第34話 禁断の魔導具
遠くの方から猛スピードで馬を飛ばして向かってくる人が見える。
段々近づいてくると、その人がメイドのエリスさんだとわかる。
「旦那様――」
叫びながら馬から降りて、カザトさんにエリスさんが駆け寄る。
「大変です。奥様が倒れました。大至急、お戻りください」
「なんだと!!」
少し取り乱しているカザトさんを尻目に、ジェフさんはエリスさんが乗ってきた馬と、馬車に繋がれていた馬と交換している。
「旦那さま、馬の準備ができましたのでお乗りください。今日中には邸宅に着きます」
ジェフさんとカザトさんは馬に跨る。
「カザトさん、俺も行きます。今の俺は魔法戦士ではなく魔導剣士だ。それに、魔導士も鍛えてある。きって、治療に役立つから連れてってくれ」
「魔導剣士? でも、今、動かせる馬は一頭しかいません。それに時間がないのでもう出発します」
「馬を無くても大丈夫だ。自力で並走する」
「並みの冒険者でも馬並みのスピードでは半日も待ちますまい。カインさん、馬車とエリスを頼みます。すみませんが、先に行きます」
カザトさんはジェフさんに馬を出すように言い出発する。
「ペガサスウィング」
俺のオリジナル魔法を発動!!
背中に風魔法による翼をイメージさせることで推進力を生みだす。
そして、常用で発動している身体強化を更に重ねがけすることで、速度を倍加させる。
俺は馬を追い越す程のスピードで走り出す。
「ノワールさんには敵いませんな……」
途中、馬のスタミナが切れそうになってきたら、俺がハイエナジーを唱え回復したこともあって、予定よりも早くカザト邸に着くのであった。
◇
「お父様、早く!!」
カザトさんを見つけて駆け寄ってくるソアラちゃんの顔を見て、シェリーさんの病状は悪いことと察することができる。
俺達は寝室に行くと、ベッドに寝ている顔面蒼白のシェリーさんが苦しそうに横たわっている。
「おお、シェリーよ、気を確かに持つのだ」
必死に看病するカザトさん。
俺が見ているとジェフさんが俺を廊下に案内して、俺にシェリーさんの病状について話し始める。
「実は奥様は旦那さまと出会いお嬢様を身ごもる前までは名のある冒険者でございました。奥様は旦那様と結婚して、マラッカス商会を一流にするために無理をなさったのです。それが禁断の魔導具です」
禁断の魔導具か……
なんとなく話が繋がってきたぞ。
女将さんやルミアの話はシェリーさんのことを言っていたのか。
「禁断の魔導具は人外の効果をもたらす反面大きな代償があるのです。奥様の場合、子供を新たな子供を身ごもらないことと、お嬢さまが20歳になるまでに命を落とすことでした。当然、旦那様は各方面に手を尽くし、代償を防ぐ方法を模索しましたがいずれも駄目でした。もう、奥様は……」
うなだれるジェフさん、俺が思っている以上に症状は深刻のようだ。
この家族、いや、この人達には本当世話になった。
そして、俺が思うに女神がこの人達に俺を会わせたと言うことは考えれば、俺に救え、いや俺なら救えると言うことではないだろうか?
きっとこれは運命だ。
俺は決心して部屋の中に入る。
出し惜しみはない。全力でシェリーさんを治すぞ。
俺が入ってくると部屋の中の空気が一変する。
スキルと魔素を最大限に発揮するため、俺は闘気と魔素を同時に纏うことで身体が赤色に輝く。
カザトさん達は俺の姿を見て驚愕する。
「ノワールさん!?」
「カザトさん、俺にシェリーさんを診させてください」
「いくらノワールさんでも、それは……」
躊躇して俺を止めようとするカザトさんをソアラちゃんが制止する。
「お父様、私はノワールさんを信じます。ノワールさんは渡り人。そんな人が偶然、私達とめぐり逢ったと思えません。きっと、めぐり逢った意味はこのためだと信じたいのです」
「信じてくれてありがとう、ソアラちゃん。カザトさん、俺は全力でやります」
「わかりました……」
力なく俺に答えてくれたカザトさんへ恩返しするために、俺は全身全霊で治療するぞ。
スキル 鑑定、集中を発動!!
ん? これは…… 賢者マーリンに教わったことがある。
誰でも魔素があり、身体の中を血液のように循環している。そして、血液と同じように循環が滞ることはない、ましてや反転していると死にもつながると言われた。
まさにシェリーさんの身体を流れている魔素は、ゆっくりと反転し始めているのだ。
魔素の流れを元に戻す方法もマーリンから教わっている。
その方法は、魔素合わせ!!
しかし、魔素合わせには大きな代償を伴う。
それは魔素合わせされた方が、大きくレベルを低下する代償を支払うことである。
シェリーさんはレベルダウンと言う代償を支払うことになるが、命には変えられない。
「カザトさん、俺が診たところシェリーさんは体内で魔素の流れが反転しており、このまま反転を続けると確実に死にます。俺はこれから魔素の流れを元に戻しますので、俺がやることを絶対に止めないでください。身体を触るのですが、大丈夫か?」
「体内を魔素が流れている? 私には良くわからないが、妻が助かるならお願いします」
俺はシェリーさんの上に馬乗りになると両手を掴んで、おでこを付けた。
よし、これで俺とシェリーさんの魔素の流れがシンクロできるぞ。
初めてマーリンと魔素合わせして時はビックリしたよな。
いきなり馬乗りになって両手を掴んで拘束してきたから、あのドS女に犯されるかと思ったよ。
そんな苦い思い出を考えながら魔素合わせをしていると違和感を覚えた。
おかしいな?
マーリンと魔素合わせした時とは何か変だ。
俺は魔素合わせすることを妨害されていると思った瞬間、誰かが語りかけてくる。
もしよろしければブックマークへの登録、評価をよろしくお願いします。
評価は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
簡単ですので、面白くなければ☆1、面白ければ☆5等を是非とも
よろしくお願いします。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。




