第115話 ルミアの健闘
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現れた男女はルミアの方に歩きながら話し始める。
「姉ちゃん、少々度が過ぎたようだな」
「そうね。どうやら貴方は拳闘士、いえ、あの動きから格闘士のようね」
「だってらどうなの?」
「お姉ちゃんには恨みはないが、俺達は元Bクラスの傭兵だ。悪いが少し痛い目に遭ってもらうからな」
「それは親切にどうも、キャラさんは危ないから下がっていて」
「はい。今、近衛兵を呼びますから気をつけてください」
キャラさんは、従業員に近衛兵を呼んでくるように指示を出す。
「随分と余裕のようだけど、これで終わりよ。大いなる大地の魔素よ、大地の息吹を放ち我が敵を滅ばせ!!」
【ストーンバレッド】
【ストーンバレッド】
「え!?」
女が放ったストーンバレッドを、ルミアは同じストーンバレッドで相殺する。
「無詠唱、あなたは一体?」
「格闘士ではないのか? これでもくらえ」
【地走り】
【粉砕拳】
今度は男が放った武技の地走りを、ルミアは容易に粉砕拳で相殺する。
「……ばかな、元Bクラスである剣闘士と魔導士の俺達を相手に互角だと」
「ふふふ、どうする? 先に手を出してきたのは貴方達よ。誰に雇われたかは知らないけど、公衆の面前では違法行為よ」
「ふん、うるさい。俺達には貴族が付いている。だからこれは違法ではなく、合法になる」
腹パンから回復した男達がルミアを取り囲む。
「これで逃げられないぜ」
「へへへ、借りを返すぜ」
「丁度いい感じにまとまってくれたわ」
【震脚】
ルミアは軽くジャンプして両脚で地面を踏み込むと、周囲に衝撃波が生じて男達を弾き飛ばす。
「うぅぅ…… 強すぎる」
「これは何の騒ぎだ!! 全員、武器を捨て静まれ!!」
従業員が呼んだ近衛兵達が隊を組んでこっちにやって来メントた。
「私は近衛兵隊長メントだ。お前達はここで何をしている」
キャラさんがメントに、これまでのことを説明する。
「事情はよくわかった。そこの剣闘士と魔導士は条例違反だ。近衛所まで来て取り調べを受けて貰うぞ」
「待ってくれ。俺達はルギー侯爵のご子息であるビスマ様に雇われた傭兵だ。先程の女が説明したことは全部嘘だ。向こうが先に手を出してきたから、身の危険を感じて応じた。これは正当防衛だ」
「本当か? ビスマ様に雇われているなら契約カードを見せろ」
メントは契約カードを確認すると、周りの人達から聞き込みをしていた部下達を集める。
「確かにお前達はビスマ様に雇われているようだな。だが、部下が聞き込みした内容では、お前達の方が先に魔法を放ったり武技を放ったそうだな。例え、貴族の関係者であろうと法を犯したことには変わりがない。全員、捕らえて連行しろ」
「馬鹿な、そんなことがあるか。お前はルギー侯爵に逆らうのか?」
「うるさい、さっさと連れて行け」
メントは部下に指示を出すと、ルミアの方に近づき話し掛ける。
「お怪我はありませんでしょうか? 周りで見ていた住民達の証言により、貴方の方が正当防衛でありますので罪は問われません。しかし、こちらも警備上で身分を確認したいのですが良いですか?」
「いいわよ。それにしても貴方は大丈夫? あいつらは貴族の関係者だったみたいけど」
メントは大きくため息をつく。
「また、やってしまいました。多分この件で、また私の昇進が伸びるでしょう。しかし、私は曲がったことをするのであれば昇進なんていりません」
「流石は俺達の隊長だ。まぁ、そのおかけで俺達も昇進が遅れているけどな」
「違いないや、ハハハ」
「メントさん、貴方は素晴らしい。今日のお礼はきっとするわ。カードを見ても恥ずかしいから大声出さないでね」
ルミアは周りの人にわからないように冒険者カードではなく、貴族カードを見せる。
「これは!!」
「大声をださない」
「しかし、これは貴族カードではないですか?」
「そうよ。私はレアランドの領主であるサイド侯爵家の長女ルミア・サイド子爵。もし、この件で困ったことがあれば、私の名前を出してクリド公爵に言いなさい。きっと力になってくれるわ」
「私が領主様に直談判するのですか…… わかりました」
話が終わると、メントは男達を近衛兵所に連行して行くのであった。
「ルミアさん、大丈夫ですか? もう、心配で今でも胸がドキドキしています」
「大丈夫よ。これであいつらは、しばらくは手を出せないはずよ」
「うん、ありがとう」
キャラはルミアにお礼を言うと、周りで見ていた群衆に言う。
「みなさん、これで、厄介な連中はいなくなりました。安心してすき焼きを堪能してください」
「おおお、待ってました」
「これで、腹いっぱいにすき焼きが食えるぞ」
◆
俺が戻ると、豆腐屋は大勢の客で賑わっていた。
「ノワール君、どうだった?」
「ああ、裏帳簿を手に入れることができたぞ。これで、イニスの父であるデンケ男爵の濡れ衣も解決できるだろう」
「良かったわ。それで私の方はね」
俺はルミアから豆腐屋で起こったことやメントのことを聞く。
なるほど、メントは面白そうな人だな。
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