第113話 助っ人参上
俺とルミアは問題が発生している豆腐屋へ向かうと、男達が大声で怒鳴っている。
「おい!! まだ、ここで商売しているのか。この前も言ったが、ここはルギー侯爵のご子息であるビスマ様の土地だ。さっさと明け渡し、迷惑料として豆腐とすき焼きのレシピを渡せ」
「うるさい、ここは私が知り合いから譲り受けた土地だ。ここに権利書だってあるんだ。変な言いがかりは止めな。商売の邪魔だよ」
よかった。キャラさんは元気そうだ。それに、後ろでキャラさんを見守っている人達は、カザトさんが派遣してくれた従業員達だな。
ルギー侯爵? どこかで聞いたような……
「ふん、そんな権利書は偽物だ。こっちにある権利書が本物だ」
「そうだ。姉ちゃん、言うこと聞かないとどうなるかわからないぜ」
男は椅子や机を蹴り、暴れ始める。
「ここも直には客が寄り付かなくなるだろう。いま出て行けば少しくらい金を工面してやっても良いぞ」
「誰が立ち退くかい。それに壊れた椅子や机は弁償して貰うからな」
「なんだと、いい加減に折れないか」
男はキャラさんに詰め寄り、言い争いになる。
そろそろ止めに入った方が良いなと思っていると、男が間に入る。
「止めろ!!」
「なんだお前は」
「そうだ関係ないだろ」
「関係あるさ。俺はイニス・バーバラだ」
「イニスだと、ハハハ、横領罪の堕落一族が俺達に何のようだ」
「今の言葉は録音したぞ。男爵家である俺に対する不敬罪だ」
「ちっ!! 嵌められたか。今日のところは引き下がってやるよ」
イニスか。思い出したぞ。俺がネックレスを取るために龍神のダンジョンを下見した時、父が横領罪で汚名を着せられ、婚約者も奪われそうだと言っていた貴族だな。
俺が思い出していると、男達がこっちにやって来る。
「見せもんじゃねえぞ。そこどけや!!」
そんなことを言われて、道を譲るような俺ではない。
「おい!!、キャラさんが世話になったな」
「お前は店の関係者か?」
「そうだ、取り敢えず修理代と迷惑料だ」
俺はそう言うと男達に腹パンを見舞っていく。
『ぐぇ』
『うぅぅ』
『おぎゃ!!』
男達は地面に這いつくばり腹を抱えながら苦しんでいる。
「どうだ、おかわりするか?」
『ひぃぃ―― 覚えていろ』
男達は、腹を抑えながら走り去っていく。
「あっ、ノワールさん」
「えっ!! ノワールさんだって?」
俺の姿を見たキャラさんが駆け寄ってきて、後からイニスもやってくる。
俺達とキャラさんとイニスは、席に座ってお互いのことを話し始める。
さっきの連中には、二週間前から嫌がらせを受けているそうだ。
キャラさんの話では、領主のクリド公爵がコートダールで食べたすき焼きが絶品だったと貴族達に話したところ注目を浴び、更に口コミで平民達にも広まって人気店になった途端、あいつらが現れたそうだ。
そうすると、目的は豆腐とすき焼きの利権を奪うことか。
イニスの方は、無事に許嫁であるシチアさんにプロポーズができたが、ルギー侯爵が異議を唱えたことにより、クリド公爵による調停式が開催されるそうだ。
イニスは俺と別れてから、ルギー侯爵やビスマの悪事について証拠を掴むため奔走しており、ここも噂を聞きつけてやってきたそうだ。
「ノワールさん、ところで、こちらの綺麗な女性とはどのような関係でしょうか?」
「そうだぞ。こんな可愛い女性と一緒に旅しているお前が羨ましいな。まぁ、俺のシチアも可愛さでは負けていないがな」
「紹介が遅れたな。妻のルミアだ」
「えええ、結婚していたのですか?」
「なるほど。この人のためにネックレスを取りに来ていたのか」
俺は変な気配を感じてルミアの方を見ると、ルミアの目が輝いている。
ああー こりゃ駄目だ……
「あ・な・た、是非、力になってあげて。綺麗で可愛い私も力になるから」
「そうだな。それならルミアはキャラさんを護衛してくれ。あいつらがこのまま引き下がるとは思えない。今度は見かけ倒しの嫌がらせだけではなく、直接やってくると思うぞ」
「わかったわ。しばらく、キャラさん所に住み込みになるけど大丈夫かしら?」
「はい、この前にノワールさんから頂いたお金でお店を増築して、従業員の住居も兼ねているので大丈夫です」
「イニスはこのまま証拠を集めてくれ」
「わかった。ノワールはどうする?」
「俺はルギー公爵の屋敷に潜入だな」
「正気か? あいつらは俺達から没収した金や横領金で、警備を強化したと聞いているぞ。それに用心棒がいるから、見つかったらただでは済まないぞ」
「見つからなければいいだろ。じゃあ、また後で会おう」
俺はそう言い残すと隠密を使い、その場から姿を消す。
「んな!? 消えた……」
俺はルギー侯爵の屋敷へ向かうのであった。
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