第35話 マラッカス商会の繁栄
「おい、やめろ!! この女は俺様の獲物だ」
俺は驚いて魔力合わせを中止してシェリーさんの身体を念入りに鑑定すると、声の主を見つける。
それはシェリーさんの心臓に纏わり付く黒い影、その正体はパラサイトデーモンだ。
鑑定によるとこいつは宿主に強力な力を与える代わりに魔素を養分として成長し、生体になると同時に宿主を殺す魔獣だ。
ふっ、正体がわかればどうってことはない。
「お前、パラサイトデーモンだな。全てわかっているぞ。駆除してやるから出て来い!!」
俺の声に反応して、シェリーさんの心臓付近から黒い煙が湧き上がり、小さな悪魔が姿を現す。
俺はシェリーさんから飛び降りる。
「皆、下がれ!!」
カザトさん達は部屋の奥に下がる。
「ははは、少しはできるようだが、俺様を駆除できるわけがなかろう。俺様を駆除できるのはBランク以上で聖属性を扱える者だけだ。お前なんか無理」
問題ない。
既に俺はマーリンからデーモンを抹殺する魔法を教えてもらっている。
俺はパラサイトデーモンを警戒しながら、シェリーさんの心臓がある胸に手を置く。
「そうかな。消え去れ 奥義 ディスペル!!」
ゲームの中では有名な退魔魔法だ。
『ギァ!! ギュァァァ――』
パラサイトデーモンは言葉にならない断末魔の悲鳴をあげる。
「ば、馬鹿な……」
苦しみ悶えた後、パラサイトデーモンの姿は煙のように掻き消えた。
「ふぅー カザトさん。シェリーさんを苦しめていた根源は断ち切りました。もう、一息です」
悪魔のような何かが掻き消えたことに驚き、カザトさんやソアラちゃんは俺の言葉に頷くことしかできない。
俺は再び魔素合わせすると、今度はすんなりとシェリーさんの魔素の流れとシンクロ
することができ、魔素の流れを正常に戻すことができた。
シェリーさんの様子を見ると、顔はすっかりと赤みを帯び苦しさからも解放された穏やかな顔つきになる。
「カザトさん。治療は成功しました。もう、大丈夫でしょう」
俺はシェリーさんから離れて椅子に座った瞬間に、意識を失うのであった。
◇
俺が目を覚ますとベッドの上に寝かされており、いつの間にか側にはルミアさんが椅子に座って寝ている。ずっと俺を見守ってくれたようだ。
「あら、ノワール君。起きたのね」
「俺はどれくらい寝ていたのかな?」
「そうねぇー 今が丁度お昼で、私達が着いてから丸一日寝ていたから二日間くらいかしら」
結構寝ていたのか。
久しぶりに全力で魔法を使ってディスペルを発動したからな。
予想以上に身体への負担が大きかったようだ。もっと修練しないとダメだな。
俺はルミアさんと一緒に食堂に行くと、カザトさん、シェリーさん、ソアラちゃん、そして白銀の翼のメンバー達が食事しており、シェリーさんは元気に話している。
「おお、ノワールさん。中々お目覚めにならなかったので心配していました。見てください。妻が本当に元気になりました。ありがとうございます」
シェリーさんやソアラちゃんからもお礼と感謝の言葉を受け、白銀の翼のメンバーからも褒め称えられる。
俺は一度皆を落ち着かせると、俺の秘密を話し始める。
「みんな、俺のことで話したいことがあるので聞いてくれ。それと今から話すことは他言無用にして下さい」
俺は異世界から転生したことを思い出したことや、女神の加護により剣聖トルクと賢者マーリンが師匠で修行したこと、畑の飼料やカイトやクレープや枯山水等は異世界の知識であることを話す。
皆は黙って聞いていたが、表情は強張り驚きは隠せないようだ。
俺の話が終わるとしばらく沈黙が続き、カザトさんが話を始める。
「ノワールさん、よくぞ話してくれました。この話は決して他人に話さないことを誓います」
皆が頷く。
「そうしてくれ。それに話を聞いたこと自体を話さないでくれ。俺の秘密を知りたい者が、皆に危害を加えることも考えられるので、話さないことがみなさんを守る意味もある」
「そうですな。それにしても剣聖様や賢者様が師匠だとは驚きですが、これで妻を治した神聖魔法 ディスペルができたことも納得しました」
カザトさんの話に皆が頷き、今度はカインが話を始まる。
「話を聞くと色々と思い当たる節がある。いきなり試験官に勝ったり、あっと言う間に中級クラスになっていたり、不思議なアイデアで販売権を得たりとあり得ないことだらけだった」
「ああ、そうだな。あの時は未だ記憶が曖昧だったので話せなかった」
カインの話に皆が頷き、次にルミアさんが話を始まる。
「ありがとう、本当のことを話してくれて」
「いや、俺のことを本気で心配してくれてありがとう。夢見つつであるが、ルミアさんが俺のことを看病してくれたことは覚えているよ」
俺がそう言うと、背中にシェリーさんとソアラちゃんからの視線が突き刺さったので、俺は話題を変えることにする。
「それとそうだ。シェリーさんに大事な話があります。俺はシェリーさんと魔素合わせをしました」
「はい、主人から聞きましたので知っています」
「魔素合わせには大きな代償があります。その代償はレベル低減で、シェリーさんは魔導士がレベル43でしたが、今はレベルが20になっている筈です」
「そうなの? ノワール君は鑑定スキルを持っているのね。自分では気づかないけど大丈夫。私は冒険者を卒業したから気にしないけど、責任は取ってもらわないとね」
「責任!?」
「うん、ノワール君。ソアラのことはどう思っているのかしら。私はお似合いだと思うの。だからね、結婚を前提にお付き合いしてくれないかな?」
「お母様!!」
慌てるソアラちゃん。
だが、俺が真剣に考え込むと、しばらく沈黙が漂う。
「考えさせてくれ。俺は渡り人で異世界では50歳で死んだ。そんな俺から見ればソアラちゃんは可愛い娘のように思える。だけど、これからは28歳のノワールとして生きていくことに決めた。この決めたきっかけを作ってくれたのが、ルミア、君のお陰だ」
俺はルミアを見ながら話す。
「ルミア、王都でのデートは本当に楽しかった。俺は50歳だったことを忘れて、28歳のノワールとして初めて人と接することができた。だから、ソアラちゃんやルミアのことを真剣に考えたい。そして、いずれは一人の女性を守りたいと考えている」
二人は、俺の話を理解してくれたらしく頷いている。
「でもね、ノワール君。一人の女性を守ることは大切ですが、別にひとりだけでなくても良いのよ」
「シェリーさん、それだと浮気になるのでは……」
「二人ともお嫁にすれば問題ないわよ」
「まさか、この世界は一夫多妻制!? そうなのか? 知らなかったよ。失敗したかな……」
「ふふふ」
そんな俺を見て笑うシェリーさん。
皆も誘われて笑いが起こった。
「お母様。私は今まで以上に頑張りますわ。だって、ノワールさんはダメだとは言わずに考えさせてくれって言ったのですから」
「そうね。私も頑張ってみようかしら」
互いに見合うソアラちゃんとルミアの視線がぶつかり合うが、最後は二人とも笑っている。
場が和んだところで、カザトさんが俺に向かって深々とお辞儀する。
「ノワールさん。一度ならずとも二度も貴方に私達は救われました。一度目は私と娘のソアラ、二度目は妻のシェリー、本当にありがとうございます」
カザトさんは俺の両手を握り泣きながらお礼を述べる。
「カザトさん。どうぞ顔を上げてください。俺が勝手にやったことなので、お礼なんていらないですよ。それに俺はこの世界に来てからは、ずっと貴方にお世話になり続けています。だから、お礼なんていらないです」
「そんなことはありません。貴方がいなければ、私達はこの世にいないかも知れません」
こんなやり取りを何度かしたが、カザトさんは一向に折れようとしない。
うーん、参ったな。商魂もあってこうなるとカザトさんを説得するのに難しいな。
「あ・な・た。いい加減にしなさい!! ノワールさんが困っているわ。お礼を押し付けるのではなく、ノワールさんから助けを求められた時にお礼すればよいでしょ!!」
シェリーさんの般若モードが発動!!
シュンとなるカザトさん。
鶴の一声で一件落着するのであった。
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