第110話 本当の宝物
翌朝、俺達は朝食を終えるとロイドとアンナが俺達の所に来て、後で話したいことがあるので、皆に集まってほしいそうだ。
何か重要な話だろうか?
俺達はロイドに指定された部屋に行くと、既にロバート侯爵とカイン達、ラムズ侯爵とロックが座っていた。
クリド公爵が言う。
「皆さん、揃ったようですな。今日集まって頂いたのは我が家臣であるロイド子爵とアンナ子爵について話がある」
クリド公爵に続いてロイドが話を始める。
「カイン、ナシャ、ルミア、そしてノワールとロック、今まで世話になった。今後、俺とアンナは水の都グランディアに拠点の構えることになった。お前達とは離れ離れになるが、俺達はずっと白銀の翼のメンバーだと思っている」
「そんなこと当たり前だろ。前にも言ったが、俺達が冒険者になった時の夢が達成できたんだぞ。そんなに、しんみりした顔をするな。もっと、胸を張っていこうぜ」
「ありがとう、カイン」
「そうよ、アンナも元気出して。これが最後の別れってわけでもないでしょ。それに、いつでもネックレスで連絡も出来るからね」
「ありがとう、ナシャ」
「ところでノワール達は、これからどうする?」
「そうだな、カイン。俺もアッサムザルクに拠点を構えることになっているが、しばらくは自由で行動したいと思っている。俺は渡り人だから、もっと色々な所やルミアとの新婚旅行にも行きたい」
「ふふふ、私はあなたと一緒だったら、どこにでも付いて行くわ」
「はいはい、ご馳走様でした」
ナシャが若干呆れたように言う。
「それじゃ、俺達はクリド公爵とグランディアに向かうよ」
「ああ、元気でな」
「兄さん、私も父上とアッサムザルクに帰ります」
「そうか、俺はカイン達やダンカンと一緒に孤児院へ向かうよ」
「そういえば、ダンカンさんは?」
「あっ、呼ぶの忘れていたよ……」
◇
俺達は一路コートダールへ帰る。
帰路の途中でロバート侯爵がダンカンに言う。
「ダンカン、いやダンカン男爵。其方は貴族になったのだ。コートダールに帰ったら式典を開くので心得てくれ」
「はい、わかりました」
馬車の旅は順調に進み、コートダールに着く。
俺達はカイン達と別れ、孤児院へ向かう。
「おかえりなさい、ダンカン」
「レイカ、俺がいない間は大丈夫だったか?」
「はい、バイルさん達が警護してくれました。それに、ノワールさんからの紹介でフェウさん達がお手伝いしてくれたので助かりました」
俺達のいるんだけど…… レイカさんの視界には、ダンカンしか映っていないようだ。
そんな二人を子供達は、じっと見ている。
「良い感じだな」
「そろそろチューするぞ」
「こら―― いい加減にしなさい」
レイカさんが顔を真っ赤にしながら子供達を怒ると、子供達は楽しそうに逃げる。
しばらくするとフェウが孤児院にやってきた。
「あっ、ダンカンさんとノワールさん達ではありませんか?」
「フェウ、ちょっと印象が変わったな。何だか表情が柔らかくなったぞ」
「ここの子供達は化け物ですよ。こんな化け物達を相手していれば、誰だってそうなりますよ」
「ははは、苦労しているようだが、楽しそうだな」
そんな話をしているとバイルもやって来た。
「バイル、調子はどうだい?」
「姉御。最初は警戒されましたが、この頃は慣れてきたようで受け入れられてきているよ」
「そう、良かったわ」
ルミアと話し終えると、バイルはフェウの方に行って久しげに話し始める。
俺達の方に少女が歩み寄って来て、小声で話し始める。
(ノワールお兄ちゃん、最近あの二人はね、レイカ先生やダンカンお兄ちゃんと一緒で仲良しになったの。きっと、あれが恋なのね)
(そうだね。見守ってあげて)
(任しておいて)
ここの孤児院の子供達は、ませているな……
「バイル、ちょっといいか?」
「ノワールさん、何でしょうか?」
「明日、ダンカンが男爵となって獣人区と農業場を治まることになったので、式典が開催される。お前達も出席してロバート侯爵よりダンカンの騎士団になるように命が下るだろう」
「……本当に、俺達が騎士団になるのか」
「何惚けている。これまで訓練してきたことで、お前達には十分な実力が備わっている。明日は、ミスリル装備でロバート侯爵の屋敷にダンカンと一緒に来いよ」
「それからレイカさん。貴方も一緒に来てね」
「ルミアさん、私もですか?」
「そうよ、ほら馬車の中で話したでしょ、ダンカン」
ルミアの言葉にうながされて、ダンカンがレイカの前に行き跪く。
「レイカ、今回の件で俺は思い知らされた。俺にはお前が必要だ。俺と一緒になって支えてくれ」
ダンカンは箱を開け、中にあるネックレスを見せる。
レイカさんの目からは、大粒の涙が零れ落ちる。
「はい、お願いします」
ダンカンはネックレスをレイカさんに付けると、そっと額にキスをした。
「あああ、ダンカンお兄ちゃんとお姉ちゃんが、やっとチューした」
「そうだそうだ」
妹のカリンちゃんや子供達が大喜びだ。
「カリンちゃん、これでお姉ちゃんは元気になってぞ。さぁ、依頼料を貰うぞ」
「うん、ノワールお兄ちゃん、ルミアお姉ちゃん、ありがとう」
カリンちゃんは満面に笑み、俺とルミアに銀貨を1枚ずつ渡す。
その光景を見ていたバイルとフェウが話してくる。
「まさか、姉御は、たった銀貨2枚のために俺達の所に乗り込んで来たのですか?」
「そうだよ。悪いかい」
「ノワールさんも、たった銀貨2枚のためにスクイ男爵と戦ったのですか?」
「フェウ、今のお前ならば、この銀貨2枚がどんな宝物より価値があると言うことがわかるだろ」
バイルとフェウはお互いの顔を見合わせて言う。
「これで、俺達が束になっても姉御に敵わなかった本当の理由がわかった」
「うん、私達も敵わなかったわ。だって、その銀貨2枚は本当の宝物だから。 ……私にも見つけられるかしら」
「今のお前達ならば見つけられるぞ」
「私達が!?」
「ふふふ、そうよ。もう、見つけ合っているのではないかしら?」
バイルとフェウは再びお互い見つめ合うと、今度はお互いの顔が赤くなる。
「ああ、この二人良い感じだぞ」
「そうだそうだ」
早速、子供達は次の獲物を見つけたようで、からかい始めるのであった。
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