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第123話 里の村人

 今日の夕食は最終日なので盛大に料理を作ったぞ。さて、これから皆で食べようかと思っていると、森の中から人の気配を感じる。


『うぉぉ――』


 雄叫びと共に殺気立った十数人の人達が武器を持って現れる。


「俺達は飛竜の里で農業や商売していた者達だ。しかし、この馬車に乗っているジメント商会により地上げや買い占めで苦しめられ盗賊でもしなければ生きていけない」

「生きるためだ。悪いが、お前達の食料や金は貰っていくぞ」


 村人達は武器を持ってこちらを威嚇するが、俺にとっては全く脅威が感じられない。


【スキル 威圧】


 俺は威圧スキルを使うと村人達は怯む。


「落ち着け。色々事情はあるようだが、素直に渡すわけにはいかない」


 様子を見ていたマネジが、馬車の窓から顔を出す。


「何がジメント商会の原因だ。そうなったのは全てお前達の責任だ。ここにいる護衛は、三日前にウルフの群れを討伐した者達だ。さぁ、覚悟しろ!!」


 その言葉を聞いて、村人達が戸惑っている隙に、俺はネックレスを使ってルミアにやられた振りをするように合図する。


 俺は村人の方に歩きながら近づいて行くと、一人の村人が俺に向かって剣を振りかざしてくる。


「くそっ、すまない」


『ガキッ』


 村人の剣は俺の右腕に当たると、当たった衝撃で村人が剣を落とす。――同時に、俺は演技する。


「ぐぉぉ―― や・ら・れ・た」


 呆気に取れる村人に対して、今度はルミアが仕掛ける。

 戸惑いながら村人が剣を振るいルミアの左腕に当たり、また村人が剣を落とす。


「きゃ―― や・ら・れ・た・わ」


 俺達はやられた振りをすると、村人達は呆然とする。


「敵わない。もう、駄目だ。命だけは勘弁してくれ。その代わりこの料理や食料を持っていってくれ」


 村人達が俺達の言うことに訳がわからず村人達が呆然としている間に、俺とルミアはワーク達や馬車の人達に説明する。


「さぁ、ここにある料理を持っていってくれ。何、未だ足りないだと? それならこの食料もだ」

「いや、その…… 俺達は……」


 村人達は戸惑っているが、俺とルミアはワーク達や馬車の人達に手伝ってもらいながら、料理やアイテムボックスにある食材を村人にどんどん渡していく。


 十数人の村人は持ちきれないくらいの料理や食材を渡し、皆には気が付かれないようにそれぞれに金貨三枚も入れておいた。


「さぁ、これで満足だろう」

「俺達は、あんたが何をしたいのかわからないが恩に着るぜ」


 そう言い残すと村人達は森の中に消えて行くのであった。


 馬車の窓から怯えながら様子を窺っていたマネジだが、村人達が帰って行くのを見ると静かに窓を閉め馬車の中に閉じこもった。


 村人達がいなくなったことを確認すると、俺は皆に言う。



「実はまだ食材が沢山あるから作るぞ。皆手伝ってくれ」

「はぁ? どれだけ持っている? 変な人だ」


 馬車の人達には少し引かれたよ…… 


 それから俺達は皆で作った料理を食べ終えると、それぞれのテントに入り寝るのであった。


「ねぇ、あなた。さっきの村の人達は大丈夫かな?」

「かなり切羽詰まっていたようだな。実は村の人達には金貨三枚を渡したから当分は大丈夫だろう」

「流石はあなたね。でも、いずれは同じようなことになるから、なんとかしてあげたいわ」

「そうだな。飛竜の里に着いたら早速ジメント商会について調べてみよう」



 ◇



 翌朝、馬車が飛竜の里に着くと衛兵達に向かってマネジが騒ぎ立てている。


「昨日の夜、街道の宿場で盗賊に襲われた。お前達の警備はどうなっている? それに、盗賊はここの村人だ!! 直ちに捕まえろ」

「本当か? 村人の顔や名前を憶えているか? それと負傷者や金品の被害はあるのか?」


「顔を布で覆っていたからわからん。だが、料理や食材を奪われた」

「それはお前のものか? 被害額は?」

「いや、その、向こうの冒険者達の物だ」


「お前は盗賊に襲われたと言っているが、向こうの冒険者達が襲われてお前自身は襲われていないのだな」


 年老いた近衛兵は苛立ちながら強い口調でマネジに問い詰める。


「そ、そうです」

「紛らわしいヤツだ。襲われていないのならそっさと行け!!」


 足早にマネジを乗せた馬車は、飛竜の里に入っていく。

 次に年老いた近衛兵は、俺達が乗っている馬車に向かって近づいてくる。


「盗賊に襲われたのは本当か?」

「ああ、襲われたが問題ない。負傷者なく、奪われた物はいらない物だったので被害はない」

「盗賊に襲われたのに被害がないとは怪しいな。身分証明書を見せろ」


 俺がギルドカードを見せると年老いた近衛兵の顔色が変わる。


「Bランクの冒険者とは知らず失礼いたしました。でも、盗賊に襲われて被害がないとは信じがたいのですが……」

「被害がないと言っているのだ。それとも俺が嘘をついていると言っているのか?」

「わかりました」


 年老いた近衛兵は何か言いたそうではあったが引き下がり、俺達の馬車は無事に飛竜の里に入る。


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