第135話 ポテチ
「あれ、ノワールさん、ナデアさんと一緒にスタンドロック山脈に行ったのではないですか?」
「今、戻って来たところだ」
食堂で夕食を食べていた俺達を見つけた村人が話し掛けてくる。
「え!? まだ、一日しか経っていません。スタンドロック山脈は馬車で二日はかかる場所です」
「まぁ、安心してくれ。飛竜の傷は治すことはできたから。ナデアさんは飛竜ともう少し一緒にいたいので、まだ残るそうだ」
「それは良かったです」
後からワーク達も来たのでナデアさんと飛竜のことを話す。
「ノワールさん、ルミアさん。お疲れ様でした。さぁ、今日はゆっくりと休んでください」
「そうですよ。それと農場と冒険者ギルドは順調です。あと、二週間もすれば収穫もできるし、冒険者ギルドも開設できるでしょう」
それから三日間が過ぎると、ナデアさんが飛竜のチュリに乗って飛竜の里に戻ってきた。
久しぶりに飛竜が里にやって来たので村人達は大喜びだ。なんでも里に飛竜がやって来ることは、里が水神様の加護を受けている証だそうだ。
「ノワールさん、ルミアさん。やっと私は飛竜の里に戻って来ることが出来ました。本当にありがとうございます」
「良かったな」
俺とチュリが話しているとワークが驚く。
「ノワールさん、飛竜と話せるのですか? 俺には何を言っているのかわかりません」
「ああ、話せるぞ」
「驚いた。ノワールさんは、何でもありですね」
「そんなこと言うなよ」
「ハハハ」
俺とワークが冗談を言い合っていると、ナデアさんが話す。
「ノワール、時間を取らせたようだね。私とチュリのことはもう大丈夫だ。さぁ、これから忙しくなるよ。農場はそろそろ収穫時期だ。人手はいくらあっても足りないくらいだよ」
そう言うとナデアさんは村人やワーク達に指示を出し、ルミアを連れて冒険者ギルドの方に向かって行ってしまった。
俺は村人やワーク達と一緒に農場へ向かう。
「ノワールさん、見てください。ジャガイモ、ニンジン、キャベツがこんなにも大きく育つなんて信じられない。それに、既に収穫できるものをあります」
「そうですわ。ニンジンは非常に甘く、キャベツはとてもみずみずしいのです。この不毛の地でこれほど作物が育つとは思いませんでした」
良い感じだ。土壌の改良は腐葉土によって上手く出来たし、鳥害もカイトによって被害がないようだ。それと、ボアやレッドバード以外に時々グレートボアも出るがワーク達であれば問題なく討伐できるだろう。
「しかし、ジャガイモは良く育っているのですが人気がなく安い値段でしか売れないのです」
「それならば売れるようにするだけさ」
俺には考えがある。それは人気のお菓子だ。
俺はジャガイモを薄くスライスして油で揚げ、バッカル湖の塩やバッカル湖の海苔、それとコンソメスープを粉にした物を振りかける。
そう、これはポテトチップスの塩、海苔塩、コンソメ味だ。
「さぁ、できたぞ。食べて見てくれ」
「旨い!! このパリパリ感が堪らないな」
「ああ、いけるな。俺は海苔塩が好きだな」
「あら、私はコンソメよ」
「ノワールさん、この食べ物の名前は何でしょうか?」
「これはポテチだよ」
「これなら里の名物になるぞ。それに冷めても美味しいところがいい」
村人達の評判も上々だ。
農作業を終え、食堂に戻るとマスターにポテチのレシピを伝授する。
「マスター、これで作り方はわかったよな。もうしばらくするとナデアさん達も戻ってくるので多めに作っておいてくれ。しばらく、俺は用事でいなくなるので頼んだぞ」
「わかりました」
◇
俺はテレポートでコートダールの調理ギルドに行き、ギルド長であるメルクさんにポテチのレシピ登録と販売権の申請を依頼した。合同結婚式でお世話になっていたので、ギルド長の特権で今日にでも申請してくれるそうだ。
次はカザトさんの屋敷に向かう。
いつもの様にジェフさんが迎え入れてくれた。
「お久しぶりです、ノワールさん、元気そうで何よりです」
「久しぶりです。皆さん元気ですか?」
「シュリーを見てください、」
俺はカザトさんに言われた方を見ると、シェリーさんが赤ん坊を抱えている。
「生まれたのですか!!」
「はい、元気な男の子です」
無事に生まれて良かった。うん、幸せそうで良かった。
「つい、子供が生まれたことが嬉しくて。ノワールさん、今日は何の御用でしょうか?」
俺はカザトさんに飛竜の里のことやジメント商会について話した。
「わかりました。私も飛竜の里の発展に協力しましょう。直ぐに従業員を手配して飛竜の里へ向かわせます。それにしてもジメント商会の話は信じられません。店主のマケドさんとは何回か会っていますが、とても人格のある方で飛竜の里に村人を犠牲して町を発展させる人物ではありません。私が確認してみましょう」
「助かります。それと冒険者ギルドを新設したので雑貨屋を併設するので、テントやポーション等を用意して欲しいです」
「流石はノワールさん、良い所に目を付けました。必ず需要があるでしょう。直ぐ用意できる商店に紹介状を書きます」
俺はカザトさんに礼を言うと、商会して貰った商店で冒険者の必需品であるアイテムを購入した。
◇
結構時間がかかってしまったな。食堂に戻った時にはすっかり夕食時になっていたが、いつもより騒がしい。
「よこしな、カルシャ」
「渡しませんよ。さっき、ナデアさんは自分の分を食べたではありませんか」
「少しは年寄りを労わる気持ちはないのかね」
「都合が良い時だけ年寄りにならないで下さい」
何事かと思い見ると、ナデアさんとカルシャさんがポテチを奪い合っていた。
はぁ― やれやれ。それにしても流石はルミア。上手く気配を消してポテチを確保している。
「あっ、ノワールさん、良い所に来ました。もう、ポテチが大盛況で、特に女性陣が大変なのです」
「マスター、大変だったな」
「ナデアさん、俺が持っている分をあげますから落ち着いてください」
「そうかい、流石はノワールだ」
そう言うとナデアは光の速さで俺が持っていたポテチを奪い食べ始めると、ようやく落ち着いたようだ。
もしよろしければブックマークへの登録、評価をよろしくお願いします。
評価は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
簡単ですので、面白くなければ☆1、面白ければ☆5等を是非とも
よろしくお願いします。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。