第31話 大事になってきたぞ
「んん!!」
俺は咳ばらいをして、カイン達に収納袋から取り出したロープを渡す。
「このロープで両脇と両手を結んでくれ。あと、この細い紐で両手の親指も結んでくれ」
「親指もか?」
「ああ、そうすると縄ぬけすることが出来ないんだ」
俺はダガールの傷をハイヒールで治してからカイト達と一緒にダガールと盗賊達を縛りあげ、カザトさんに一部始終を伝える。
「ノワールさん。良くぞ盗賊の襲撃に気付きました」
「ああ、前の襲撃の時、俺にスキルで追跡用の目印を付けたから出発する前から気付いていたぞ」
驚くカザトさんだが、ナシャさんとルミアさんが気が付く。
「だから、私達に出発前にこの魔石を渡したのですね」
「ああ、そうだ」
「それなら前もって言ってくれ」
「言いたかったが、俺はダガールも盗賊の一味、いや、ダガールが盗賊の頭だと思っている。それに、カインは顔に出やすいタイプなので、言ったらダガールにばれそうだからな」
ナシャさんとルミアさんは頷く。
「なぜ、ダガールが盗賊の頭だと思うのですか?」
「ああ、俺はこの一か月間、カザトさんとソアラちゃんの様子を窺っている盗賊達に気が付いていた。そして、その盗賊達はダガールにも会っていたからだ」
「そうだったのですか。私やソアラのことを貴方はずっと見守っていてくれたのですね。ありがとうございます」
深々とお辞儀するカザトさん。
「販売権の件でやっと恩返しができたと思えば、もっと恩返しをしなければなりませんな」
「いいえ、気にしないで下さい。俺が勝手にやったことですので。それよりも、ダガールを尋問したいのですが?」
「その前にこの盗賊達を移送するために、衛兵を呼んで来なければなりません」
そう言うとカザトは執事のジェフさんを呼び、何やら相談を始める。
「旦那さま、わかりました。馬車の馬であれば、お昼過ぎまでには衛兵を連れて戻って来られるでしょう」
馬にまたがると素早く馬は駆け出して行き、あっという間に姿が見えなくなった。
◇
盗賊達は一か所集められ、全ての武器や防具を解除され、今も仲良く眠っている。
ダガールの両足も縛り、俺は背中に蹴りを入れてダガールを眠りから起こす。
「うう、くそっ」
「ダガール、大人しく俺の質問に答えれば手荒な真似はしない」
「はっ、おまえの質問に誰が答えるか!! お前さえいなければ全てうまくいったのに」
俺を睨め付けるダガール。
「ダークポイズン」
痺れと毒による吐き気や頭痛、それに激しい死への恐怖がダガールを襲い、言葉にならない声を発する
「うがぁぁぁ」
「ハイキュア」
苦痛と恐怖から解放されるダガール、息遣いが荒い。
「どうする。答える気になったか。それとも、今度はもっと上位の魔法でも試してみるか。俺もどれくらいの効果がわからないし、試してみたいのだよ」
俺が魔法を発動しようとすると、
「わかった。これ以上は勘弁してくれ。お前の質問には答える。ただ、俺達は盗賊でも未だ殺しはやってない。だから、裁かれても死刑はないが、雇い主のことを言えば殺される」
「雇い主のことは言っても俺達が漏らさなければ、ばれないだろ?」
「駄目だ。俺の左手にある指輪は、契約の指輪だ。雇い主は同じ指輪を持っており、俺が雇い主の名前を言うと指輪の色が変わりばれる。そうなれば、俺は消される運命だ」
「そうか、それならば雇い主の名前以外は大丈夫だな」
俺とダガールのやり取りを見ていたルミアが何故か悶えている。
「ノワール君は、結構Sなのね。なんだか私、ゾクゾクしちゃう」
皆の顔が、お前はもっと空気読めよ的な感じになるが、ここはスルーする。
「お前達の目的は何だ。ミスリル鉱ではないな。ミスリル鉱を奪うだけだったら、この前、何故カザトさん達を襲った」
「鋭いな。お前の言うように目的はミスリル鉱だけではない。俺達の目的は、雇い主が言うにはミスリル鉱を高騰させるのが目的だ。この前は、マラッカス商会がミスリル鉱を王都に運ぶことを阻止するためだ」
カザトさんが少し考える。
「そうでしたか。ここ最近になってミスリル鉱が高騰し始めたので不思議になってしました。それに、私以外にもミスリル鉱の搬送中に盗賊に襲われ奪われたと聞いています。それは、貴方達の仕業でしたか?」
「そうだ。俺達が全てやった」
「そうすると、ミスリル鉱はエベルス鉱山で採掘量が多く、管理しているレアランド領であり貴族が絡んでいます。しかも、ミスリルの密輸や偽造は死罪となり、貴族であれば爵位を奪爵され廃嫡となりますので、これは上級貴族が絡む一件ですぞ」
ダガールの顔色が一瞬変わる。
「ダガール、そうなのか?」
「俺にはこれは以上契約の指輪があるので言えない。だが、一度だけ雇い主以外の者を見た。そいつは、頭に赤いバンダナを巻いた男だった」
「ノワールさん。これは大事になってきましたな。これ以上は私達も深入りしない方が良いでしょう」
貴族か。
こっちの世界に来てなるべく関わりたくなかったのだが、避けては通れない道のようだ。
いずれ対決する時が来るだろう。
俺達がダガールと話していると盗賊達が目を覚まし始めた。
「くそっ、俺達はこの山が終えれば足を洗えたのに。俺達だって好きでやってない」
「そうだ。だから、俺達は殺しをしない。全部、貴族や王族が悪いのだ。俺達は政治の被害者だ」
盗賊達は責任転嫁するように自分達は悪くないと言う。
「ふざけんな!! お前達はいつまでそうやって楽な方に逃げれば気が済むのだ。自分達のやったことに責任を持て!!」
俺が怒鳴りつけると、盗賊達は項垂れる。
「罪を償って、今度は必死になって真面目に働く気になったら、獣人区にある教会か獣人畑を訪ねると来い。教会にはセーラさん、獣人畑にはダンカンがいるので、ノワールの紹介だと言え。きっと力になってくれるぞ」
俺の言葉が彼らにどれだけ響いたかわからないが、盗賊達は無言で聞いていた。
「カイン。そう言えば、さっきナシャさんを大事な人とか言ってなかったか?」
「ああ、俺にとってナシャは大切な人だ」
「おお、漢だね。言い切ったな。」
それを聞いてナシャさんが返事する。
さてと、俺はカインとナシャさんの所に行く。
「はい、私にとってカインは大事な人です」
「おお、それはおめでたい。それで結婚式はいつに?」
俺以上に話に乗ってくるカザトさん。
「式はいずれ挙げたいと思っていますが、その際はカザトさんが俺達の結婚の証人になってもらえませんか?」
「わかりました。このカザト、二人の証人になりましょう」
思ってもいなかった申し出だが、カザトさんは満面の笑みで快く引き受けてくれる。
しばらく、二人のことについて聞いていると、ジェフさんが衛兵を連れてきて、俺達は盗賊を引き渡すのであった。
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