第118話 決着
俺達がビスマの所に向かうと、ビスマは品定めするように俺達の装備を見る。
「流石、上級クラス者の装備は素晴らしい。お前達が死んだ後は俺が使ってやる。そうなるとイニスのミスリル装備はいらないから売り飛ばすか」
「おい、装備に目が眩んでいるようではお前の負けだ。それに、身体に悪いから今すぐに魔人化を解除した方がいいぞ」
「俺の身体を心配するなら、今すぐ死ね!!」
【マキシマムファイアボール】
【マキシマムストーンバレッド】
右腕から3m程の火球が俺に向かって放たれ、左腕から5個の大きな岩がルミアに向かって放たれる。
【水柱】
【マキシマムエアーストーム】
俺の忍法とルミアの魔法のより火球と岩が相殺され煙を上がると、ビスマは素早く煙の中から俺達に接近する。
「お前達は魔法に特化しているようだな。それならばこれでどうだ」
【武技 地走り連撃】
イニスに放った時の地走りとは威力が格段に違い、衝撃波は地面を引き裂きながら俺とルミアに向かってくる。
【武技 地走り】
【武技 粉砕拳】
魔法と同じようにビスマが放った武技は、俺達の武技によって相殺される。
「そんな馬鹿な。俺は魔人化によりSランクと同じ実力を手に入れた。それなのにお前達は俺の魔法や武技を相殺できるわけがない」
「おい、今度はこっちからいくぞ」
【忍法の極み 獄炎】
【魔法の極み ダイアモンドダスト】
「くそっ」
【マキシマムウォーターストーム】
【マキシマムファイアウォール】
互いの魔法がぶつかり合うが、ビスマの魔法は押し負けて右側から獄炎、左側からダイアモンドダストを受ける。
「ぐぉぉぉ、なんという威力だ」
【マキシマムヒール】
「どうだ、効いただろ」
「どうやらお前達を侮っていたようだ。これを使うと更に寿命が縮まるが仕方がない」
【スキル 暗黒】
ビスマの身体の周りにはスキル暗黒を発動したことにより闇の闘気に包まれていく。
「終わりだ」
【ダークポイズン】
ビスマが放った魔法による黒い煙が、俺とルミアを包み込む。
「ははは、例え強者でも闇属性の状態異常魔法を受けてはまともに戦うことができないだろう。ダークポイズンは痺れと毒による吐き気や頭痛、それに激しい死への恐怖を与える魔法だ。さぁ、苦しめ」
「ああ、知っているよ。それにこの魔法を俺達には無駄だ」
【エリアキュア】
【ダークポイズン】
俺は状態異常からの回復魔法を唱え、ルミアがビスマに魔法を放つ。
「ぐあぁぁ……」
「ふふふ、苦しんでいるのは貴方の方ね」
【マキシマムキュア】
「うっぅ。お前達、いいかげんしろ。どこまで俺をコケにする」
「もう、降参した方がいいぞ」
俺はビスマに上を見ろと、刀で合図する。
『ド――ン』
俺達の前に空から何かが落ちてきて土煙を巻き上げる。
「ノワール、待たせたな」
「ルミア、私達がいない間フォローしてくれてありがとう」
「なに!? 聖騎士ロイドに弓聖アンナか、馬鹿な早すぎる」
俺とルミアは気付かれないようにネックレスを使ってロイドとアンナに連絡を取っていたのだ。
「ビスマ、俺達が来たからには好き勝手なことをさせない」
「うるさい、こうなったら最後だ。俺と共に果てるがよい」
ビスマは更に魔素を身体に取り込むことを始める。
「させないわ!!」
【弓の極み セイントアロー】
アンナによって放たれた矢は、上空で拡散してビスマを取り囲むように地面に刺さる。
「くっ、これでは身動きができない」
「これで終わりだ!!」
【剣の極み サンクチュアリ】
ロイドが剣を上に掲げ、ビスマの周りにサンクチュアリを展開する。
「ぐぉぉ、魔人化が解けていく…… 苦しい、た、助けてくれ……」
苦しみ悶えるビスマの身体からは、魔素が一気に抜けていく。そして、苦しみから解放されたビスマは、白髪となり顔には無数のしわが現れる。その姿は、父親のルギー侯爵よりも衰えて見える。
ビスマはその場にうずくまって呆然とする。
俺とルミアは周りの安全を確認してから、結界とマジックシールドを解除する。
クリド公爵やメント隊は解除されたことに気が付くと、メント隊はルギー侯爵や傭兵隊を連行して、クリド公爵とメントが俺達の方に来る。
「勝負はついたようだな。メント隊長よ、ビスマを捕縛せよ」
クリド公爵の掛け声によりメントがビスマを連行していく。
「ノワール、ルミア。今回は助かったよ」
「ああ、俺達が勝手にやったことだから気にするな」
「そうだが…… 俺達はクリド公爵の護衛だから面目ない。礼をさせてくれ」
「うーん、それなら後処理を頼むよ。俺達はそういうのは苦手だから」
「わかった」
「ノワール子爵、ルミア子爵。君達がいなければ、この場にいた全員が殺されていただろう。感謝する」
クリド公爵は俺達に向かって頭を下げる。
「ルギー侯爵、どうか頭をお上げください。先程、ロイドとアンナに言ったように俺達が勝手にやったことなので気にしないでください」
「いや、私は気にするぞ。落ち着いたら礼をしたい。それまでは、ホテルを用意するので、ゆっくりと休まれるが良い」
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
ルギー侯爵は頷くと、ロイドとアンナの方に行き何やら話し合っている。それを見ていた、デンケ男爵とイニスが俺達の方に来た。
「ノワール子爵、ルミア子爵。子爵であるとは知らずに大変失礼しました」
デンケ男爵とイニスは俺達に向かって頭を下げる。
「デンケ男爵、どうか頭をお上げください。俺達の方が爵位を明かさなかったのが悪いのです」
「そう言って貰えると助かる。落ち行いたら、是非、屋敷に来てください」
そんなことをしていると、デンケ男爵とイニスはルギー侯爵に呼ばれる。
「ノワールさん、ルミアさん。本当にありがとう――」
イニスは俺達に向かって大きく腕を振り、ルギー侯爵と部屋に入って行くのであった。
「ルミア、ルギー侯爵が用意してくれるホテルは、きっと最高級ホテルだぞ。行こう」
「はい、あなた」
◇
俺の予想通り、ルギー侯爵が用意してくれたホテルは、水の都で一番の高級ホテルだった。俺は、部屋の中でくつろぎながら、今回のことを考える。
それにしても今までは魔族が関係していたが、今回の魔人化は驚いた。
魔人化は、魔道具に納められていた丸薬を飲んで、身体に魔素を無理やり取り込むことで、自分の実力より数段強くなった。今回は力任せの戦いだったので、Aランクのパーティーであれば勝つことは可能だと思うけど、Aランクの実力者が魔人化した場合、一筋縄ではいかないだろう。
まぁ、ロック隊やバイル隊であれば勝てるから大丈夫だと思うが、他の町ではどうだろう。
「あなた、さっきから難しい顔して、何を考えているの?」
「ああ、実は魔人化について考えていた。ルミアは魔人化について聞いたことがあるのか?」
「噂で昔、凶悪な事件が起こした時、犯人が魔人化して暴れたって話を聞いたことがあるわ」
「それで、魔人化になった人について知っている?」
「うーん、暴れた後に死んだことに聞いたけど、どんな人だったのかわからないわ。あっ、もしかしたら、バハムート辺りが知っているかも」
「そうだな、久しぶりにバハムートに会いに行ってみるか」
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