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第122話 ジメント商会

「おい、そんな商人に頭など下げるな。黙っていて悪かった。俺達がBランクの冒険者だ」

「お前はマキシマムポーションを持っているのか?」

「マキシマムポーションより確実は方法がある。俺達に任せろ」


「ふんっ、また冒険者か。勝手にしろ」


『バン』


 馬車の窓が勢いよく閉まる。


 俺は男を連れてクカナさんの所へ向かう。


「ルミア、傷の具合はどうだ?」 

「ふくらはぎの部位損失ね」

「一気に治すぞ」

「えっ!」


 クカナさんは俺とルミアを見て戸惑っているようだが、俺達は魔法を唱える。


【マキシマムクリ―ン】

【マキシマムキュア】

【マキシマムヒ―ル】

【マキシマムエナジ―】


 俺とルミアは交互に魔法を唱えると、クナカさんの右脚が優しい光に包まれ、ふくらはぎの傷を再生していく。クナカさんの顔色も頬に赤みを帯び、右脚の傷は綺麗に無くなった。


「あなた、やったわ。女性だから傷を残さないようにしたけど完璧よ」


 先にハイヒールを唱えた女性が驚く。


「……す、凄いわ。上級魔法のマキシマム系を無詠唱で、しかも連続で唱えるなんて」


 クカナさんは右脚を確かめながら立ち上がり歩き始める。


「全く違和感がないわ」


『パチパチパチ』


 周りで見ていた人達からも拍手が沸き上がる。


 その様子を見ていた男が、俺達にお辞儀する。


「仲間を助けてくれてありがとう。俺は貿易都市グロービスの冒険者ギルドに登録している暁の剣のリーダーでワークだ。飛竜の里に着いたら礼をさせてくれ」

「私はクカナです。もう、普通に歩くことを諦めていました。本当にありがとうございます」


「俺はノワール、それと妻のルミアだ。俺達が勝手にやったことだから礼はいらないぞ」

「いや、それでは冒険者の仁義に反する」

「わかった。それなら、ウルフの回収を手伝ってくれ」

「ふっ、普通は金や装備品等を要求するものだが、お前は変わったヤツだな。喜んで手伝うよ」


 俺は皆にわからないようにアイテムボックスにウルフを収納して素材を振り分ける。結構、ウルフの肉は野性味があって美味しいのだ。



 ◇



 翌日、馬車は宿場に着いたが、整備された空き地があり誰もいない所だった。


 待てよ、よく見ると魔よけの魔導具があり、セーフティーエリアになっているようだ。


 馬車に乗っていた人達は、ここがセーフティーエリアだと知っているようで、それぞれテントを設置する。俺達もテントを設置して夕食の準備を始めることにした。


 俺とルミアはウルフの肉と野菜を串に挟み調理する。辺りには、肉が焼ける香ばしい匂いが漂い、馬車に乗っていた人達が集まってくる。


「美味しそうだな。余っていたら、売ってくれないか?」

「たくさんあるから金はいらないぞ。ほら、焼けたぞ」


 集まって来た人達にBBQを振る舞っていると、あの意地の悪い商人が話してくる。


「おい、そこの冒険者よ。私にもその串焼きをくれ」

「はぁ? お前に食わせる串焼きはない!」


 俺が強く言うと商人が顔を赤くして言う。


「なに! ただの冒険者がなにを言う。私は貿易都市グロービスのジメント商会で番頭を任されているマネジだ。金を払うからさっさとよこせ」

「そうか。俺達はBランクの冒険者だ。ギルド協定により優遇されている立場だ。それはお前もわかっているだろ?」


「そんなことは知っている。お前は、ジメント商会を知らないのか?」

「知っていても関係ない。お前は怪我したクナカさんを助けてくれなかった。この串焼きは俺達が命懸けで得た物だ。お前に売るのであればミスリル貨一枚だ。どうだ格安だろう」


 マネジの顔は益々赤くなる。


「ふざけるな!! 串焼きひとつにミスリル貨一枚だと。冒険者風情がジメント商会を敵に回してタタで済むと思うなよ」


 マネジは捨て台詞を吐くと、馬車の中に入り窓を勢い良く閉める。


「なんか、あいつのせいで白けたな。まだ、串焼きもあるし、すき家焼きも作るぞ。それに冷えたエールもあるから皆で楽しもうぜ」


「おお、それは有難い。まさか、定期便で温かい料理が食べられるとは思っていなかったよ」 

「そうだな、それにすき焼きまで食べられるとは夢にまで思っていなかったよ」


 俺達は楽しく夕食をするのであった。


 その後、食事は俺達が調理してみんなに振る舞ったのだが、毎回羨ましそうに馬車の窓を少し開けてこっそりと様子を伺うマネジを見る。素直に謝れば少しばかり分けてもいいが、彼には変なプライドがあるようだ。


 飛竜の里に着くまでの最後の夜に夕食を調理していると、クカナさんがルミアに近づいて来て一緒に調理する。


「ルミアさん。傷を癒してくれて本当にありがとうございます。お陰様で傷跡もないです」

「よかったわね」


「はい。それにしてもルミアさん達は一体何者なのですか? 弓の技術は一流な上に魔法に至ってはマキシマム系の上級治癒魔法を無詠唱で唱えるなんて凄すぎです」

「私達はBランクの冒険者よ」


「……そうですか。私にはBランク以上の冒険者に思えますが、ジメント商会には気を付けてください。貿易都市グロービスでは商人は貴族より大きい顔をしていて、その代表格がジメント商会なのです」

「わかったわ」


 俺も馬車の人達からも聞いたが、貿易都市 グロービスは商いによって成り立っている都市で、そこでは市場を握っている商人が貴族に変わって実権を握っているそうだ。


 ジメント商会は厄介な相手のようだな。


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