第138話 用心棒の先生
「ごめんなさい。あの食堂で食べたポテチが美味しかったので、内緒で別の所でも買ったの」
「それはどこだ?」
「ジメント商会の雑貨屋で買ったわ」
「すまなかった。俺の勘違いで大変な迷惑を掛けてしまった。本当に申し訳ない」
冒険者達は俺達にひたすら謝る。
「助けて貰った私達はどうすれば許されるでしょうか? やっぱり、お金ですか……」
「金は要らない。その代わりにジメント商会から買ったポテチを食べて具合が悪くなったことを証言してくれればいい」
「わかりました。証言します」
その後、どうように食堂にはポテチを食べて具合が悪くなった人達が訪ねてきたので同様に治療してから改めて買った場所を聞くとやはりメント商会の雑貨屋だった。
◇
「ノワールさん、大変です。農場でトラブルが起きて助けてください」
農業の作業員が必死の様子だったので、俺とルミアは急いで農場へ向かう。
ん? あれは飛竜か?
男と従業員達が言い争っている。
「ノワールさん、良い所に来てくれました」
「なんだお前は? この農場の責任者か」
ナデアさんの飛竜と比べると随分と小さいな。それにこの男は竜騎士のようだが、闘気や龍気が良く練れていなし、もっと修行が必要だ。
「責任者はナデアさんだが、お前こそ誰だ?」
「お前は俺の名前を知らないのか? 俺は竜騎士のブルスだ」
「そうか、俺はノワール、こっちはルミアでBランクの冒険者だ」
「はぁ、Bランクの冒険者がSランクの竜騎士様に対等な口を聞いているんじゃねぇ。誰の許可を得てここに農場を作っている。所詮、無許可だろう。今日から俺様が責任者として管理してやるから有難く思え。それに全ての商品はジメント商会を受け持つことになっているから、よそ者は手を出すな」
ブルスが後にいるマネジを見て頷く。
こいつら完全にグルだな。
さて、どうしたものかな。
「許可なら領主から土地を買った際に得ている。この土地の権利書に書いてあるだろ」
「見せてみろ」
俺から権利書を奪い取ってブルスが確認する。
「最後の使用用途が農場になっているだろ」
「ふっ、こんなものはどうせ偽物だ。俺は認めない」
ブルスはそう言うと、なんと権利書を破ってから俺に投げるように返す。
「貴方、それは公式な文書です。調停式で訴訟を起こされれば罪になりますよ」
「五月蠅い女だ。俺はSランク者だから罪には問われない」
なんてヤツだ。全くこっちの言うことに耳を貸さない。
「農場は俺が管理してやるし、商品はジメント商会が扱った物しか認めない」
ブルスのあまりの横暴に村人が言い返す。
「ブルス。お前はナデアさんのお陰で竜騎士になれたのに恩を仇で返すのか」
「はぁ? 今更、脚の怪我した老いぼれ婆と飛竜に何ができる。あの婆は俺をいつ迄たってもSランクと認めなかった。だから、俺はここを出てグロービスのジメント商会が支援している冒険者ギルドに移籍した。あっさりとギルドマスターはSランクの申請を教会に申請して受理されたぜ。あの婆は、自分の脚が自由に動かないことを妬んで俺をSランクに推挙しなかったのだ。ふざけた婆だぜ」
「お前は知らないのか? そこにいるノワールさんとルミアさんのお陰でナデアさんの右脚は完治したぞ。今のお前の姿を見たら悲しむぞ」
「平民の分際でSランク者に指図するな。いいか、Sランク者は男爵と同様な身分を与えられているので俺様は貴族だ。貴族に対して無礼なヤツめ。ユニム、こいつらの畑をブレスで焼き払え」
『キュ?』――「えっ」
ブルスに命令された飛竜のユニムは、雄叫びを上げると龍気を貯めてブレスを吐こうとする。
「ルミア」
「ええ、わかっているわ」
俺とルミアはユニムの前に立ちはだかると、既に練っていた龍気により【威圧】する。
『キュウ……』――「この人達は怖い」
俺とルミアの威圧によって、すっかり畏怖したユニムは翼と尻尾を丸めて縮こまってしまった。
当然の結果だ。龍神と水龍神の加護を受けている俺達の龍気を受けて飛竜が怯まないわけがない。
「どうした、ユニム? さっさとこいつらの頭上を越えてブレスを吐け!!」
『キュウ……』――「無理だよ」
「おい、相棒の飛竜が嫌がっているだろ」
「五月蠅い。竜騎士の俺だってわからないのに、お前達に飛竜の言葉などわかるものか」
こいつは駄目だ。口で言っても今の状態では理解することはできないだろう。面倒だが、こいつをこのまま野放しにすることはできない。
「さっきから聞いていれば、竜騎士だとかSランク者とか言っているが、飛竜に命令するだけで自分では何もできないのか?」
「なんだと!!」
「俺達と模擬戦を戦ってお前が勝ったら農場の権利やジメント商会から商品を買っていいぞ。但し、お前が負けた場合はナデアさんに謝って、もう一度修行をやり直せ。飛竜の言葉もわからないお前は未熟者だ」
「俺よりも年下のくせに生意気なヤツめ。俺が未熟者かどうか思い知らせてやる」
俺の挑発に簡単に乗ってくるとは単純なヤツめ。
「ここでは農場に被害がでる。冒険者ギルドの訓練所へ場所を移すぞ」
「はぁ、冒険者ギルドだと? ここに出来たのか」
「ああ、ナデアさんがギルドマスターをやっている」
「なんだって? 俺を嵌めるつもりか」
「今更Sランクの竜騎士様が何をビビっている」
「ビビッているか!! さっさと案内しろ」
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