第50話 ロバート辺境伯の決意
帰りの馬車の中でカザトさんが悩みながら話す。
「まさか、ラムズ侯爵がミスリル鉱高騰の首謀者だったとは。私はラムズ侯爵にお会いしたことがあるが、賢明な方でとても私腹を肥やすとは考えられません」
「うーん、そうすると裏で誰かが糸を引いていると言うことか……」
ミスリル鉱の高騰には、もっと大きな陰謀が隠されているようだ。
それと、この一件だが俺達は深く関わり過ぎている。
これからは今まで以上の強敵に立ち向かわなければならないだろう。
俺は良いとして、カイン達にはもっと強くなってもらう必要があるな。
◇
カザト邸でカイン達と別れ、俺とルミアは教会に向かう。
「あら、ノワールさん。お久しぶりです」
セーラさんが出迎えてくれた。
「教会の運営はその後どうですか?」
「はい、クレープの販売権や手伝って頂いているみなさんのお陰で順調です。それに、ノワールさんからの紹介で来てくださったジェイドさんが、大変良くしてくださっていて……」
なぜか、照れながら言うセーラさん。
俺には何を照れているのか、さっぱりわからない。
「セーラさん、ノワール君に言っても無駄よ。この人はこの手の話には鈍感だから」
「この手の話ってなんだよ」
俺がルミアに怒ると、セーラさんは笑っている。
セーラさんとルミアは、何かコソコソと話しているので、俺は邪魔しないように女神像のところにいくと眩しい光に包まれた。
「どう元気だったかな? ノワール君」
俺の目の前には残念女神ことフロリナートがいた。
「元気だったじゃねぇーよ。また、何か変なことしただろ」
「変なことはしていませんよ。お陰様で、私は主任中級女神に昇格しました。だから、貴方がパーティーを組んだ場合、パーティーボーナスとして経験値が更に3倍になることと、パーティーによる持続効果を1か月から3か月に延長することができました。どう、凄いでしょう?」
あー、やっぱりな。
カイン達が言っていたように、俺のオリジナルスキルよりも上回る速度でレベルアップできたのは、残念女神がやらかしたからだ。
これは通常より300倍でレベルアップするから超爆速で成長するじゃねぇか。
「おい、主任中級女神になった残念女神さん。俺は上級クラスを入手したいのだが、まだひとつしか入手できていないぞ。俺は3個のクラスを同時に設定できることを忘れていないか?」
残念女神の額からはみるみるうちに汗が流れ、俺に向かって超高速のジャンピング土下座を繰り出す。
「ごめんなさい。忘れていました」
「はぁー やっぱり残念女神だな。それで、俺が上級クラスを入手するためには、どうすればいいんだ?」
「すみません。今のところ入手する手段がないです。でも、近々、忍者の装備は入手できますよ。あっ、そろそろ時間ですね。またねぇ――」
「おいっ、まだ、話がっ」
残念女神め、装備のことを言ってうまく誤魔化したな。
残念女神と別れた後、俺とルミアは宿に戻り、久しぶりに二人だけの時間を過ごすのであった。
それから1週間が経ち、俺達は再びロバート辺境伯家を訪問すると、ロバート辺境伯が自ら出迎え、先日のお礼を述べ、俺達は客間に案内される。
「みなさん、よくぞ来てくれました。今日は固い話は無しです。どうぞ、気軽に話しましょう。さぁ、召し上がってください」
大きなテーブルの上には紅茶やお菓子等を用意されており、女性陣が目をキラキラさせて紅茶やお菓子を堪能し始める。
「美味しいわね、ナシャ」
「うん、ルミア」
「アンナ、これも美味しいわよ」
ロバート辺境伯家の女性陣も大いに楽しんでおり、俺達もロバート辺境伯と雑談するのであった。
「みなさん、よろしいかな。和んだところで先日のことについて話そう。バンク男爵は表向き病死とされており、盗賊共は取り調べるため王都へ連行されている。王都からは調査団が派遣され、バンク男爵家を捜査しているが、結果がでるまで2か月後はかかるだろう」
カインが質問する。
「なぜ、黒幕がラムズ侯爵だとわかっているのに、ラムズ侯爵は調査されないのでしょうか?」
「ふむ、決定的な証拠がないからだ。それに伯爵となれば政治が絡んでくるから、容易に手出しができないのだよ。ただし、今回の件でミスリル鉱の高騰は落ち着くだろう」
カザトさんが考え込みながら話す。
「そうだと良いのですが、時間が経てば元のように高騰するでしょう」
「私も同感だ。そこで私も独自に調べ、調査結果を3か月後に王都へ出向いて報告することを考えておる」
「貴方、それは危険ではないでしょうか?」
ロバート辺境伯夫人が心配する。
「危険だと思うが、このままミスリル鉱が高騰すれば我が領民が苦しむ。領主は領民のためにあるべきだ。だから、私は危険があっても調査することは止めぬぞ」
ロバート辺境伯の決意は固く、ロバート辺境伯夫人もこれ以上言うことを止める。
俺から見ても危険だと思うが、領民のためって言うのが気に入った。
ここは、何か俺達も手伝えないだろうか。
「ロバート辺境伯、俺達に何か手伝えることはありませんか?」
「なんと、それならば3か月後に王都へ出向く際に、私達の護衛を頼む。君達程の手練れであれば有難い」
俺はカイン達に目で合図を送ると、全員が頷く。
「わかりました。微力ながら協力させて頂きます」
「そうか。それならばこの前のお礼を含め、君達には支度金を渡そう」
ロバート辺境伯は執事のスミスさんと話し、スミスさんが銀のトレーを持ってくるとカインに置く。
「ミスリル貨 12枚だ」
「ロバート辺境伯、こんなに貰って良いのですか?」
カインは金額の大きさに驚く。
「君達は命を救ってくれた恩人だ。本当は少な過ぎると思っているくらいだ。しかし、我が家はそんなに貯えがなくて、領主として恥ずかしいかぎりだ」
話を聞いていると、ロバート辺境伯は自分達の資産を惜しみなく、領民のために使っていることが伺える。
俺達は有難くミスリル貨を受け取るのであった。
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