会だから、弟子たちに技術の伝承してやりてぇんだ」
俺とルミアは鍛冶ギルドを出ると、大通りを歩きながらクレープを食べる。
「ねぇ、ノワール君。さっき、ライゼンさんと話していた上級クラスの装備のことだけど、私達の分も入っているの?」
「ああ、もちろん入っているぞ」
「うーん、でも、私達は上級クラスを持っていないわよ。それに上級クラスは、奇跡的に女神の加護で得るか、既に与えられた者から何かの条件により伝承されるしかなくて、どちらも曖昧で血筋だと言う人もいるわ」
「知っている。だが、それは一般論で、もうひとつ方法がある。まぁ、陛下と謁見した時のお楽しみだな」
「もぉー、気になるぅ――」
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