第56話 赤いバンダナの男
5層に着くとロックゴーレムやアイアンリザードが散らばって数匹いるが、人影はなく採掘ポイントも手付かずのままで放置されている。
なにか違和感があるな。
俺は辺りをよく確認すると、違和感の正体がわかった。
それは採掘ポイントである。
5層の採掘ポイントは、今までの採掘ポイントの数と比較すると1割程度しかなく圧倒的に少ないのだ。少ないと聞いていたが、想像以上に少ない。
そう言えば、囚人は隠し部屋があると言っていたな。
マッピング!!
マッピングを使うと、東にある壁の奥に空間があることに気付いたのだが、ここから見ると壁しか見えない。
俺は壁際に行くと、良く見ると壁の向こうが透けて見える。
マッピングが無ければ気が付かないな。
俺は手で壁に触れると、手が壁を突き抜けたので、恐る恐る壁を通り抜けると広さが20メートル程度の部屋にでる。
壁の横には魔導具が設置されている。
先程の透けている壁はこの魔導具による映像か、まるで映写機だ。
部屋を見回すと、ここの層に採掘ポイントが少なかった理由がわかった。
なぜなら、ここに採掘ポイントが集中しているからだ。
なぜ、採掘ポイントが集中しているのだろうか?
よく見ると、地面に描かれた沢山の魔法陣と、部屋の隅にある大きい魔導具を見つけた。
これは、なんだ!?
鑑定!!
鑑定すると、魔法陣は採掘ポイントをこの部屋の中に誘導させることに使われており、魔導具はなんと転送装置で人や物が転移できることがわかった。
採掘ポイントが少なかった原因は、この魔法陣によるだ。
俺は、ここで何が行われているのか確認するため、隠密を発動させ待機する。
うーん、暇だ。
2週間経過したが、誰も現れない。
魔獣を倒して時間を潰していたが、流石に飽きてきた……
折角、採掘ポイントがあるので採掘でもするか。
俺はアイテムボックスに収納しながら、次々と採掘する。
鑑定で採掘ポイントを見ると、時々黄金色に光る採掘ポイントが現れるようになった。
アイテムボックスで採掘をしてみると、どうやら黄金色に光る採掘ポイントはレア素材が入手できるようだ。
かなりの低確率で出現しそうだが、俺のオリジナルスキルにより黄金色に光る採掘ポイントが出現して、レア素材の採掘ができた。
まさか、石油とか掘り当てたりしないよな……
これだけ採掘ポイントが多いと採掘しても次から次と採掘でき、ミスリル鉱石だけで20kgが取れ、なんとアダマント鋼、チタン鋼、オリハルコン、ヒヒイロカネまで掘れた。
アダマント鋼、チタン鋼は最上級品、オリハルコン、ヒヒイロカネに至っては伝説級品の素材だ。
俺のオリジナルスキルである幸運は本当に凄い。
しかし、こんな隠し部屋で効率良く採掘を行い、誰にも知られずに転送して売れば金儲けも容易だな。
きっと、ここはミスリル鉱石の密輸に関わる場所で、ミスリル鉱石はどこかでミスリル鉱に加工されているのだろう。
そんなことを考えていると、転送装置の魔法陣が光始めた。
魔法陣は更に眩しい光を放つと光が人型となり、一人の男性が姿を現す。
あっ、赤いバンダナの男だ!!
俺は声を出しそうになったが、赤いバンダナの男は俺に気付いていない様子である。
しばらく、俺は男を観察していると小さなノートを収納袋から取り出し、採掘ポイントの位置や魔法陣を写し、転送装置を念入りに調べている。
時折、俺の方を向くことはあるが、全く気付いていない様子だ。
俺は頃合いを見て男の背後に周り込み、刀を喉元に当てる。
「動くな!!」
「なにっ!?」
「黙って俺の質問に答えろ」
男は小さく頷くと、突然俺の刀を素手で払いのけたので、男の腕から鮮血がほとばしる。
まさか刀を素手で払いのけて、俺の束縛から脱出するとは予想外だ。
俺は男と対峙する。
「オゥ、ジャパニーズニンジャ!! ファンタスティック、アメージング。あなたは忍者ですか?」
こいつが絶対に転生者だ。
俺は刀を鞘に納めると、男は収納袋からハイポーションを取り出して飲み干し、腕の傷を癒す。
「もしかして、あなたは転生者ですか?」
「あなたも忍者の格好をしていると言うことは、転生者ですか?」
なんか、お互い緊張して変な挨拶になってしまった……
「まさか、こんなところで転生者に会うとは予想外だ。初めて俺以外の転生者と会いましたよ」
「そうですか。俺は3人目だが、まさか忍者と会うとは驚きました」
俺達は自分が転送された状況や、今までのことを話せる範囲で話した。
どうやらこの人は、アメリカ人の転生者で20歳の時に不慮の事故で亡くなったが、俺と同じように女神に会って12年前に転生した。
名前はロビン・ジェームスで、子供の時からロビン・フッドやジェームス・ボンドが好きだったので名前を両方から取ったそうだ。
それと、オリジナルスキルは上級クラスの弓聖を希望して、残りは女神のアドバイスによりアルテミスの弓(伝説級)と限界突破だ。
それと、既存スキルはマッピング、全言語理解、アイテムボックス、状態異常耐性、経験値3倍を取り、これも女神のアドバイスによるそうだ。
ナイス選択だ。俺の様に、限界突破を身体で覚えるなんて無理すぎるからな。
他の女神は良く心得ている。
うーん、やっぱり俺の女神は残念女神だったな。
それからお互いのことを色々と話している内に、俺達は打ち解け合うことができた。
「ところでロビンは、ここで何をしている?」
「ああ、俺はある人の命を受けてミスリル鉱の高騰について調べていて、やっとここで密輸の証拠を掴んだところだ。ノワールこそ何をしている?」
「俺もミスリル鉱の高騰について調べていて、赤いバンダナの男を追っていたところだ」
「え!? 俺を追っていたのか?」
俺は今までの盗賊のことやバンク男爵のことを話し、レアランド領主 ラムズ侯爵が首謀者だと思っていることを話す。
「ノワール。君が考えていることは正しいが、決め手に欠けているな。でも、俺はラムズ侯爵が関与している証拠を持っているから、俺に任せてほしい」
「わかった。それならば、ロバート辺境伯が2週間後に王都でミスリル鉱の高騰について、陛下に直訴するので協力してくれないだろうか?」
「必ず協力することはできるだろう。だが、最初から陛下の前で証言はできないぞ。俺の方も都合があるからな」
「わかった。王都で会おう」
俺達は固い握手を交わすと別れるのであった。
次回から第5章になります。
プロットは第10章まではあるので、引き続き頑張って書いて行きたいと
思います。
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