第3話 この世界の常識
「チュートリアルって言うことを知っているか? ゲームだと始める前のシステム説明だ」
「いいえ、今まで聞いたことがなく、初めて聞きました」
やっぱりそうか。恐らく他の転生者は、異世界について良く理解できていないから、死んでしまうのかも知れない。
「転生先が俺の知っているゲームに似た世界でも所詮はゲームだ。実際にゲームの世界が現実になったら混乱するだろう。そこで、転生先で馴染むための訓練はできないか?」
「具体的には、どうゆうことでしょうか?」
「例えば、森の中に結界を張って、誰にも気付かれない場所で普通の家で暮らす。そこには、食料や生活する道具等が全て揃っている。そして、転生先の世界の常識、剣や魔法の使い方等について誰かに教えて貰うことができないのか?」
「凄いわ。貴方は色々と考えていて、もしかしたら他の女神も同じようなことをしているのかしら」
また、分厚い本を読み出して、しばらく考え込む残念女神。
「見つけました!! チュートリアルと言う名称ではありませんが、転生者向け説明事項に同じようなことが書いてありました」
「そういうところが、残念女神だ。もう、その本を10回は熟読しろ!!」
「うへっ、了解であります」
俺の予想通り、他の女神も同じようなことをしていたのか……
そうなると、残り2割の転生者が人生を謳歌できずに死んでしまう原因は、残念女神と同じで他の女神もチュートリアルで異世界について説明していないような気がする。
「では、転生先に転送しても良いですか? 結界のある家には素材や装備一式等を置いておきますね。それと私も三か月間は干渉ができ、その間は自由に連絡することもできるので安心して下さい」
「わかった、何か問題あればこっちから言う」
「はーい、では、逝きますよ――」
「ちょっと、待った!! 逝きますよ―― ってなんか嫌な感じだな。それに……」
「なんですの?」
「あのさぁ、俺50歳。できれば若くして転生できないかな?」
「できます、そんなの簡単ですよ。イケメンにもできるし、種族も変更できます。それと、性別の変更もできます」
俺は残念女神の頭にチョップした。
「おまえ、それは最初に言え!!」
「えぐっ、ずみません」
「転生先の成人年齢はいくつだ?」
「国や種族にも変わりますが、人族だったらだいたい18歳ですね」
「そうか。あまり若いと舐められそうだから、27歳にしてくれ、それとちょっとイケメンにもしてくれ」
そんな俺を残念女神は、じと目で見る。
「まぁ、いいでしょ。色々と教えてもらったから、27歳のイケメンにしておきますね。容姿はここでは確認できないので、転生先で確認してください」
「いよいよ転生先である異世界に行くのか。いいぞ、やってくれ」
俺は再び目の眩むような光に包まれた。
◇
気が付くと、俺はログハウスのような家でベッドに横たわっている。
家の中を見回すと、以前軽井沢に旅行したときのコテージのような感じの部屋だ。
「……ここが異世界か」
俺はベッドから出て扉を開けると、外の風景は森に囲まれており、家の周りにはサッカーでもできそうな広い庭があった。
外に出ると森の空気が清々しい。
俺は空気を胸いっぱいに吸い込んで、今後の予定順を考える。まぁ、会社での優先順を付けて作業していたから慣れたものだ。
うーん。とりあえずこんな感じかな。
1番目 この世界の常識について
2番目 戦闘訓練
3番目 魔法訓練
最 後 実践訓練
「おーい、残念女神や、聞こえるかい――」
「はいはい、聞こえてますよ――」
俺も残念女神もお互いに連絡が取れたのでホッとした。
「じゃあ、最初にこの世界のことや常識等が知りたいので、先生を送ってくれ」
「わかりました。最高の先生を用意したわ」
◇
家の中が突如明るく光ったかと思えば、扉から中年で奇麗な女性が現れた。
「私は賢者マーリンです。よろしくね」
「よろしく、俺は。えーと。あれ、名前を思い出せない……」
「ふふふ、名前を思い出せないのですね。それなら私がつけてあげましょう。そうですねぇー、黒い髪に黒い瞳はこの世界では珍しい。そこで、ノワールはどうですか?」
うーん、なんか気になるな……
昔読んだ本でアーサー王物語に魔術師マーリンがいるし、黒はフランス語でノワールって言ったよな。
「マーリンさんも転生者!?」
「鋭いですね。そうですよ。私は300年前に転生したのよ」
「そうですか。大先輩ですね。なんだか親近感が持てて安心しました。改めましてよろしくお願いします」
俺は、これから賢者マーリンより常識として日常生活、クラス、スキル、職業、種族、貨幣、貴族や奴隷制度、歴史等を教わる。
◇
さて、二日目の朝、俺は初めて鏡で自分を見ると、そこにはイケメンの俺がいた。
「おお、いい感じだな」
マーリンさんから教えてもらったのが、水道やトイレ等は魔石が媒体となる魔導具により使用できるようになっており、前世よりは使い勝手が悪いけど慣れれば問題ないだろう。
ちなみに食事は西洋料理のような感じでマーリンさんが作ってくれたが、これがうまかった。飯がうまいのはいいことだ。
そんな感じで、時が過ぎマーリンさんによる授業は終わった。
マーリンさんは来た時と同じように扉から家の中に入ると、当然明るく光りマーリンさんの姿はどこにもなかった。
さよならの言葉はなしか、なんか寂しいな。
その夜、俺は明日からの戦闘について考える。
「ステータスオープン」
おお、マーリンさんが言ったように、ステータス画面が目の前にポップアップした。
種族 人間
性別 男
年齢 27
クラス
第一 ー レベル ー
第二 ー レベル ー
第三 ー レベル ー
スキル
鑑定、マッピング、全言語理解、アイテムボックス、ステータス隠蔽
調理 D
これは本当にゲームの世界だな。
この調理Dは毎晩マーリンさんに料理を教わっていたからランクが上がったのだろう。
さて、明日に備えてマーリンさんから教えて貰ったクラスで、第一:戦士、第二:拳闘士、第三:狩人に設定してみる。
まだ、俺はレベル1だからF~SSSランクで言うと当然最低のFランクだが、3個のクラスのステータスが合算された場合、どのように反映されるか不明だ。
色々と調べたいが、俺はマーリンさんが作り置きしてくれた夕食を食べ、明日に備えて寝るのであった。
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