第28話 お祭りとクレープ
俺は町に帰ると、冒険者ギルドに向かった。
今日は、受付カウンターではなく、素材の引き渡しカウンターに行き、ダンジョン内でドロップしたアイテムや素材などを換金するためだ。
受付のシャルアさんと目があったが、俺が引き渡しカウンターに行くとシャルアさんは察して慌てて目を反らす。
そういえば、初めて換金した時、シャルアさんがやってくれたが、シャルアさんは計算が苦手なので混乱していたな。
今日は大量にあるので、俺も察してシャルアさんには声を掛けなかったが、案の定引き渡しカウンターの職員は応援も呼んで処理していたよ。
そして、職員からは嫌味を言われる。
「数回に分けて出せよ」
「素材を100個単位で換金とかありえないよな」
色々と愚痴が出ていたが、後ろのカウンターではシャルアさんが苦笑いしている。
2時間を要して換金した結果は、ミスリル貨1枚、金貨32枚、大銀貨6枚と大金を手にすることができた。
その後、カザト邸に行くと珍しくソアラちゃんが出迎えてくれたが、そこにはセーラさんもいたのだ。
「なぜ、セーラさんがここに?」
俺の問いかけにソアラちゃんが答えてくれた。
「はい、実は明日からお祭りがあって、教会の人達と一緒に出店を出すことになっているの。出し物はお菓子なのですが、未だどんな物を出したら良いか決まっていなくて……」
「そうか、ケーキとかは?」
「ケーキだと手が込んでいて数が出せないのです。できればもっと気軽に作れて歩きながらでも食べられるような物がないかと。クッキーとかは普通なので、変わったものがないかと考えているのですが…… 」
「それならクレープはどうだ?」
「クレープですか? 聞いたことがないのですが、どのような食べ物でしょうか?」
俺がクレープについて説明したが、今ひとつピンとこないセーラさんとソアラちゃん。
ここは俺が作ってみるか。
「ソアラちゃん、小麦粉、バター、生クリームとチョコレート、果物などを用意してくれ」
ソアラちゃんやセーラさんが材料を用意している間に、俺は円形上の鉄板と手ごろな木材から魔法で加工したトンボを用意した。
鉄板の過熱には、携帯調理器具の魔石コンロが丁度使えた。
「よし、これで作れるぞ」
生地を焼いて、その上に生クリーム、チョコレート、果物等をのせてから巻いて紙で包めば出来上がりだ。
初めにソアラちゃんがパクリを食べる。
「なによこれ!? 美味しい―― これで出店の商品が決まったわ」
クレープの良いところは直ぐに生地が焼けるし、紙で包んでいるので歩きながらでも食べられることだ。
直ぐにセーラさんの分も作って渡す。
「美味しい―― 私にも作り方を教えてください。子供達にも食べさせたいです」
声と匂いに釣られてきたカザトさんとシェリーさんが来たので二人にも振る舞う。
「ノワールさん、これ美味しいわ」
満面の笑みで食べるシェリーさん、カザトさんは無言で食べている。
「ノワールさん、これは何と言う食べ物ですが?」
「クレープです」
しばらく、カザトさんは考え込む。
「このクレープですが、私の知る限りでは新レシピになる食べ物だと思います。そこで、クレープのレシピを調理ギルドに登録したいのですが、構いませんか?」
「いいですよ」
「それでは新レシピで登録できれば、カイトと同じように販売権を登録しておきます」
「お願いします」
まさか、クレープを作っただけなのに、また販売権の話になってしまうなんて予想外だったな。きっと、調理ギルド長から呼び出されるから、面倒にならなければ良いのだが。
早速身支度して調理ギルドに向かうカザトさん、相変わらず商魂が逞しい。
「ソアラちゃん、アイスクリームは知っているか?」
「はい、冷たい氷菓子ですね」
「クレープにアイスクリームを入れると、また旨い」
「そうなのですか? とっても楽しみですわ。ノワールさん、調理道具と材料を調達したいのですが、一緒に来て頂けると助かります」
「いいぞ、それに明日はクレープを作るのを手伝うぞ」
「ありがとうございます」
俺にお礼を言うソアラちゃんとセーラさん。
俺達は明日の準備のため市場へ出かけるのであった。
翌日のお祭りでの出店はクレープが大盛況で、あっと言う間に材料が無くなってしまったので、買い足しても売り切れになってしまった。
クレープを食べた人達から今度はどこで売るのかと聞かれたので、思い付きで教会前の広場に出店を出すと言ってしまった。
「セーラさん。すまない。思い付きで教会前の広場に出店を出すと言ってしまった」
「いいですよ。でも、どうやって商売していけばよいのか、良くわからなくて困っています」
「ソアラちゃん、カザトさんに協力して貰って出店を出せないだろうか。それに教会の人達や仕事がない獣人の人達にも手伝ってもらって、何件か出店を出せるまでソアラちゃんも手伝ってくれないか?」
「教会や獣人の人達の人助けになることですので、喜んでお手伝いしますわ」
「助かるよ。こんなことを頼めるのはソアラちゃんしかいないから」
俺がそう言うとソアラちゃんとセーラさんが手を握り合って
「一緒にがんばっていきましょうね」
とお互いを励まし合っていた。
俺はカザト邸に戻ると、早速カザトさんにクレープの好評だったことと、出店について話す。
「そう言うことならば、マラッカス商会が全面的にバックアップしましょう。それに、クレープですが、やはり新レシピになりそうです。明日、調理ギルド長がクレープを試食して判断しますので、ノワールさんも同席して下さい」
「わかりました」
うん、やっぱり調理ギルド長から呼び出されて面倒な話になってきたぞ。
まぁ、やり手のカザトさんがいるので、何かあったら任せよう。
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