第55話 忘れてた
ロック隊が倒したミスリルゴーレムからミスリル装備が1式ドロップ、俺が倒したミスリルゴーレムからもう1式ドロップした。
うーん、これって3日もあれば、ロック隊の全員にミスリル装備が行き渡りそうだな。
俺はロックに全員分のミスリル装備を揃えることを伝えると、信じられないと言う顔をしていたが、ミスリルゴーレムが次から次へと出現するので皆疲れも忘れて討伐する。
最後の方になると6人パーティーだけで、容易にミスリルゴーレムを倒せるようになっており、ロックに至っては一人で倒せるようになっていた。
今度、カイン達と模擬戦してみると面白そうだな。
「ノワールさん、本当にありがとうございます。俺達を強くしてくれただけではなく、全員にミスリル装備まで揃えてくれるとは」
「お礼はいらないぞ。俺が勝手にやったことだ。それにミスリル装備は、お前達が倒したミスリルゴーレムからドロップした物だからお前達の物だ」
「そう言われても……」
「そうか。それだったらお礼は俺のことは他言無用で頼む」
「わかりました。それとミスリル装備以外に多数の鉱石がドロップしました。金額にして、ミスリル貨1枚と金貨38枚程になります」
「ロック隊ではドロップした物は、誰の物になる?」
「魔獣を倒した者になります。しかし、我々は既にミスリル装備を貰っていますし、私に限ってはノワールさんから直接貰っています。ですから、このお金はノワールさんが受け取ってください」
「うーん。それなれば、金はここにいる囚人達の出所祝いに分配してくれ」
俺は、この2か月間でロック達以外に囚人達とも話している。ここにいる囚人達は、盗賊や殺人犯とは違い、何かの理由で道を外してしまった者達だ。
俺はこの金が囚人達の更生のためになればと思っている。
そんな俺の思いをロックは汲み取ったようだ。
「わかりました。囚人達の更生のための費用にします」
「それからお前に渡したミスリル装備だが、全ステータスが15%アップ、全ダメージを15%低減の付与効果があるから大事に使ってくれよ」
「えええ!! 他のミスリル装備とは違うと思いましたが、付与効果があるなんて……」
ロックは俺に深々と頭を下げる。
「俺はノワールさんとめぐり逢えて本当に幸運です。ありがとうございます。大事に使います」
このことを聞いていた周りの囚人達からも、深々と頭を下げられるのであった。
「最後に言うが、ミスリル装備はアッサムザルクに戻っても使うな。それと実力も隠せ」
「それはなぜですか? 」
「お前ら考えてみろ。2か月間程度でB~B+クラスの実力者になって、しかもミスリル装備までしていたら絶対に怪しまれる」
「確かにそうですね。では、必要な時になるまで隠すことにします。ところでノワールさんは4層に何をしに来たのでしょうか? 採掘には見えませんが……」
ロックの問いに全員が俺を注目する。
「あああ。忘れてた!!」
全員がガクッとズッコケる。
そうだよ。
ロック達の志に動かされ、俺も必死にロック達を鍛えていたから、すっかり忘れていたよ。
俺はロック達や囚人達に赤いバンダナの男について聞いてみると、ひとりの囚人が手を上げる。
「俺は知っているぞ。噂で赤いバンダナの男が、5層の隠し部屋から出て来きたと聞いた。それに、この前は、どこかの貴族がここを視察した時に話していることを聞いたぞ」
「貴族ってバンク男爵か」
「ああ、確かそんな名前だった」
囚人から有力な情報を得たが、ロバート辺境伯が王都に報告するまでに一か月となった。
俺は焦りを感じながら、5層で赤いバンダナの男は現れるまで待つことにする。
「俺はこれから5層に向かうため、ロック隊とはここで別れる。お前らは慢心することなく鍛錬に励め。いいか、ランクが全てではない。武技や闘気、魔素を操り鍛錬して熟練度を増した方が強くなれるから精進しろ」
「はい、我々はノワールさんの教えの通り、慢心することなく鍛錬に励み、領民の力になることを誓います」
「よし、良い志だ。じゃあ、またな」
俺は忍者の装備に瞬時に装換し、隠密を使う。
「な!? 目の前にいたのに消えた。そして、気配を全く感じることができない……」
皆が辺りをキョロキョロするが、ロックだけは俺に向かって敬礼する。
いい奴らだったな。また、どこかで会おう。
俺は振り返ることなく、5層へ向かうのであった。
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