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第141話 ジメント商会マケド

「参った」

「それまで!! ノワール、ルミアの勝ち」


 ナデアさんの宣言で模擬戦は俺達の勝ちとなった。


「うおお、俺は感動したぞ」

「両者とも凄い模擬戦だったぜ」


 観戦していた村人達から歓声と拍手が送られる。


「いてて、ユニム、大丈夫か?」

「うん、僕は大丈夫、ブルスは?」

「全身が痛いが大丈夫だ。それにしてもあの人達は強いな」

「うん、完敗だよ」


「ブルス、やっと飛竜と心が通じたようだね」

「えっ」


 ナデアさんの声にブルスが驚く。


「……ユニムの言っていることがわかる」

「なぜ、お前がユニムの声が聞こえたか教えてやろう。お前が相棒と呼び、ユニムがそれに応えたからだ。模擬戦前のお前はユニムを眷属扱いしていなかったか? それでは飛竜との信頼関係は生まれず声も聞こえない」


「確かにそうだ……」

「やっと、目が覚めたようだね」


「ユニム、今まで、すまなかった。こんな俺でも一緒にいてくれるか?」

「うん、今日、僕がやられている時に助けを呼んだらブルスが助けてくれた。昔、ブルスに戻って僕は本当に嬉しいよ。これからもよろしくね」


 周りで聞いていた村人達はユニムの声は聞こえないが、二人のやり取りを見ていて感動しているようだ。


「ナデアさん、いや、師匠。今までの無礼は申し訳なかった。俺は心を入れ換えた。頼む、俺をもう一度鍛え直してやってくれ」


 ブルスはナデアさんに土下座する。


「良い根性だね。全く手間のかかる弟子だよ。だが、今までのことを反省しなればならない。グロービスの冒険者ギルドから私にギルドに移籍してもらうよ。それもSランクで返上してFランクからやり直しだよ。しっかり鍛えてやるから覚悟しな」

「わかりました」


 村人達から惜しみない拍手が起きる。


 その中にマネジの怒号が響く。


「ふざけるな!! 何を勝手に決めている。ブルス、お前は私の推挙があったからSランクになったのだぞ。一体、いくらかかったと思っている。ミスリル貨で30枚だぞ」

「それはお互い様だ。俺はお前の依頼をいくつも受け、お前はその利益を自分の懐に入れているだろう」

「ふん、それでも足りないか。そうだ、お前の装備を私に返せ。Fランクの冒険者には必要なかろう。まぁ、装備に固執しているお前には無理か」


 ブルスとユニムは装備を脱ぎ、マネジの前に置く。


「わかった。装備は返そう。これでいいな」

「良い訳がなかろう。お前のお陰で私の計画が台無しだ。そうだ、迷惑料としてミスリル貨20枚だ。用意できなければ農場の権利は私が譲り受ける」


 無茶苦茶だ。

 ブルスとユニムは模擬戦で俺達に敗れているので、そもそも農場の権利はない。それをよこせと言うのは道理が成り立たない。


 そろそろ俺は切れそうだ。いや、横にいるルミアが切れる寸前だ。


「マネジ、いい加減にせんか!!」


 一人の男性がマネジに言う。その声は威厳があり只者でないことが伺える。


「誰だ!! 私に指図するヤツは?」

「私の声を忘れたのか?」

「ま、まさか、マケド様」


「お前は一体ここで何をやっているのだ!! 私が村人達から聞いた話では、我が商会の商品を通常の三倍で売り、金を払えない者には高利で借金をさせ、挙句の果てには店や土地を巻き上げることなど言語道断だ。私から手紙をなんと心得る」

「旦那様、これには深い訳がありまして」


「五月蠅い。それにポテチなる商品を無断で販売して食中毒を発生させたことは許し難い。マラッカス商会から手紙を受けたった時は、お前に限ってまさかと思ったが真実だったとは… よくも私の顔に泥を塗りおったな」

「それは誤解です」


「ならばこれは何だ?」


 マケドさんは懐から書類を取り出しマネジに見せる。


「お前の字だな。この帳簿を見れば一目瞭然だ」

「そ、それは偽物です。旦那様、騙されてはなりません」


 マケドさんは大きなため息をつくと、俺とルミアの前に来て跪く。


「マネジの非礼をお詫び申し上げます。全ての責任はジメント商会の店主である私にあります」

「旦那様、どうしたのですか? この二人に跪くなど必要がありません」


「無礼者!! このお方は身分を隠しているのだ。どうか、お二人の身分を明かすことをお許し願います。この愚か者は、そうしないと目を覚まさないでしょう」


 マケドは俺を見上げ許可を願うので、俺は頷く。


「このお二人は、レアランド領主ラムズ侯爵のご子息であるノワール子爵とご令嬢であるルミア子爵である。今までお前がやってきたことはお二人に対する不敬罪で死罪に当たる。さぁ、正直に申せ」

「ま、まさか、子爵様だったとは…… 全ては旦那様の言う通りです。申し訳ございません」


 マネジは俺とルミアに土下座して許しを請う。


「ノワール子爵、ルミア子爵、どうかこの者の罪をお許し願います。この者によって迷惑を被った村人の方には全て私が賠償します。マネジは使用人として私が監督して鍛え直します」

「マケドさん、貴方の誠意は受け取りました。どうか、跪かないで立ち上がってください」


「お許しになられるのですか?」

「そうです。但し、今後は子爵と呼ばないで下さい。なんだか、恥ずかしい」

「ははは、わかりました。しかし、貴族の権威を振りかざさないとは変わったお人だ」

「ははは、よく言われます」



 しばらくの間は、竜騎士のことやジメント商会のことで村中が騒がしくなっていたが、

 ブルスは冒険者ギルドで働きながら修行を行い、マケドさんは約束通りに村人達に手厚い賠償をしてくれた。


 農場の作物は予想以上に収穫できたので、その他の作物を育てる予定だ。それに、農作物以外に肉や素材等も冒険者達から供給され、雑貨類はジメント商会やマラッカス商会から供給される。


 ここに最初に来た時と比べると格段に豊かになってきており、人口も倍以上に増えたのでカルシャさん達は未だ残っており、新しい住居や施設を建てるのに大忙しだ。


「そう言えばノワールさん、マネジが作ったポテチは、なぜ食中毒が発生したのでしょうか? 」

「マスターは料理人だから知っていると思うが、ジャガイモの芽には毒がある。マネジはそのことを知らず、調理したからだ。きって、自分が仕入れたジャガイモは輸送中に発芽して毒があることを知らなかったのだろう」

「生兵法は大怪我の基とはよく言ったものですね」


 俺はポテチと冷えたエールを飲みながらポテチを食べる。旨い!!


「そうだ、マスター。これを受け取ってくれ」


 俺は紙をマスターに渡す。


「これはポテチの販売権ではないですか?」

「そうだ。マスターには今まで村人達が世話になっているからそのお礼です」


 マスターは初め受け取るのを拒否していたが、食堂の改装費用やこれからも困った村人達に食事を提供してもらうことで受け取ってもらった。


 さて、この町はもう大丈夫だろう。

誤字報告を頂きまして誠にありがとうございます。

お陰様でこの章を終わらすことができました。



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